第23話 基本はシンプルに
本日のコンプライアンスは特に無し。
斧田さんに言われるがまま、パソコンの前に立たされる。
『二人とも何で却下なんだよ!』
開口一番たいやきママが理不尽を嘆く。
相手が俺たちだと分かってるからの暴挙でしょう。
「属性多すぎ」
鷲尾さんの率直な言葉にたいやきママは『男の娘も、ケモミミ美少年も魅力的でしょうが! そこに制服なんて、制服なんて!』と感極まってるのか、声が震えてる。
『贅沢にも程がある! こんな贅沢が許されて良いのか!』
「お、そうだな。却下で。許されないので却下でーす。既にそう言ってんでしょうが」
たいやきママが『どうじで! どうじてですかぁ!?』などと叫び、食い下がろうとする。
対して鷲尾さんが言い返す。
「たいやきさん。Vtuberはキャラクターでもありますけど、現実、人間が存在するんですよ? 演じてるだけとも違うんです。アニメとはそこが違うんです。ウケるキャラクターを作れば良いって訳じゃないです。というか、奈月くんのイメージにケモミミがありますか?」
しばらく黙ってから、静かに一言。
『私は……奈月くんから飛躍し過ぎた?』
この流れでいけばケモミミは無しの方向になりそうだ。
『……確かに。ケモミミは確かに私の性癖だったかもしれぬ』
「十中八九そうだろうが。と言うか男の娘もそうじゃないかな?」
『そ、そんな。どうか、男の娘だけは許しておくれ! 男の娘だけは!』
「……せめて、制服とそれだけにしなさい」
と、ここまで俺が口を挟む合間もなく大人同士の対話が行われた訳だけど。
「……うーん。たいやきママはケモミミが欲しいんですか?」
『!』
「差分とかなら、良いんじゃないですか? どう言う扱いになるかは分かりませんけど。カチューシャとかで」
『え、奈月くんって神様?』
たいやきママがせっかく考えてくれたケモミミを、完全否定するだけと言うのも何となく違う気がしたから。
「良いの、奈月くん?」
「まあ。使うかどうかは分かりませんけど」
形として存在してるなら、まるきり意味がないと言う訳でもないはず。
『ふふふ! 良いだろう、奈月くん。私の本気を見せてあげよう。そう、第二案ではより素晴らしい物を見せてあげよう』
何かたいやきママも余計に気合いが入ってる様だし。
『基本はシンプルに。オプションは隠しといて、後から幾らでも盛れる様にって事だね! よーし、いっちょ頑張るぞ! こうしちゃ居られん!』
ブツ、と通話が切れた。
「あの人、本当に分かってんのかな?」
鷲尾さんが心配そうに言った。
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