第40話 同い年の女子と二人で

 

 解散となり、今日はもう鷲尾さんは先に帰ってしまった。斧田さんも既に部屋に居なくて、今は俺と金華さんだけ。

 

「金華さん、さっきはごめん」

 

 鷲尾さんに言われた通り、俺は金華さんに謝罪を告げる。

 

「別に、気にしてない」

 

 金華さんの表情はほとんど動かない。感情が読み取れなくて、俺もどう受け取れば良いか分からない。

 なんて思ってると、金華さんがスマホを取り出して弄り始めた。

 

「あの、金華さん……?」

 

 俺と話をしたくないからなのか、と思っているとポケットでスマホが震えた。

 

『全然気にしてないよー\( ̄▽ ̄)/』

 

 うん。

 何だろう。

 

「奈月くん、だっけ?」

 

 思っても初対面だから「話すのかメッセージにするのかどっちかにしない?」とは言いにくい。

 

「あ、はい」

「……金華さんじゃなくて、雅くんとか、雅とかで良いよ。何か堅苦しいし」

 

 名前呼びかぁ。ハードル高いなぁ。

 そして本当に表情筋が硬いのか、さっきから金華さんの顔が変わんない。

 

『同い年だし仲良くしよう( ̄^ ̄)ゞ』

 

 何だろう、メッセージが副音声みたいな使われ方してるよぉ。

 

「…………」

 

 金華さんがスマホをポケットにしまう。

 

「それじゃ、金華さん」

 

 俺も帰ろうと思ってそう告げると「ちょっと待って」と呼び止められた。

 

「な、何ですか?」

「お腹空いてない?」

「そ、それは……」

 

 もう良い時間だし。

 

「まあ……空いてますけど」

「ラーメン行こう、ラーメン。オレ、良い店知ってるから」

 

 オレ。

 金華さんって一人称オレなんだ。

 配信してる時は『私』だった気がする。まあ、だから何だって話だけど。

 

「それと奈月くん……オレの事は雅くんか、雅と呼ぶ様に」

「えーと……それじゃ雅、くんで」

「よろしく」

 

 やっぱり、普通に話してても表情の変化がなすぎる。なんて思ってるとまたもや、雅くんがスマホを取り出して打ち込み始めた。

 直ぐに俺にメッセージが来る。

 

『ごめんね、顔怖いって言われるからさ。こっちでせめて親しみやすくと思って(´・ω・)』

 

 そう言う事なんだ。

 

『アニメとかゲームとかプラモとか好きなんだ。カードとかもやってるから気軽に話振ってよ♪( ´▽`)』

 

 それからメッセージの連投。

 

『そう言うの好きだから(⌒▽⌒)』

 

 俺はスマホの画面から顔を上げると、さっきと同じままの顔の雅くんが俺のことを見つめていた。

 

「そう言う事だから、よろしく」

 

 すごい、最初の印象と全然違う。


「あ、よろしくお願いします。雅くん」

「うん、奈月くん」


 この人と同じ学校に通うかもしれないのか。何だろう、全く想像つかないや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る