第3話 高校生の放課後


 こうしてなんとか生徒指導が終わったが、教室に戻ると既にHRは終了しており、みんなは帰宅準備を終えて待っていてくれた。

「ゆっきーとしゅーは何言われたの~?」と早速あだ名呼びをしてくるのは夏海。

 絢香先輩にお尻ぺんぺんされたというわけにもいかないので二人して苦笑いしながら答える。「絢香先輩も本当は怒っていなかったけど、立場上怒っただけだって言ってたよ。同じ部活になる予定だから中学の時に何のポジションをやっていたのかとかで盛り上がったよ。」

「え~初日から先輩と仲良くなれててすごい~めっちゃ怒られたのかと思っていたよ……」と白い歯を見せながら微笑む紗耶香。

(あ、やば。めっちゃ可愛いな……)

「紗耶香ちゃんが一番可愛いよ!!(笑)」と積極的にアプローチしていく秀。

「えぇ、本当にそう思ってるの~?まだ、出会って1日目なのに!(笑)でも、そう言ってくれて私も嬉しい。もっと話したいけど、秀くんは携帯持ってないんだもんね。だったら、家電の番号教えてくれない?」

「うん、いいよ。ただ……」と言葉に詰まる秀に対して、

「ねぇ、2人の甘い空間に入ってないでさぁ~あたしもみんなともっとお喋りしたい~

「いいね!」

秀もいいよなと横目で視線を送ってくる優貴。

「ぼ、僕も一緒に行きたいかな……」と不安そうに言ってくる颯。

 部活も入学したてでなかったため、なんやかんやで初日からみんなで遊ぶことになった。メンバーは秀、優貴、颯、紗耶香、夏海の5人。行き先は勿論、高校生の青春を象徴すると言っても過言ではない安くて長時間居られる。カラオケ”。

 俺たちは学校を出て、西側に二十分ほど歩いた先にある赤字の看板が目印の有名チェーン店「まねきねこ」にやって来た。


「いらっしゃいませ。何名様のご利用ですか。学生の方は証明書の提示をお願いします」

「五名です」と答えながら、それぞれ生徒手帳を受付の人に見せる。

「はい、高校生5名様のご利用ですね。利用のお時間の方はいかがなさいますか」

「フリータイムでお願いします」

 わいわいしながら、目的の部屋へと入る。

「誰から歌う~?私は歌うの苦手だから後がいいかな。」

「はいはい~!あたしから歌ってもいい~?」

 頷く一同。皆、初対面だし、一曲目を歌うハードルは高く、自信がなかったため、この申し出は非常にありがたいと思ったのである。

「あたしが歌う曲はSuperfly の〔愛をこめて花束を〕をで~す」

(歌う)

 …………

 めっちゃ音痴だったが本人は楽しそうに歌っていたのであえて触れずに「上手かったよ~」とにこやかに言う。

「カラオケでのSuperfly はやっぱり盛り上がるよね~」

「陰キャにはハードル高いわ(笑)」

「や、ほんとにそれ分かるわ~ぼ、僕かなり下手だけど歌っていいのかな?(笑)」

「なーに言ってるのさ、秀が陰キャだったら大半の人がそうでしょ。そもそも陰キャだったら初対面の子たちとカラオケきたりしないから(笑)」


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