第58話 最後は神頼み
モーニングルーティンは姉ちゃんからの許可もあり、無事に撮影する事ができた。と言っても、音声だけだったけど。
鷲尾さんに確認した所「それでも大丈夫」という事だった。
「まあ、モーニングルーティンの方は編集さんの仕事が終わってから皆んなで観よう」
その鑑賞してる様子も撮影して、また動画に纏めるらしい。それで俺がモーニングルーティンについて撮影するのはひとまず終わって、今日は英語料理の方の撮影との事。
因みに、鷲尾さんもスタッフが「準備は任せてください」と言ったらしくて何も聞いてないとの事。
「ドイツ語、自信ないなぁ」
「鷲尾さんもそんな事あるんですね」
なんだかんだ今まで何でもこなしてたから、そういうのを見るのは初めてだ。
「まあ、何とかなるでしょ」
「いやいや。今回はイーブンです。料理も指定されてないんで、俺だって失敗しません」
おつかいやら、運動やら、料理やら、勉強やらと鷲尾さんには下に見られてきたけど今回こそ見返してやる。
「はい、どうも毒島サクヤと」
「十色マナブの」
「日進月歩チャンネルです。今回もゲストにイラストレーターのたいやきさんがきております」
たいやきママが手を振る。
「えー、今回の企画も料理企画……なのですが。普通にやってもつまらないという事らしくて、英語で材料を注文! もらった材料で僕とマナブくんが調理する……というのが当初の予定でした」
「なんかそれだと毒島さんだけ有利なんじゃないかと異議申し立てした所、毒島さんはドイツ語での注文を行う事となりました」
俺と鷲尾さんで企画内容を説明し終えると、たいやきママが話し始めた。
「実食担当、たいやきです。二人とも、私ピザにパイナップルとか、酢豚にパイナップルとか無理なタイプだから。それとフルーツ入りサラダも無理だからその辺り覚えててくれるとありがたいなぁ」
スタッフさんがカンペを見せてくる。
「えーと……注文した材料で一品を作ってください。最低でも五個は注文。ですって、毒島さん」
「一品、ですか?」
鷲尾さんは貼り付けた様な笑顔で確認を取ると、スタッフが首を縦に振る。
「あの、たいやきさん」
「うん?」
「一応、覚悟しといてください」
「せめて! せめて美味しくしようとする努力はしてね!?」
たいやきママの声を聞きながら、俺と鷲尾さんは手元の紙に目を向けた。この紙に注文できる材料が書いてあるらしい。
「それでは注文を始めます、マナブくん。せーのっ」
俺と鷲尾さんは同時に紙を表にする。
そこには単語が羅列されてる。
「あ、意外と読めるのある」
日頃の勉強の成果か。
これは俺の勝利が濃厚かもしれない。
「ビーフ! まずはビーフ! あとオニオン! それとライスも!」
これで三個は取れる。
あと二個。あと、二個。
探せど探せど、チキンとポークは無かった。それさえあれば何とかなったかもなのに。
「…………分かんない」
何だろう。
メロンがいっぱい。ウォーターメロンは分かる。多分これはダメな奴。果物分かりやすいけど、そんなに多くないのかな。
「ベニソン? って何?」
それとホース何ちゃらってのは。
ビーフとオニオンが救済措置で、ウォーターメロンは確実にハズレだと思う。それ以外に分かりにくいの設置してきてる。大人はなんてひどいんだ。
「フィグ……?」
なんか大丈夫な気がする。
「フィグステーキ……なんか、ありそう」
何かのお肉っぽい感じする。何の肉かは良くわかんないけど。肉被りでビーフあるけど大丈夫でしょ。
肉アンド肉は、セーフです。
これを使うとして、あと一つ。
『お二人とも、あと三分くらいで決めてください』
カンペによる指示。
どれにしよう。
いや、これはもう考えても分からないや。だから圧倒的ハズレっぽいのは弾いて。
「どれにしようかな〜、神様の────」
こうなったら神頼みしかない。
「ちょ、え!? マナブくん!」
ごめんなさい、たいやきママ。
でも何とかなると思うんだよ。俺的にダメそうなのは弾いたし。
今回は結構イけると思う。
自信があります。
「────言う通りっ!」
俺の人差し指はlotus-rootなるものに向けられていた。
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