第57話 清水累への相談

 

 次の動画については英語と料理の企画で、モーニングルーティンも並行して進めるとのこと。

 今後の動きは様子を見ながら、無理のない範囲でやっていこうとなって。一先ずは解散。鷲尾さんは編集スタッフに伝えに行くとのことで別れてしまい、たいやきママは「仕事あるから今日は帰るね」と。

 

「もう帰っていいんだよね」

 

 鷲尾さんからも「今日の撮影は無理そうだね」と言われたし。

 

 帰ろうかと思っていると、なんと都合のいいことに目の前から清水さんが近づいてくるのが見えた。

 

「清水さん!」

「奈月くん」

「あれ以降どうです?」

「頑張ってるよ」

「雅くん……ほら、黄金さんとは」

「頑張ってるヨ?」

 

 目を逸らしたけど。

 一先ずは置いといて。

 俺が話したいのはこの事じゃない。今日は相談に乗ってもらいたいのだ、俺は。

 

「清水さん、相談があるんですけど」

「私に?」

「清水さんって、何か貰えるとしたら何が一番嬉しいですか?」

「ずばりコミュニケーション力」

 

 食い気味の返答に俺は「有形の物でお願いします」と条件を伝える。

 

「……もしかして彼女でも出来たの?」

「ないです。ただ姉ちゃんにお世話になってるので。お金が入ったら何か買おうかなって」

「そういう……うーん、家族にもらって嬉しかった物かぁ」

 

 清水さんが考え込む。

 

「とりあえず立ち話もなんだし、座って話そっか」

 

 そしていつも通りにカフェに連れてこられた。

 

「中々難しい話だよね。恋人とかでもなく家族ってさ」

「違うんですか?」

「全然。恋人からアクセサリーとか貰うのは良いかもだけど、親とか兄弟から買ってもらうのは反応に困らない?」

「そうなんですね。もしかして経験談ですか?」

「私が貰ったことあるのは彼氏からだけだけど。お父さんから貰うとか考えると気分的に微妙だって話」

 

 清水さんって彼氏いた事あるんだ。

 

「よくよく考えたら、彼氏からでも別れたら使いにくいし。ああ言うのって思い出補正が入ってるから……その時は幸せで嬉しいんだけどさ」

 

 なんか触れちゃいけない事だったかもしれない。取り敢えず言えるのは。

 

「アクセサリーは避けた方が良い、と……」

「そうそう」

 

 そこは参考にしよう。

 

「それにしても胡桃ちゃんに喜ばれる物かぁ」

 

 清水さんも中々思い浮かばないらしい。

 

「お金が入るまでは多分もう少し時間あると思うし。もうちょっと考えてみたら?」

「そうですね」

 

 お金もどれくらい入るか分からないし、入ってから考えても遅くないと思う。それに雅くんにも聞いてみたいし。

 

「相談乗ってくれてありがとうございます」

「良いよ、気にしなくて」

 

 清水さんはテーブルの上のコーヒーカップを持ち上げる。なんだかコーヒーを飲む姿だけでも出来る人って感じがする。

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