第8話 俺の超能力
「あなたも超能力、ないしは異能と呼ばれるものが使えるのね?」
「えっ?」
不破さんからの予想外の問に、今度は俺が固まる。まさか超能力が使えることがバレているとは...。待て、あなたもと言うことは不破さんも超能力が使えるという事か?
いや、それを考えるのは後だ。まずは質問に答えなければ...。世間にバレると結構大事になりそうな能力だからなぁサイコキネシスって...あんまり人に言いたくはないんだよなぁ。とりあえず誤魔化してみるか。
「超能力?超能力ってあの...未来予知とか念力とかそんな感じのやつですよね?その...あなたの言う"塊"が見えるっていうのと超能力に何の関係があるんですか?」
「あら?はぐらかすつもり?いいわ、今後あなたは学校中の人間から変態のレッテルを張られるでしょうね」
「はぁい!超能力持ってまぁす!!」
社会的地位のためにあっさりと俺の意思は折れた。しょうがないんだ...ばれたら大事とかよりも今、目の前にある危機のを優先しなければならないんだ...。
俺の返事を聞いて不破さんは満足そうに微笑んだ。こんな状況でもなければ見惚れていただろうが、今の俺には悪魔が微笑んでいるようにしか見えない。
「あなた名前は?」
「名前?あー...堀田です。
「そう...私は
突如として自己紹介をしてきた不破さんの顔からは、初めに見たときのような退屈そうな様子も、怒った様子も消え失せていた。期待と喜びに満ちた表情で不破さんは口を開く。
「じゃあ堀田くん...あなたの超能力はどんなものなの?」
「えぇ...あんま他人に見せたくないんですけど?」
「もしもし警察ですか?今目の前の男にセクハラを受けて...」
「はい!見せます!喜んでぇ!」
クソッ!なんて奴に弱みを握られてしまったんだ!まぁこうなっては仕方がないか...見せるしかあるまい。なんかすごい期待してるみたいだし、ちょっとしたパフォーマンスでもしてみよう。
じゃあ見せますよ...そう言って俺は正座を解いて立ち上がると同時に、超能力を発動する。すると、不破さんが座っている机以外の、すべての机と椅子が動き始める。さらに、粉受けからチョークが一本浮かび上がり、黒板に絵をを書く。
動き出した椅子と机は、不破さんを避けながら教室の両端へと移動し、玉座を守る騎士のように、規則正しく並べられていく。不破さんは興味深そうに移動していく椅子たちを眺める。すべての椅子たちが並び終えると、椅子が一つ、俺の元へ移動する。俺がその椅子に座ると同時に、チョークが、最後の一筆を書き終える。黒板には大きく、俺が夢で見たあの湖が描かれていた。
「こんな感じです。どうですか?」
そう言って不破さんの様子を窺う。不破さんはゆっくりと拍手をしながら、
「中々面白かったわ。堀田くん。」
と、俺のパフォーマンスを讃えてくれた。良かった、どうやらお気に召したようだ。黒板に書かれた文字を見ながら不破さんは言う。
「サイコキネシス...自分の周りにあるものを好きなように動かせるってところかしら?かなり強力ね。」
「凄い便利ですよ、これ。今日の朝食なんか普段は作るのに10分はかかるのに今日は5分かからずに作れましたからね。」
「朝食?」
不思議そうな顔をしている不破さんに、今日の朝食づくりを録画していたスマホを見せる。実はサイコキネシスが外部からどのように見えているのか確認するため録画をしていたのだ。俺のスマホを見た不破さんは少し不満そうに頬を膨らませて言う。
「俗っぽいわね、せっかくサイコキネシス持ってるんだったらもうちょっと派手なことに使いなさいよ。ドアをバンバン動かして人を驚かせたりとか。」
「それはどっちかって言うとポルターガイストでは?」
そう言って俺はスマホを仕舞う。不破さんは少し名残惜しそうな顔をしていた。あんなこと言っておいて俺の朝食づくりに興味津々だったようだ。なんかちょっと可愛いかも...と、思いつつ俺は不破さんの目を見て真剣に言う。
「それで、あなたも超能力があるのかって聞いたってことは、不破さんにもあるんですよね?超能力。」
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