第52話 初投稿用動画撮影《後半》
「完成しました!」
俺がその後にしたのは色々混ぜた牛乳と鶏肉、マカロニを皿に入れ、その上にチーズをかけてオーブンで加熱。
良さげに見えた所で完成と言った感じだ。
「……今回の実食担当はたいやきさんです」
「毒島くぅん!? 話が違わない? 三人で食べるんだよね?」
「いやいやいや。僕は今からグラタン作るので。今日何もしてないたいやきさんの仕事と考えても良くないですかね」
完成した俺のグラタンを前にして二人が醜い言い争いをしてる。
「毒島さん、早く作ってくださいよ。俺の冷めちゃうじゃないですか」
せっかく作ったのに。
「……仕方ない。僕も食べるしかないのか」
そんなに嫌かな。
見た目は問題ないはずなのに。
チーズもこんがりしてて美味しそうじゃなかろうか。
「えーと、マカロニを茹でます」
手順は同じで鍋に水を張って火にかける。その時に鷲尾さんは塩を入れた。
「塩、だと?」
「パスタと同じだよ」
「パスタも?」
よく分からない。
「茹でてる間にホワイトソースも進めていきます。使うのは牛乳、薄力粉、塩胡椒にバター」
フライパンにバターと薄力粉を入れて、点火。鷲尾さんは火の強さを調整して調理を始める。
「ホワイト、ソース……? 聞き覚えある様な」
「マナブくん、ホワイトソースってのはね牛乳と薄力粉でつくる結構よく見るソースだよ。私も作った事ないけど」
鷲尾さんの調理風景を見ながら、俺はたいやきママと話すことにした。
「毒島さんめ。こうして、また俺の事を馬鹿にしやがって……ホワイトソースなんて家じゃあんまり出ないじゃん!」
「それは、うん。それはそうだね」
たいやきママもこう言ってる。
そうこうしてるとマカロニも茹で上がり、ホワイトソースも完成した。
「マナブくん」
「何ですか」
「不機嫌そうな声出さない……まあ、それは置いといて。君、生の鶏肉のまま冷たい牛乳と一緒にオーブンに入れたね」
「そうですね」
何か問題があったろうか。
「鶏肉は先に炒めるんだよ」
「出た! ハンバーグの玉ねぎと同じだ!」
あらかじめ炒めておく。
そんなの知らないよ。これは鷲尾さんの知識のひけらかしに過ぎないんだ。
「思ったよりもオーブンだけだと火が通らないんだよね」
笑いながら鷲尾さんは調理を進めていく。ホワイトソース、炒めた鶏肉、茹でたマカロニを皿に。オーブンに入れてしばらく、完成した物を見る。
「大差ないですね」
見た目は大差ない。
「チーズのお陰で形になってるのか」
鷲尾さんが分析した結果を口にする。
「問題は味だよね……ごくっ」
たいやきママは唾を飲んだ。
「いただきます」
まずは鷲尾さんの方から。
反応は『普通に美味しい』と言った感じだった。飛び抜けて美味しいとかではないけど、普通にグラタンだ。
「次にマナブくん、のは……毒島さん! 一口目お願いします!」
「僕かよ! たいやきさん行ってくださいよ!」
大人の押し付け合いが始まる。
「どっちでも良いですよ。別に俺でも……」
「これは大人の責任だから!」
どう言う事だろう。
「……し、仕方ない。グラタンを提案したのは僕だ。僕が行こう」
「今日一番輝いて見えるよ、毒島さん!」
覚悟を決めた顔して俺の作ったグラタンを口にする。
俺のグラタンは毒か何かなのかな。
「うっ……なんか、食感が。それに鶏肉ちゃんと火通ってない」
それを聞いてたいやきママは距離を取る。
「食べろよ! 唸る準備してたんじゃないのかよ!」
「それは料理で唸る準備であって、トイレで唸る準備では断じてない!」
俺は二人の言い争いを見ながら、鷲尾さんの作った方を食べ進める。
「あ、ごちそうさまです」
空になった皿をテーブルに戻す。
「何してんの!? マナブくん、何で僕の作った方一人で食べちゃってんの!」
「いや、二人で必死に俺の作った方でなんかやってたので」
それに毒島さん作った方が美味しそうだったんで、と俺は答える。
「……レンジで加熱すれば火も通って、食べれる筈」
俺の方に鷲尾さんが来た事で押し付け合いから一時的に解放されたたいやきママは「はい、今回は以上です!」と動画を締めた。
誰のせいだろうか。
動画はカオスだった。
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