第48話 初期好感度(?)

「清水さんだ」

 

 帰り際、カフェにいる清水さんを見つけて俺は立ち寄ることにした。メッセージでも良いとは思ったけど、タイミングが良かったから。

 

「相席、良いですか?」

「他にも……って、奈月くんか」

「ちょっと清水さんに伝えないとなので」

「何かあったの?」

 

 俺は清水さんの正面の席に座る。

 

「鷲尾先生は?」

「鷲尾さんは用事あるって言ったら帰りましたよ」

 

 清水さんの事とは言ってなかったから、まあ仕方ないけど。

 

「それよりも。雅くん……えぇと、黄金さんとメッセージのやり取りしてもらえませんか?」

「鷲尾先生が言ってたアレ?」

「そう言うアレです」

「良いけど、何でわざわざ伝えに来たの?」

「清水さんなので、しばらく送るかどうかで悩むかも、とか思ったので。実際清水さん、送ってませんよね?」

「…………」

 

 まあそれはそれで良いんだ。

 

「メッセージと、実際に会うのとでは印象違うかもですし」

「……確かに」

「俺も今だけは確認しますし。試しに一回だけでも」

 

 清水さんも「そう言うことなら」とスマホを取り出し、メッセージの入力を始める。

 

「こんな感じでどうかな?」

 

 スマホの画面を俺の見やすい方向にして差し出してくる。

 

『黄金ススム様

 

 お世話になっております、水野あさひです。

 

 明日、九月◯◯日◯曜日のレッスン開始時刻の確認の為、至急メッセージを送信させていただきました。

 

 お手数ですが、ご確認次第お返事いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いします』

 

 そんな文面が入力されてる。

 俺はこう言うの入力した様な覚えはないけど、堅い気がする。

 

「ここまでの業務連絡感は求めてないと言いますか……」

 

 寧ろ、これを受け取ったら色々悩む気がする。

 

「それじゃ、これは?」

 

 直ぐに清水さんが直す。

 

『黄金ススム様

 

 お世話になっております、水野あさひです。

 

 明日のレッスンの日程を教えていただけると幸いです。

 

 何卒よろしくお願いします』

 

 短くはなってるけど、根本が違う様な。

 

「あの、清水さん」

「うん?」

「俺とのメッセージは普通にやってませんでした?」

「あのね、奈月くん。君と黄金ちゃんは初期好感度みたいなのが違うの。まだ面と向かってちゃんと話せてないの。嫌われたらおしまいなの。嫌われたくないの。下手な文面で送信して、常識知らずと思われたらダメなの」

 

 その点に関しては問題ない気がする。雅くんなら、何か色々大丈夫だと思う。

 

「……でも『明日のレッスン、何時からでしたっけ?』とかで良いと思います。俺とのメッセージと同じ感じで」

「信じてみるけど……」

 

 俺の言った通りのメッセージを送信したらしい。直ぐに既読がつく。ただ、既読がついて三分ほど。

 

「既読スルー……?」

 

 清水さんが不安に駆られて二分ほど。

 返信が届いた。

 

「『午後一時からです』……と」

 

 清水さんが感謝を告げるメッセージを送り、スマホをしまう。

 

「……良かったぁ」

 

 ほっと溜息を吐き出した清水さんを見ながら、俺はメッセージを受け取ってから返信するまで雅くんがどんな反応をしていたのか想像した。

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