第21話 属性モリモリ第一案

 

 今日のコンプライアンス研修が終わり、夕方。俺は斧田さんに許可を取り、鷲尾さんと一緒に会社の空いてる部屋を使わせてもらっていた。

 

「おーい、大丈夫かー?」

「あ、あ、あ……い」

「い?」

「伊藤忠敬!!」

「うわっ、ビックリした……って、いや何か混ざってるんだけど」

 

 情報がまとまらない。

 グルグル覚えた単語だけが回ってる。結びつきが甘い。

 

「もうちょっとペース落とそっか。流石に一気に詰め込み過ぎても入りきらないだろうし。あと、君は世界史選択だよね?」

「勉強の話はもうやめましょう。俺の脳は休息と糖分を欲してます」

「明日もやるんじゃないの?」

「今日は今日。明日は明日。今日の分は終わりなんです!」

 

 これ以上は入らない。

 一日三時間の勉強だって、そんなの無理に決まってる。脳が情報を受け付けなくなってるんだから。

 

「二人とも、私はそろそろ帰ろうと思うけど」

 

 斧田さんは会社にまだ残っていたらしく、俺たちの居る部屋まで確認に来た。

 

「僕たちも帰ります」

 

 俺も机に両手をついて立ち上がる。

 

「……と、その前に。君たちに朗報だ」

「はい?」

 

 既に俺には返事をする気力もなく、首を傾げるだけしかできなかった。

 

「君たちの第一案がたいやきさんから送られてきた」

 

 見ていくかな、という質問に俺は「見たいです!」と答える。

 

「お、元気になったね」

 

 斧田さんが笑う。

 

「鷲尾くんも行くだろう?」

「はい」

 

 斧田さんの後をついて別の部屋に。斧田さんが準備を進めて、俺たちの前にパソコンを用意した。

 

「私もまだ見てないんだよね。では、まずは鷲尾くんの方から」

 

 斧田さんは送られてきたイラストを開く。

 

「おお! ザ・モブ教師!」

「ちょっと、言い方」

 

 黒い髪は緩い天パで、着慣れた様なスーツ姿と。現実とは違って目はちゃんと開眼してる。

 

「まあ、でも。確かに。配信とかの内容考えたらコレはコレで良いのか。僕の立ち位置的にも」

 

 鷲尾さんは納得したのかウンウンと頷いてる。斧田さんが続けて俺の画像を開く。

 飛び込んできたのは銀髪の美少年、なのか。女の子にも見えそうな。

 ああ、これはつまり男の娘だ。

 しかも。

 

「ケモミミ!?」

 

 鷲尾さんが叫んだ。

 

「オイ、あの女やりやがったな!」

「これは……」

 

 斧田さんも言葉を失ってる。

 

「ケモミミ、男の娘、学生服って……流石に属性多過ぎるだろ! 盛れば盛るほど良いってもんじゃないだろ!」

 

 ケモミミ、男の娘、学生服。

 これが俺と鷲尾さんとたいやきママで話した結果からイメージされた姿。

 

「…………たいやきママの認識歪んでませんかねぇ」

 

 俺の呟きが室内に響いた。

 そして当然の如く、属性過多のこれは却下となった。

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