第15話 再び町へ

 受付嬢さんは、灰青色の瞳を呆然と見開いている。

 彼女の前には、きらきらと輝く氷歌の宝石ミュリーシャートが置かれていた。

 私はわたあめを頭の上に乗せながら、にこにこと笑う。


「みゅーりしゃーと、もってきました!」

「ふっふっふ!」

「い、いや、それは見ればわかるんだが……ど、どうやって手に入れたんだ!?」

「そのへんにおちてました!」

「その辺に落ちていたのか!?」

「はい! それはもう、どうどうたる、おちっぷりでしたね!」

「それはもう堂々たる落ちっぷりだったのかー!?」


 受付嬢さんが身体をのけぞらせる。相変わらずリアクションがいい。


「というわけで、マルハナに、ほうしゅうください!」

「ふるっふ〜!」

「ま、まあ、いいが……ちゃんとご両親に預けるんだぞ?」

「あずけるかどうかは、おねえさんのたいどしだい!」

「わたしの態度次第なのか!? え、何で!?」


 受付嬢さんが驚きつつ純粋な疑問を抱いている。

 まあぶっちゃけると、マルティスさんやコハナさんに預ける気はさらさらないが。


 それから私は、受付嬢さんが取ってきてくれた100,000エンエンを受け取った。

 10,000エンエン札が10枚……厚みが何とも嬉しい。

 私は受付嬢さんへと微笑む。


「ありがとうございます! ではでは、マルハナのさらなるかつやくに、ごきたいください!」

「ふるふふ〜!」

「こ、これ以上の活躍が待ち受けているのか……!?」


 愕然としている受付嬢さんへ「さあね!」と返答しつつ、手を振って冒険者ギルドを後にした。


 *・*・


「ふっふんふん、ふんふん〜♪」

「ふっるんるん、ふんるん〜♪」


 私とわたあめは、鼻歌をうたいながら歩いている。


 私が右手に持っている透明な袋には、数多の野菜の種と花の種が入った小さな袋が入っている。折角なので売られていた全種類を買ってみたが、それでも報酬の10分の1である10,000エンエンにも満たなかった。

 そして左手に持っている透明な袋には、プラスモモミーピッグ(モモミーピッグよりちょっと強く、モモミーピッグよりかなりデカい魔物)の貯金箱が入っている。元々自分が持っていたモモミーピッグ貯金箱はかなり小さかったので、今後のことを考えて買っておいた。ちなみに報酬の100分の1である1,000エンエンだ。


「流石に家にじょうろとかスコップとかはあると思いますし、これで家庭菜園もガーデニングもばっちり始められますね! いやっほう!」

「ふるっふ〜!」


 満ち足りた気持ちになりながら、私はぴょこぴょこ弾むように歩くわたあめの隣でスキップを始めた。

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