第7話 語らいの朝

 翌日、私は待ち合わせ場所で雪菜さんと栞菜さんを待っていた。三人で出掛ける時は私が先に来て、雪菜さんが次に来て、栞菜さんが最後に来るというパターンがもはやお決まりになっている。


 けれど、私が純粋に集合時間の十分前には来るようにしているだけで雪菜さんも五分前には来るし、栞菜さんも三分前には来る。バーチャルカンパニーに所属するライバーさんの中には遅刻魔もいて、その人達のマネージャーさんは色々手を尽くしているそうだが、私達はそうさせてしまうのが申し訳ないと思ってしっかりと開始時間の前には集まるように心がけているのだ。



「翔子さん、お待たせしました」

「翔子、待たせたね」



 珍しく雪菜さんと栞菜さんが一緒に現れる。



「ううん、まだ五分前だから大丈夫だよ。それにしても、二人で一緒に来るなんて珍しいね。どこかで合流出来たの?」

「そんなとこかな。今日は気が乗ったから早めに出たら、雪菜と出会って、そのまま一緒に来たんだ」

「驚きはしましたけど、栞菜さんと早く会えたのは本当に嬉しいです」

「私も嬉しい。今日も二人とも可愛くて綺麗だから、私としてはテンションが上がってる」

「まあ、栞菜さんってば……」



 栞菜さんの言葉に雪菜さんが照れる。文花と雪菜の時でも二人はこういうじゃれあいをする事があり、ファンの人達からゆき×ふみとかふみ×ゆきのファンアートを書いてもらう事もあり、玉藻はそれを穏やかに見ているので姉妹のふれあいを見守るお母さんだとか言われがちだ。



「さて、早めに集まれたわけだから時間を無駄にしないように行こうか。こうやって面と向かって話すのも久しぶりだからね」

「話……あ、そうですよ! ソラジオで翔子さんがふつおたを読まれたのが羨ましかった件、まだ忘れてませんからね!」

「それはたしかにそう。因みに、どんなの送ったの?」

「え? えーとね、同接が増えなくて困っていて、ガワを用意してくれたママにも申し訳ないし、どうしていったら良いかみたいな感じだったね」

「翔子さんは本当に責任感の強い方ですしね」

「そしたら、自分に聞くよりもまずは行動した方が良いとは言われたんだけど、全力で応援するとも言ってもらえたし、私の気持ちや想い、苦しみや悩み、その全てが輝いて見えるって言われたかな」



 それを聞くと、雪菜さんはもっと羨ましそうな顔をした。



「えー!? 羨ましすぎますよー!」

「それは同感。とりあえずもっと話を聞きたいから、どこかに行こう」

「この近くにカフェがあるらしいし、そこに行こうか」

「はい!」

「わかった」



 二人が答えた後、私達はカフェに向かって歩き始めた。

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