第4話
退屈凌ぎに商店街へ行く。色々なものが売ってあってどこもかしこも騒がしい。骨董品の陶器の置物に目を引かれた。ドラゴンの形をした陶器だ。子供心をくすぐる作品で、思わず買ってしまった。
「オラッどけっ!」
暴力的な声が聞こえてきて思わず振り返った。少年が大男に追われていた。人の波が割れて、少年は向こう側に逃げていく。
「絶対に許さねえ!殺してやる」
俺は思わずその大男の足をかけた。
「!?」
大男はその場で転び、顔を地面に打ち付ける。
「い、てぇ、誰だ!!!!!!」
大男は周りを見て叫び始める。
俺は知らんぷりを決め込んだ。少年はこれで助かっただろう。
「誰がやったって聞いてるんだ!!!」
あれだけ騒がしかったのに、今はシーンとしている。悪名高い男なのだろうか。
「殺す!殺す!殺す!」
血走った目で辺りを見渡す。他のみんながガヤガヤとし始めて、1人喋らない俺にその男は目を向けた。
「オイ!おっさん!誰がやったか言え!」
「俺だよ」
「アア!?」
「俺が君の足をかけた」
「なんだと……!!!」
「俺を誰だと思ってんだ!?」
「知らないね、それより何で少年を追いかけてた?」
「あいつは盗人だからだ、俺たちのシマで盗みは許さねえ!ぶっ殺す!」
そう言って男は殴りかかってきたのを、ひょいと避けて肩をきめる。
「いてえ、やめろ!!!」
「なぁ、何処の世でも子供は宝なんだよ、殺すなんてしてはいけない」
「説教か?いい加減離れろ!」
「いいよ、でも」
ボキ、という大男の腕の骨が折れる音が聞こえる。
「これで少年は安心だね、それじゃ」
「いてえええええ!!!!」
俺は足早に歩いて宿に帰る。
「殺してやる!」
男の恨み声が後ろから聞こえてきたが、それを無視して歩き続ける。
モーセの海を割る秘技のように、人の波が割れる。
「おい、あいつ喧嘩売りやがった」
「殺されるぞ……?」
ヒソヒソと俺に対しての囁き声が聞こえる。
俺は少なくとも殺されることはない。それよりあんなチンピラがまだいるとは。
王都にいたはずの昔の仲間はどうして放置しているのだろうか。あんなチンピラ風情がたむろしているギャングなど1日で潰せるはず。
王もなぜ放置しているのだろう。もう何年も会ってないが、この国を良くする!そういう熱意ある言葉を聞いたことがあるのだが。
ドラゴンの陶器を机の上に置く、中2学生が好きそうだ。
俺は昼寝をすることにした。
ベットに横たわり、瞼を閉じる。なぜか疲れた気がする。
瞑想を軽くしていく。瞑想はモンクの技能を高めてくれる。
いつのまにか意識は消え、俺は暗闇の中に潜り込んだ。
「ボンノルドさん!」
ジョニアの甲高い声で目が覚める。
「一階に来てくれ!」
「わかった!」
一階に降りると血走った目の腕に包帯を巻いた男とその取り巻きが宿屋を占拠していた。
「見つけたぜ……!探してたんだよ、お前のこと」
「俺は特にお前に用事がないが」
「俺にはあるんだよ!」
「逃げられると思うなよ……!」
取り巻きは剣やナイフを取り出した。
「まぁ待ってくれ、ここだとみんなに迷惑がかかる、俺は逃げないから、外に行こう」
「殊勝な心がけだな、いいぜ、表に出ろ」
「わかった」
「ボンノルドさん……!!!」
「ジョニアはここで待っていてくれ」
「いや!僕憲兵を呼んでくる!」
「おい!」
不思議と大男はそれを止めなかった。
表に出た俺たちは、臨戦体制のまま動かなかった。
「一つだけ書いておきたい、憲兵のアニーは知っているか?」
「ああ、知ってるよ、なんだあいつが助けてくれるのを期待してるんだな?あいつはいないぜ」
「何?」
「暗黒大陸に行って死んじまったよ、若い王と共にな」
「……」
暗黒大陸に行ってたのか、あいつは……しかも王と。
「さあ!やろうぜ」
「予定ができた、が、しょうがない、付き合ってやる」
目の前の男は剣を持ち振りかぶってきた。俺は右手で剣を殴り、バラバラになった鉄片が左男の顔面にふりかかる。「うわあ!?」そのまま後ろにいた男どもの腹に蹴りをくれてやる。内臓が破裂したのか、血反吐を吐きそこに倒れ込む。
ナイフを持っていた男には人差し指と中指で目に差し込む「う」そのまま眼球が破裂し崩れ落ちる。
「なんだと!?」
そして大男の首を絞める。
「なぁ、お前はバカなことをしたよ、察するにあいつらがいなくなったからお前みたいなゴミがのさばってんだな?わかってる、お前みたいなゴミがいるせいで、みんな困ってる」
「や、やめてくれ…」
「いや、やめない、これまで傷つけてきた奴に謝る気持ちは?」
「ご、ごめんなさ」
ゴキ、という音が聞こえる。その男の首の骨が折れる音だ。
そのまま地面に横たわし、懐から紙巻きタバコを取り出してマッチで火をつける。リラックスするために人殺しをした時は喫煙する習慣を立てている。
そして一服した後、宿屋に戻る。
「ボンノルドさん!大丈夫だったんだね!よかった……!!」
泣きべそをかいたジョニアが言うには、憲兵を呼びに行ったが拒否されたらしい。無理だと言われて、憲兵の宿舎に行くも拒否、それで1人で戦おうと震えながら来たらしい。
「誰かが助けてくれたんだ。見知らぬ誰かで、フードをかぶってたんだけど、イゴールの街を救った人かもしれない」
「ほんとに!?それは僕も会いたかった、でもほんと、ボンノルドさんが無事でよかったよ……」
「ありがとう、ジョニア」
「マスターもすみません、迷惑かけて、明日には出ます」
「いや、まぁ、ゆっくりしていってくれ。あいつらには手を焼いていたんだ。あいつらの死体を見たよ、死んだのなら大丈夫、だと思う」
「いや、大丈夫です。夕食はいただきますね」
「ああ」
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