第39話 新たなる縁、金華雅
俺と鷲尾さんは事務所で斧田さんに今日の勉強が終わった事を伝えると、別室に案内され「少し待っててくれ」と言われた。
「何でしょうかね、鷲尾さん」
「僕もなんだよね。てなるとVtuber関連の話かな?」
可能性としてはそんな感じなのかな。
「もしかしてたいやきさんが来てたりして」
「たいやきママが? ……確かになくはないかもですかね」
初配信の時の打ち合わせとかもあるかもだし。それをやっておきたいのは主に鷲尾さんの様な気がするけど。
「たいやきママが入ってきたら、俺もビックリですよ」
などと、話をして盛り上がってると斧田さんが戻ってきた。
「お待たせ、二人とも」
俺たちは斧田さんの方に身体を向ける。
「大丈夫です」
鷲尾さんに同調して頷く。
「……そうかい。まあ、二人に来てもらったのには少しお願いしたい事があってね。お願いするのは鷲尾くんの方なんだけど」
「僕ですか?」
鷲尾さんが自分を指差しながら確認する。
「そう。鷲尾くん、生徒がもう一人増えることになるとして……問題ないかな?」
鷲尾さんはキョトンとした顔をしてから「問題ないですよ」と答えた。
「一人が増えるくらいなら、僕としても全然大丈夫です」
鷲尾さんの答えを聞いて安心したのか、斧田さんは扉の方に向かって「入っておいで」と声をかける。
「……失礼します。ども」
入ってきたのは肩に届くくらいの金髪の女子。少しダウナーっぽい感じの顔をしてる。
「
声も女子にしては低い方だと思う。
「金華雅、Vtuberとしては『
これまた俺たちの先輩。
『
「……本当に女子高生だったんだ」
イラストは女子高生だったけど、Vtuberなんて年齢はどうとでも出来るし。声も落ち着いた感じあったから本気で高校生とは。
「…………」
金華さんと目があった気がする。
何でか、その目が睨んでる様に見えて気まずくて目を逸らした。
「奈月くん。大人っぽいって言われて傷つく人も居るんだから、後で謝っておきなさい」
俺は鷲尾さんの注意に「はい」と返事をする。ただ、さっきの目が今度は鷲尾さんに向けられてる気がした。
「────話を進めるけど、良いかな?」
斧田さんが咳払いをしてから、聞いてくる。俺と鷲尾さん、金華さんが「はい」と答えれば話し始める。
「金華くん……配信に時間をかけすぎる余り、学業が疎かになっているみたいでね」
斧田さんの説明に申し訳なさそうに肩をガックリと落とし、俯いてしまう。
「配信を頑張ってくれること自体は私としては嬉しいには嬉しいんだけどね。でも、それで金華くんの生活に支障が出るのは望んでいない」
だから無理のない範囲で学力向上のサポートをして欲しい、というのが斧田さんからのお願いらしい。
「金華くん。奈月くんとは同年齢みたいだから話が合うかもよ」
「……うっす。しゃーっす」
俺の方に近づいてきた金華さんが右手を差し伸べてくる。
「?」
「ん」
これは、握手を求めてるのか。
俺が恐る恐る手を握れば「よろしく」という声が聞こえた。
「連絡先、聞いて良い?」
「あ、はい」
ここ最近、メッセージアプリでの連絡先の交換に慣れてきたんだ。俺は澱みなく開いて、金華さんを登録する。
早速メッセージが送られてきた。
『よろしくね(^^)v』
そのメッセージに、俺は呆気に取られてしまった。
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