第51話 初投稿用動画撮影
つい最近、SNSの公式アカウントを作りカウントダウン告知を
「はい、始めまして……新人Vtuberの毒島サクヤと」
「同じく、十色マナブです」
場所はキッチンスタジオ。
そこで俺と鷲尾さんは投稿予定の動画を撮影していた。
「はい、ようやくデビューですね。マナブくん」
「長い様で短い様で、長かったですね」
デビューが決まってからたいやきママとの打ち合わせだったり、清水さんとか雅くんとの交流だったり。
色々あったなぁ。
「ラー油みたいな言い方しますね。まあ、僕たちも色々ありまして、本日、やっと日の目を見ることができました」
「そんな俺たちのチャンネルですが、今日は屋内のキッチンスタジオからお送りしまーす」
そして俺の目の前に広がっている、前回のハンバーグを思い出す様な材料の数々。
「初回ということで慣れない所もありますが、二人で頑張りたいと思います」
鷲尾さんの言葉に俺も「頑張ります」と続ける。
「……えー、初回の動画なのですが色々な事情がありましてゲストがおります。初回のゲストはこの方です」
「はい、みなさん。はじめまして〜、二人のママのたいやきです」
因みにたいやきママはこの動画の撮影までに立ち絵だけは完成させて来たらしい。
「マナブくん、頑張ってー!」
俺は突然の応援に「は、はい」と固い返事しかできなかった。
「おい、僕には何かないのか?」
「毒島さんも頑張ってー」
「棒読みやめろ」
そんなやりとりをしてても進まないと分かってるからか、鷲尾さんは「えー、では早速当チャンネルについてと今回の企画について説明していきたいと思います」と語りだした。
「当チャンネル『毒島サクヤと十色マナブの日進月歩チャンネル』ではマナブくんが色々な事にチャレンジしていくのが基本的な方針となってます」
そして、今回。
鷲尾さんが声を大きくして言う、
「今日は料理……と言う事で。グラタンを作ってもらいます。実食は僕とマナブくん、そしてたいやきママで行います」
「たいやきママもですか?」
「はい。で、良いかな。マナブくん。こう言うのは実際に食べる人のリアクションが中々重要なんだ」
ほうほう。
「つまり俺と毒島さんの料理でたいやきママを唸らせろと」
「安心して! どんな料理でも唸る準備は出来てるから!」
たいやきママが胸を張って言う。
「八百長は止めてくださーい。兎も角、今回の料理ですが……今回はグラタン!」
「グラタン……?」
あれ、あの時より難易度上がってないかな。ハンバーグも難しかったけど、何だグラタンって。
「あの、毒島さん? グラタンの素とかないんですか?」
「……さて、料理の順番ですが」
「毒島さん!?」
「マナブくんが先行です。僕は作り方知ってるので、多分知らない筈のマナブくんに先に作ってもらいます」
俺の質問を無視して進めやがったぞ、この人。
「時間制限はカットとかするので特にありません。さあ、どうぞ」
ぐ、ぐぬぉおおお。
俺のイマジナリー母さんもお手上げだって言ってる。だって家でグラタンの手作りとかないもん。シチュー使ってやるくらいだもん。シチューだってルーからだって言ってるもん。
「ま、まあ? マカロニは茹でるよね?」
ボウルに出されたマカロニを茹でるところから始めよう。水張って適当に茹でるだけで良いでしょ。
「牛乳と、粉……?」
グラタンを思い出せ。なんか白くて、肉はそのまま。あれはシチューっぽいようなヤツだ。
「思い出すんだ、俺。出てこい、俺の記憶」
ハンバーグの時は粉は混ぜてた。粉は混ぜるもの。
つまり今回も。
「これだぁああ!!!」
牛乳に入れれば良いんだ。
「チーズは最後。つまり、チーズと具材意外は入れて良い?」
だって形見えないし。つまりソースに入ってるって事だ。バターと用意されてた塩胡椒も、粉を入れた牛乳の中に。
見てろよ、鷲尾さんめ。俺だって成長するんだからな。
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