第3話 超能力で朝食を(2)

 さて、調理の続きだ。サイコキネシスがどれだけ器用か試してみよう。トマトを切り終え、皿にトマトを盛りつけたあと、火にかけたフライパンの上に、浮かせた卵をセッティングする。


 サイコキネシスを扱う感覚は、空間の中に自由に形を変えて動かせる”手”が無数にあって、その”手”を、普通に自分についている手と同じような感覚で動かしている。


 この感覚に則っているのなら、この卵も容易に割れるはずだが...卵を持っている”手”に、慎重に力を籠める...。


 パキョッ


 卵は問題なく割れ、少し白身が垂れる。殻を手早く開くと、黄身が落ちていき、次いで白身の大部分が落ちていき、ジューッと子気味良い音を立てる。


 やはりこの能力は大変器用であるようだ。


 いやーめっちゃ生活楽になるわぁーありがてぇー。


 目玉焼きとウインナーの様子を見ながら、食パンの袋を開け(勿論超能力で)オーブンにいれてつまみを回し、焼き始める(勿論超能力で)。


 しばらくすると、目玉焼きがいい感じに焼けてきた。さて、ここでもう一つ検証しよう。”手”は熱さを感じるのか?今まで使用してきた経験から、”手”は本当にぼんやりとだが、感覚のようなものが微かにある気がしないでもない。熱さを感じる可能性も一応ある。薄く薄く”手”を形成し、慎重に、目玉焼きの下に滑らせていく。


 熱さも感じず、するりと目玉焼きの下に”手”が入り、目玉焼きを持ち上げることに成功する。


 つくづく都合のいい力だなぁ。と考えながら、目玉焼きを皿に盛りつけ、一緒にウインナーも引き上げ、皿に置くと同時


 チーン!


 という音が響く。タイミングよくパンも焼けたようだ。パンを取り出し、別の皿に乗せ、キッチンの近くに置いてある食事用のテーブルに置く。


 パン、トマト、目玉焼き、焼きウインナーが揃って朝食の準備は完了。


 現在時刻は7時25分


 調理開始が7時20分だったため、5分で朝食で用意できた。


 凄い!普段なら1つづつ調理していくから10分以上かかる朝食の準備が、半分で終わってしまった!


 サイコキネシスサイコー!!便利!!


 ウキウキで朝食を摂る。しかも朝食を食べながら、後ろのシンクではスポンジと調理器具がひとりでに動き、洗い物が行われている。洗い物の手間も滅茶苦茶減っている!


 サイコキネシスサイコー!!便利!!


 ここまでやってきてようやく気付いたが、どうやら動かすものを見ていなくても、場所が分かっていれば問題なく動かすことが出来るようだ。


 サイコキネシスサイコー!!便利!!


 朝食を食べ終え、7時40分。洗面所に向かい歯磨き、洗顔をする。洗顔しながらも、食べ終えた後の食器を先ほどと同じように超能力で洗う。俺は完全にキッチンには居ないし、洗面所もキッチンから少し離れている。


 俺が同じ空間にいなくても、ある程度離れていても、能力は問題なく発動するようだ。


 サイコキネシスサイコー!!便利!!


 身支度を済ませ、まだ着慣れない高校の制服を着る。


 8時の出発にはしばらく時間があるため、居間でテレビを点けてぼーっと考える。


 どうすっかなこの力...。


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