第2話 久し振りの笑み
『ソラジオ、はっじめるよー!』
蓋と思われる画面が音楽と共に二分程度続いた後、中心にソラジオというロゴ、左側にコメント欄、右下にお座りをするシベリアンハスキーが映る簡素な画面で元気な声が聞こえてきた。この声の主が月神奏空さんなのだろう。
「へー、結構聞きやすい声だなぁ。声も中性的な感じだし、これは本当に人気が出るのもわかるかも」
『はい! という事で、今夜も始まりました。ソラジオ! パーソナリティーは毎度代わり映えのしないソラでーす!』
「パーソナリティーとしてはソラなんだね。というか、毎度代わり映えのしないって」
思わずクスリと笑ってしまう。本当に独特な言葉選びのセンスだ。コメント欄もソラさんの登場に沸き立っていて、中には顔文字を使っている人も見受けられた。
『ソラタソキター(゚∀゚)ー!』
『代わり映えしない? とんでもねぇ、ソラタソのために来てんだ。代わってもらっちゃ困るぜ!』
『ソラタソー! 今日も可愛いよー!』
『ラジオだから見えないだろ』
『ソラジオリスナーなら心の目で視るんだよ!』
コメント欄も中々独特だ。だけど、誰もがソラさんの登場を待ち望んでいたのがわかるようなコメントばかりで私は羨ましくなってしまった。
「こんなに待ってもらえてるなんて……ふふ、たしかに嬉しいよね」
クスクス笑っていると、オープニングトークが始まった。
『今日も暑いよね。みんなは大丈夫? 乾物になって良い出汁取られてない?』
『話の出汁にはされました!(涙)』
『出汁ニキ、涙ふけよ つハンカチ』
『ぐつぐつぐつ……(´・ω`・)ノ|小鍋|~~』
『出汁ニキのスープが作られてて草』
「ふふ……! コメント欄の連携、スゴすぎでしょ……!」
コメント欄の人達がここまで連携している配信は本当に珍しいと思う。これは本当に期待出来そうだ。
『あははっ! みんな、今夜も元気だね! 今夜も二時間の長丁場だけど、最後まで参加してくれると嬉しいな』
『二時間じゃ長いと思わなくなってきた今日この頃』
『二時間なんてあっという間だからなぁ』
『ソラジオを作業用BGMにしてると仕事も苦痛じゃないしな。たまに手は止まるけど』
『俺は息の根が止まった!』
『成仏してクレメンス』
「あはは、あははっ!」
私は声を上げて笑う。こんなに笑ったのはいつぶりだろう。普段友達と一緒にいる時は笑えているけれど、こうして楽しくて笑うのは久し振りな気がする。ソラジオをオススメしてくれた友達には感謝しないと。
そんなこんなでオープニングトークは続いていき、私はソラさんのトークやコメント欄のコントじみたやり取りにしばらく笑わせ続けられていた。
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