第11話 姉との動画鑑賞
『奈月くん、動画編集し終わったから確認してね』
メッセージと共に、編集された動画が送られてきた。それから、直ぐに通話がかかってきた。
鷲尾さんは、開口一番。
『奈月くん……ごめんね』
声色が本気の謝罪に聞こえる。
「何で謝るんですか!?」
姉ちゃんはシャワーを浴びてて、今は部屋に俺しかいない。
「ほ、ホットクは買えたじゃないですか!」
『いや……そのね。まさかあんなになるとは思ってなかったんだよ』
現状、出店で買うことになったキムチやらトッポギやらは今、姉ちゃんの部屋の冷蔵庫に入ってる。
帰ってきて俺が袋の中を見せた瞬間、渋い顔をしたけど『……まあキムチも嫌いじゃないから許してあげよう』と寛大にも容赦してくれた。
『お使いを提案した僕にも責任があるから、キムチとかトッポギとか食べないなら買い取るよ』
「……それは、ちょっと相談と言いますか」
姉ちゃんが今後の食事の予定を俺が買ってきたアレを軸にしてないか、というのもあるし。既に何食分かは食べてるし。
可能性は普通にあるんだ。
「奈月ー、上がったよ……って、電話中か」
「あ、姉ちゃん」
風呂から上がった姉ちゃんはバスタオルを首に掛けて、出てくる。
「姉ちゃん。この前買ってきたキムチとかって他の人にあげても大丈夫?」
「んー? 全然良いけど。もしかしてオーディションで知り合った人?」
「そう」
俺は鷲尾さんに「大丈夫だそうです」と伝える。
『じゃあ今度予定が合う日に……』
「俺はいつでも暇ですよ」
あ、ヒキニートだからじゃなくて。
「な、夏休みなんで!」
『知ってる。これでも教師だったんだから』
あ、そ、そうだったね。そう言えばそうだった。鷲尾さんは元教師だ。俺は余計な事を言ったのかもしれない。
ヒキニートの解に至る、重大なヒントを与えてしまったのかも。
『ちゃんと奈月くんの初めてのお使い、自分で見てよ? 直して欲しければ、僕に出来る範囲で努力するから』
「あ、はい」
『お姉さんと今一緒に居るんだっけ? 一緒に見ても良いと思うよ』
俺はチラリ、と姉ちゃんを見やる。
「ん?」
何だ、と言いたげに姉ちゃんは腰に手を当て首を傾げる。
「一人で観ます」
「何の話……ってもしかして、動画撮ったの? 私にも見せてよ」
「…………」
速攻でバレた。
「オーディションで使うやつでしょ? 第三者の意見も欲しくない?」
結局、俺の苦しんでる姿を見て楽しみたいだけなのでは。
『取り敢えず、確認したらメッセージでも送ってよ』
通話が切れる。
俺は立ち上がる。
「ほら、奈月。動画観るよ」
「お、俺シャワー浴びて……」
「アンタ、明日休みでしょ? いや、明日も休みでしょ?」
シャワーを浴びるのが遅くなろうが、関係ないだろと、視線やら何やらと言外から伝わってくる。
「ね、姉ちゃんは夜更かしして……」
「まだそんな遅くないだろ? お?」
「ふ、ふぁい」
俺は姉ちゃんの指示に従いBluetooth接続をし、動画タイトル『奈月くん、初めてのお使い』をテレビに映し出す。
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