第4話 告白
「
青天の霹靂……文字通り青い空に雷が落ちる様から、予想だにしていない突発的な物事のことを指す言葉だが、快晴の空に向かって魔力を放つことで実際に青天の霹靂を起こすことができる。
雷の上級魔法「
「ほわぁ……本当にこの短期間で上級魔法まで使えるようになるなんて思いませんでした」
「思ってもないことさせようとしてたのか」
「だって、才能があるって言ってもそれには限界があるものだと……もう私が教えられることなんてありませんよ」
確かに、神聖魔法を抜きにしたシェリーよりは強くなっただろう。しかし、彼女が扱う神聖魔法の威力を考えるとこれでも全然強くなった気がしない。それに、Aランクギルドの魔導士なら上級魔法を扱うぐらいは訳ないはずだし……俺があのギルドで無能扱いされていた頃とはあんまり変わっていない気がする。まだ足りない……自分が無力感で押しつぶされそうになるほどの悔しさを払拭するにはまだ足りないんだ。
「……と、取り敢えず、モンスターと正面から戦闘できるようになった訳ですし、1回迷宮探索でも行きませんか?」
「2人で? 流石にちょっと危険だと思うから辞めた方がいいと思う」
それに……迷宮探索って全くいいイメージがないから。ある種のトラウマとでも呼べばいいのだろうか……上級魔法が使えるようになった今でも、迷宮探索に行って探索者として成功するイメージが全く湧かない。
そんな俺の不安を、表情を見ただけで察してくれたのか、シェリーはちょっと焦ったような動きで腕をパタパタとしながら色々と言葉を考えているように見える。
「あのー、その……ま、まずは王都の外にいるモンスターを狩るぐらいから始めますか? 魔法にだって慣れないといけないですし!」
「……気を遣ってくれてありがとう。でも、ここまででいいよ」
俺に気を遣ってなんとか自信を持ってもらおうとしてくれているのはわかるが、流石にシェリーにそこまでしてもらうのは気が引ける。そろそろシェリーにとは別れて、俺は1人でなんとか生きていく方法を探していくしかないと思う。
「い、嫌です! 私は絶対にリンネさんから離れませんからね」
「うわっ!? ちょ、なに!?」
「嫌です!」
俺が何を言いたいのかさっきの言葉だけでしっかりと理解したらしいシェリーが、急に抱き着いてきた。女性特有の柔らかい身体の感触とふんわりと香ってくる甘い香りに、思わず顔が熱くなるのが自覚できた。た、確かにシェリーの身体はその……男性から見て魅力的な体系をしているけど、まさか女性のむ、胸がこんなに柔らかいなんて……前世の時から女性と付き合ったことない俺には未知の体験だ!
頭の中に次々と思い浮かぶ煩悩を振り払い、触る箇所に気を付けながらシェリーを引き剥がす。
もしかして……俺と離れるのが嫌なんて俺のことが好きなのでは、なんてモテない男特有のよくわからない勘違いが頭の中で発生しているのを感じながら引き剝がしたシェリーの方を見ると……涙目で顔を赤らめていた。
「あー……」
「……勘違いじゃないですよ」
違うらしい。
本当に待ってくれ……まず、俺はモテない。モテるための努力ってのは今まで生きてきてそれなりにやってきたつもりだが、女性から向けられる言葉はいつも「いい人だよね」で終わりだ。しかし、そんな俺でもシェリーがなにを思って俺についてきたいと言っているのか察してしまえるほど……彼女の思いは直球だった。
「宗教的に、恋愛オッケーなの?」
「秩序の女神様は生物が繫殖することに肯定的です」
「繁殖って言わないで、なんか生々しいから」
くそ……こんな時、どんな気の利いたことを言えばいいのかなんて学校で教わらなかったぞ。まず、俺の勘違いではなく本当にシェリーは俺のことを……好きになってくれている。ど、どうすればいいんだ。
「今すぐ結婚してくださいなんて言うつもりはないですよ? でも……リンネさんが私のことを女性としてどう思っているのか、それだけは教えて欲しいです」
「え、あ、うん」
やべ、コミュ障みたいな返事にならない返事が口から出てきた。
き、厳しい……今までは住む世界が違うと思っていたからシェリーと普通に接することができたけど、男女の関係になれるかもしれないって考えると物凄い気後れしちゃう。それぐらいに、シェリーの美貌は眩しすぎる。でも……男として、こんな美人が俺のことを好きと言ってくれるなら、応えなければ死んだ方がマシだろう。覚悟を決めるしかない……さながら、迷宮に飛び込むような気持で。
「お、おお、俺も……シェリーのことは、女性として……見てま、した。あれ、なんか最低なこと言ってるような気がしてきた」
「そうですか? 私は好きな人に女性として見て貰えて嬉しいですよ? 前々から胸をちらちらと見ていたりもしたので、そうじゃないかなとは思っていましたけど」
はい、死にたいです。
だって……普通に考えて「巨」って感じのモノが魔法を使用している時とか歩いている時とかに揺れているのを見ると……どうしても目で追ってしまうんだよ。狩猟本能で揺れる物に目が行く猫みたいに、揺れる胸に目が行くのは男の本能なんだなって。
「はい、好きです」
「胸が?」
「え」
それを聞かれて答えられる男ってこの世にいるんですか? 内心ではみんな好きだけど女性に対して真正面から好きって言える人はいないんじゃないか?
「冗談ですよ。ものすごく緊張した顔をしていたのでちょっとからかっただけです」
かわいい。はにかむような笑顔を見せてくれたシェリーに、マジで心の底から惚れてしまった気がする。というか、シェリーもちょっとは恥ずかしいと思っていてくれたってことなんだよな。
「さぁ、これで憂いはなくなったので二人三脚で頑張っていきましょう! まずはどうします? 2人で新しいギルドでも作っちゃいますか? 新しくどこかに入るよりもそっちの方がよっぽど楽だと思いますけど」
「え、展開早くない?」
一世一代の告白はあれで終わりなの?
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