第41話 少年雅くん

「本屋行かない?」

 

 ラーメンを食べ終わり、少し休憩。

 その間に雅くんは俺に提案してきた。時間的にまだまだ本屋はやってる。姉ちゃんにはご飯を食べに行くことはちゃんと伝えてるけど。

 

「ちょっと待ってください」

 

 姉ちゃんに連絡するから、と告げると「分かった」と雅くんは何もせずに待ってる。俺がメッセージを送ると姉ちゃんから『了解』という返事が直ぐに来た。

 

「うん、大丈夫です」

「お、良かった……好きな漫画の新刊出ててさ。面白いから、持ってなかったら今度貸してあげよっか」

 

 無表情で言う雅くんにもしかしたら持ってるかもしれないと思い「因みにその漫画のタイトルは?」と聞くと「『初恋の人と憧れの人に迫られた俺は……』って漫画なんだけど」と答えが返ってくる。

 

「何その男子の夢が詰まった様な漫画」

「分かる? 良いよね。貸してあげる」

 

 俺のスマホが震えた。

 

『同士が増えた♪───O(≧∇≦)O────♪』

 

 届いたメッセージを確認してからスマホをしまい込む。俺の事をその間、雅くんは見つめていた。

 

「こう言う話ができる人学校に居なくて。ずっと欲しかったんだよ、気軽に話せる友達」

「そうだったんですか」

「うん。こんな顔だから怖がられちゃって」

 

 まあ、確かに俺も怖かったけど。顔が動かないから。


「男子も女子も話しかけにくいんだろうね」


 そんな自己評価を口にする。

 

「オレはこんなんだけど仲良くしよう」

 

 と言いながら雅くんはスマホを取り出して、また打ち込む。

 

『感想言い合いしてみたいしo(^▽^)o』

 

 何かが送られてくるんだろうな、と思いあらかじめ手にしておいたスマホにそんなメッセージが来た。

 

「あの、雅くん」

「うん?」

「俺、男なんですけど……大丈夫なんですか?」

 

 友達なら同性の女子の方が良かったんじゃ、と思って質問すると「男子で良かったんだよ」という答えが返ってきた。

 またしてもメッセージが。

 

『オレ、女の人と話すと緊張しちゃって。美人であればある程余計に緊張が……(´・ω・`)』

 

 俺は画面から顔を上げて雅くんを見る。

 

「所謂、童貞ムーブってヤツ?」


 相変わらずの顔で雅くんは言う。


「事務所も美人さん多くて色々大変なんだよね」


 確かに清水さんも美人だしなぁ。


「美人がいっぱいなのは嬉しいけども、個人的に」


 雅くんって漫画の趣味とかからしても、結構男の子寄りな考え方してる気がする。


「……ほら、取り敢えず本屋行こう。早く見たくない? オレは早く買いたいんだ」

「あ、はい」


 そう言いながら俺の背後に回り、両手で背中を押して歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る