第2話 超能力で朝食を(1)
何が起こったのか全く理解できない。
確実に起きられるように、目覚まし時計がおいてあるベッドと机の間には、ある程度の距離がある。たまたま目覚ましが机から落ちて、ベッドに転がってきたというには無理がある。もしそうだとしても右手への衝撃と痛みに説明がつかない。
まさか...俺の考えた通り、目覚ましが飛んできたとでもいうのか?
あり得ない...と思いつつも俺は、転がっている目覚ましへと手を伸ばし、
机に戻れ
と、念じてみる。また、あの不思議な感覚が体を駆け巡る。すると...まるで逆再生のように、目覚ましが浮かび上がり、元あった場所へと戻っていく光景を、今度ははっきりと目にする。
「なんてこった...」
驚愕する。俺はどうやら超能力...物を自由に動かす超能力は確か...サイコキネシスと言うんだったか?に、目覚めてしまったらしい。
とりあえず体を起こし、自室にあるいろいろな物を動かしてみる。筆入れ、ゲームのコントローラー、漫画、驚いたことに箪笥も軽々と動かすことが出来た。
しかもコントローラーのスティックも触れることなく自由自在に動かせるし、漫画もペラペラと1ページずつ器用にめくることが出来た。しかも同時に複数のものを動かすこともできる!
思い思いに動かしていると、ふと、胸の中の奇妙な感覚に気付く。そう、夢の中で見た、あの湖がある空間が、今、俺の胸の中にそのままある。物を動かすと、あの湖からほんの少しだけ、水が消費される。どうやらこの力の源はあの湖であるようだ。しかも、水が消費されるよりも早く、
この力、めちゃくちゃ便利じゃないか!?
手を触れることなく、自由に軽々と、しかも複数のものを同時に動かせる!さらにエネルギー切れの問題もおそらくナシ!
これは...捗るぞ...!
すぐさま俺はキッチンへ向かい朝食を作る。
俺は一人暮らしだ。一人っ子だし両親は海外赴任、祖父が心配だった俺は祖父と共に日本に残り、祖父の家に2人で暮らしていたが、その祖父も去年他界した。両親は俺に、一緒に海外で暮らそうと提案してくれた。けれど、祖父と、祖父と共に過ごしたこの家が好きだった俺は、両親に無理を言ってこの家に残っている。
とりあえずそれは置いといて朝食づくりだ。早速超能力を生かして調理をするぞ!
現在時刻は7時20分
冷蔵庫の中を確認しながら、超能力でシンク下の戸棚をあけ、包丁を取り出す。冷蔵庫から卵、ウインナーを手に取り、冷蔵庫から離れると同時に、超能力で野菜室をあけ、トマトを浮き上がらせ、調理台に置く。コンロ下の戸棚からフライパンを取り出し、コンロに置くと同時、あらかじめ超能力で取り出していたボトルから油を引き、ウインナーを置いて火にかける。ウインナーの様子を見ながら、超能力で包丁を動かし、トマトを切っていく。
超能力初日ながらめちゃくちゃ使いこなせている...!と、我ながら思う。
正直調理ってめんどいからこんな力あったらなぁ...と、時々思っていたのが実を結んでいる。
さぁどんどん進めていこう!
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