第5話 ソラジオの夜

 それからというもの、私は二人のVTuberの仮面を使い分ける生活をしながらソラジオを楽しむ生活を始めた。


 ソラジオは特定の曜日にやるようなものではなく、ソラさんがやろうと思った日の夜九時からやっているもののようだった。だから、その情報を手に入れるためにSNSのアカウントもフォローしたし、ラジオチューブのチャンネルも登録した。文花さんきっかけとはいえ、かなりハマっている形だ。そして雪菜さんもどうやらハマったらしく、名物リスナーになってやるんだと鼻息荒く言っていて、マネージャーさんもそのやる気は喜びながらも少し困っているそうだった。


 そんなこんなで今日も私は子狐での配信を終えた後にソラジオを聞くために待機所に来ている。



「今日も人が多いなぁ……待機中だけでも1100人はいるようだし、ここから増えるとなるとソラさんもさばくのが大変なんじゃ……」



 ソラさんはどんなに人が多くても華麗におたよりやコメントをさばいている。そのテクニックは本当に見習いたい物で、それは文花さんと雪菜さんも同感のようだった。ただ、やはり大変な気はする。だから、少し心配ではあった。


 そうして夜九時になり、いつもの画面がパソコンに表示される。



『ソラジオ、はっじまるよー!』

「あ、始まった」



 ソラさんは今夜も元気で、リスナーの人達も負けないくらい元気だ。



『ソラタソキター(゚∀゚)ー!』

『今夜も始まったー!』

『二時間くらい前から全裸待機してました!』

『あははっ、ありがとー。風邪引かないでねー。さて、今夜もオープニングトークを始めていくんだけど、また私の新刊が出るからそのお知らせをまずさせてもらいまーす!』

「あ、新刊が出るんだ」



 ソラさんはオープニングトークの時に告知をする事もあるので、その内容をラジオ中にも引っ張る事はままあるようだった。



『新刊……だと』

『布教用と鑑賞用、読書用に如何様に……』

『お、いかようってイカのエサってことか?』

『そういう事じゃねぇよ、ハゲ』

『おお、神よ。私達をお救いください……』

『またかみの話してる』



 コメント欄はとても沸き立っていて、それを見ているであろうソラさんから漏れるクスクス笑いも楽しそうなものだった。



『今回の新刊は異世界モノ。そのタイトルは~?』

『ゴクリ(゚A゚;)』

『また後でお知らせしまーす』

『ズコー』

『部屋の中で三回転半捻りしてたわ』

『体操選手ニキは怪我せんようにな』

『せっかくだから最後の方で発表するねー。まあそんなわけでオープニングトークを続けていきまーす』



 そしてまたコメント欄が賑やかになっていった。



「ふふ、本当にソラさんってスゴいなぁ。よし、私も色々学ぶために精いっぱいソラジオを楽しもう」



 そして今夜も色々笑わせてもらいながら私の夜はソラジオと一緒に更けていった。

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