第18話 たいやきママの狂愛

 

『それでね〜、妹に子供が出来たのもあって余計に子供が可愛くって』

 

 俺と鷲尾さんなどそっちのけで、たいやきママは子供への愛を語り始めてしまった。言っては何だけど、この人。

 意外と狂ってる。

 

「保育園の先生とか適職じゃないですか」

 

 子供いっぱいいるし。

 

『成る程』

 

 俺は何かを早まったのか。

 

『……保育園行けば、勘違いした子供がママって呼んでくれるかも』

「たいやきママ、犯罪だけはやめましょう」

 

 俺の注意にたいやきママは『あはは。考えただけだって。心配性だね、奈月くんは』と笑う。

 

「考えただけですか。なら大丈夫ですね」

『そうそう』

 

 それなら全然。

 

「おい、僕がおかしいのか? 考えるだけでも大分ヤバいと思うんだけど」

『それでも元教師なんですか? 思想の自由って知ってますか?』

「知ってるけど、自由を盾にする事で倫理観ゼロ思想が許される事はないからね?」

 

 頭が硬いですね、鷲尾さんは。

 と、たいやきママの声はやれやれとため息混じりに響く。

 

『まだ何もやってないのに鷲尾さんがこんな事言うの、奈月くんどう思う?』

 

 俺は鷲尾さんに向き直り「鷲尾さん。俺たちにたいやきママの思考を制限する権利はありませんよ」と注意する。

 

「おい、奈月くん。コイツさっき『まだ』って言ったぞ!」

「いやいや。俺たちのママがそんな事永遠にするわけないじゃないですか。ねえ、たいやきママ」

 

 俺が確認すると『えー……と、そぉれーはぁ〜』と言い淀む様な声がした。

 

「奈月くん。もしたいやきさんが問題起こすと、僕らも追加で炎上すると思うよ」

「たいやきママ」

 

 俺はたいやきママにお願いする。

 

「保育園とか学校には近づかないでください」

『接近禁止命令出されたんですけど!?』

 

 ただ、たいやきママもそれはそれで困る事があるようで。

 

『姪っ子の迎え、姪っ子の迎えにだけは行かせてください、奈月様! 妹に頼まれる事もあるんです! 抑えますから!』

「いや、人として当然だよね? 垂れ流しは犯罪だから」

『お願いします、奈月様!』

 

 そんな鷲尾さんの注意は右から左へ。俺はたいやきママに「そうですね。生活に必要な事なんですし。そもそも俺にそこまでの強制力はありませんから」と許可を出せば。

 

『しゃっ、オラァァッッ!!』

 

 ガッツポーズしてるんじゃないかと思ってしまう程の歓喜が伝わってくる。

 

「奈月くん」

「何でしょう、鷲尾さん」

「この人、かなりイカれたキャラしてない?」

「そうですね」

 

 俺もパソコンから未だ聞こえる喜びの声を聞きながら、鷲尾さんの言葉に頷いた。


「…………」


 斧田さんはこのやりとりを見て、どう思うのだろうか。

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