第19話 イラストの話

「子供って何歳くらいまでがたいやきママの中では子供なんですか?」

『えーと、ねぇ。ビビッときたら? こう、庇護欲がそそられるって言う感じ?』

「もっと具体的に……何歳から何歳までがストライクゾーンですか?」

『うーん……〇歳から二十代前半くらいまではイケるかな』 


 またしばらくの雑談。


「────仕事の話はどうした!?」

 

 そんな最中で鷲尾さんが叫ぶ。そういえば何もイラストの話をしてなかった様な。

 

『ちゃんとやってるって。二人と話して感じたイメージ、メモしてるから』

「今、どんな感じですか?」

 

 俺が気になって聞いてみると『奈月くんは可愛い子供って感じで、鷲尾さんが真面目な先生かな』との事。

 

「抽象的じゃないか?」

『一回形にしてみないと分からないんです〜。髪色とかも試してみたいし』

 

 細かいところは一度描いてから考えるらしい。

 

『まあそれでも何回か出して、修正してって感じだと思うから。初配信? それか動画かな。その時は私も呼んでね』

「初配信が授業参観になるなんて……取り敢えず、斧田さんに聞いてください」

 

 鷲尾さんの答えに『そうですね。楽しみにしてください』と笑っていた。

 

『それでは、また』

「ありがとうございました、たいやきさん」

「ありがとうございました」

 

 そして通話が終了する。

 俺たちが部屋を出て少し歩くと斧田さんが正面からやってきた。

 

「どうだったかな?」

「あの人もVtuberに……とか、斧田さんは考えてますか?」

 

 鷲尾さんは「あの人、キャラクター性強すぎますよ」と続けた。

 

「話した事は何回かあるけど、そんなにか」

 

 斧田さんもさすがにあの狂気は目撃していなかったらしい。ビジネス的な関係だったからだと思う。

 

「動画はちゃんと確認する。まあ、絵は用意してもらっても良いし。自分で用意できるだろうから。だとしても、ウチの所属にはしないよ」

「なんでですか?」

 

 俺は理由がわからなくて素直に質問する。

 

「……秘密だ、君たちには」

 

 斧田さんは人差し指を唇の前に立て、微笑みを浮かべた。俺が首を傾げると。

 

「まあ、そのうち分かると思う」

 

 察して、答えを誤魔化した。

 

「そうそう。今日はもう大丈夫だけど、明日からはコンプライアンス研修に出る様に。二人とも午後から空いてるね?」

 

 俺は鷲尾さんをチラリと見る。鷲尾さんも考える事は同じだったのか。でも、斧田さんに嘘は通用しない。

 だって知ってるから。

 

「……はい」

「大丈夫です」

 

 俺の返事に続いて鷲尾さんも予定に問題がない事を伝えた。

 

「良かった」

 

 とは口で言いながらも、知ってたと言う様な顔をしている。

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