第6話 邂逅(1)

 八浪が鼻息荒く語る。


不破ふわまどかさんって言うんだけどさぁ、もうとんでもなく綺麗なんだよ!黒髪サラッサラで肌も真っ白で目元もキリッとしてて背も高くてメッチャ胸も大きいんだよ!噂では、中学の頃はずっと成績上位で運動も超得意らしいんだよ!完璧すぎじゃね!?」


「お...おぅ」


 若干気おされながらも相槌を打つ。


 八浪は続ける。


「昨日放課後たまたま廊下で見かけてさぁ、俺もう一目惚れしちゃってその場告白してフられたんだけど...」


「凄い。聞いたことないスピードで失恋してるな。」


 出会って0秒で告白とは、俺にはない度胸と行動力である。


 八浪は落ち込んだ様子でフラれた際の詳細を話す。


「「貴方はつまらなそうだからお断りよ」って言われちゃってさぁ...なぁ海...俺そんなつまんないかなぁ?金髪似合ってないかなぁ?」


 そう言えばこいつ高校デビューで金髪にしてるんだったな...と思いながら一応励ます。


「大丈夫だ八浪、お前のそのキャラと見た目でつまらないなんてことは無い。金髪もちゃんと似合ってるよ。けどその場で告白っていうのはどうなんだ?相手の人びっくりしちゃうだろ。」


 俺がそう言うと八浪は「ありがとなぁ」と涙ぐみ、両手で俺の手をブンブンと振ってくる。しかし後半の内容は気に入らなかったらしく、怒った様子で語り始める。


「いやでもときめいたんだからしょうがないだろ!海だって目の前にすっげーおいしそうな料理あったら思わず食べちゃうだろ!?そういう事なんだよ!」


 いや食わねーよ。と思いながらも、めんどくさくなったので「確かにそうだな」と返し、前を向いて歩く。しかし...


「八浪がそんなに言うんだったら一度くらいは見てみたいかもな。不破さん。」


「昼休みとか探してみろよ。もうホンットに美人だからすぐわかるぜ、お前も一目惚れするかもな。」


 そんなことを話していると、ようやく学校にたどり着く。


 適当に授業をこなし、あっという間に昼休みになった。


 授業中や移動教室の間にも、時々目に”水”を流して周りの人たちの”源”を観察していたが、特筆するような”源”を持っている人はいなかった。


 やはり、俺はかなり希少な”源”を持っているようである。


 ちょっとした優越感を感じながら、飲み物を買いに行くため席を立つ。


 隣の八浪が


「おっ、早速不破さんを探しに行くのか?」


 と、からかってくる。


「おう、俺も一目惚れしてくるわ。」


 軽く返してさっさと教室を出る。


 すると、丁度隣のクラスからとんでもない美少女が出てくる。確認するまでもない。彼女が不破ふわ まどかさんで間違いないだろう。八浪が言っていた特徴がぴったりと当てはまっている上、そのすべてが過大評価でないことが分かる。


 美しく輝く黒髪に、透き通った白い肌、退屈そうながらも思わず見とれてしまう、美しい切れ長の瞳を持つ顔、脚もすらりと長く、胸の方も...ええ、八浪の言う通りでございます。


 確かにこれは八波が一目惚れしてしまうのもしょうがないかもな、と思うと同時に、彼女の思う”退屈でない”人間とは、どれだけハイスペックな人間なのだろう、と考えながらすれ違おうとする。


 そういえば、これだけ完璧な人間だ、”源”も特殊なのではないだろうか?


 根拠はないがなんとなく間違っていない気がして、瞬きと同時、”水”を目に流す。


 目を開いて不破さんの胸元をちらりと見る...。


 そこには、


 今までとは全く異なる”源”だ。明らかに堅そうであるし、”源”の収められている空間も、俺と同じ草原である。そして、なんといってもデカい。体積で言ったら俺の”湖”と同等以上である。あまりの大きさに俺は思わず呟いてしまう。


「でっか...」











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