第5話 ”源” 

 驚いた。俺以外にも、胸の中に星空色の物体が入っている人がいるらしい。気になって周りを見渡してみる。最初に見た人以外にも、ほとんどの通行人の胸の中に、あの星空色の物体が収められていた。


 これはつまり、ほとんどの人間は超能力の”源”みなもとを持っている。と言うことになる。であれば、生きていれば一人二人くらいの超能力者に会ってもいいはずだが...しかし、超能力と言う言葉は胡散臭いテレビ番組以外では聞いたことがない。


 ”源”を持っていることと、実際に超能力が使えることは直接関係しないのだろうか?


 もう少し注意深く、通行人の”源”を観察してみる。


 ”源”、すなわち星空色の物体の形は、人によって様々だ。ゼリーのような形をしている人もいれば、スライムのように粘り気のある不定形をしている人もいる。全体として、ある程度柔らかさのある物体であるように思える。


 次に大きさ、ほとんどの人はカップゼリー程度の大きさである。時々バケツプリンぐらいの大きさの物を持っている人もいる。


 最後に”源”が収められている空間、これはすべての人の”源”が、漏れなく真っ白な空間に収められている。


 ここまで見て、俺の”源”は、これらすべての要素において他の人の物とは異なっていることに気づく。


 柔らかい物体どころか液体であるし、大きさは町一つ沈められるほどある。極めつけは”源”が収められている空間が、草原である。共通しているのは”源”の色ぐらいだ。


 もう全く違う。別物とさえ言ってもいい。おそらくこの3点のうちどれかが、超能力を発現させる要素なのだろうが...今は考えてもどうしようもないか...。


 諦めて、目に流していた"水"、もとい”源”を涙で洗い流す。星空色のもやも晴れ、普段通りの視界に戻る。いつの間にか学校の近くまで歩いてきたようで、周囲には俺が通う高校である鵜前高校うまえこうこうの制服を着た生徒たちが増えてきた。すると...


「おーい!海ー!」


 後ろから元気のいい声がかかってくる。高校に入って間もない俺に、こんなに気さくに接している奴は一人しかいない。俺は振り向いて、声をかけてきた男に手を振る。軽薄そうな見た目の金髪の男、八浪やなみ諒太りょうたが俺の元にたどり着いた。


「おう、おはよう。八浪やなみ、今日も元気だな。」


「うーっす!海!お前も元気そうだな!」


 八浪は高校に入って初めてできた友人だ。隣の席なのだが、入学初日、金髪のインパクトに興味を惹かれて話しかけたのをきっかけに友人となった。見た目に違わず大変な女好きである。


「そうだ聞いてくれよ!海!」


「どうした?」

 

 八浪が興奮した様子で話しかけてくる。


「隣のクラスにさぁ、メッチャクチャ綺麗な女子がいるんだよ!」














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