第6話
「で、世界をひっくり返すって言ったってまずはなにから始めるんだ?」
「今考えてるようるせえなぁ~」
「そうかそうか、しっかり考えてくれ」
初期ダンジョンなどと揶揄されている割には意外と広い洞窟の中を進みながら、俺とラークはそう会話を行う。
洞窟の中であるため、どれだけ進んでもあまり景色が変わらないというのが悲しい点ではあるものの、考え事をするにはこの上なくいい場所だなと俺は思い始める。
「それでだ、世界をひっくり返すっていうのはなにからはじめるんだ?」
「今考えてるよ静かにしてろ」
「そうかそうか、しっかり考えてくれ~」
…人間の時よりも体が小さくなってしまっているためか、歩いても歩いてもあまり歩けていないような気がしてくる俺。
…大人になった人間が子どもの頃に戻りたいと願う話はよく聞く話だが、いざそれが実現したならそれはそれで意外に不便なものなのかもしれない…。
そういえば調整者様の話じゃ、俺の実力はゴブリン基準で考えれば相当に強いものらしい……が、正直なところ果たしてそれがどこまで通用するのかは正直さっぱりだ。
ここまで4人の勇者を倒したのだって、相手がかなり油断していたことと半ば不意打ちに近い戦い方をしたという点が大きい。
…とすると、俺たちがまず目指すべきなのは…。
「とどもつまり、世界をひっくり返すにはなにから始めればいいんだ??」
「まだ思いついてないんだようるさいなぁ」
「嘘。今、何か思いついた顔した」
「お!?」
「す、鋭いなフォーリット…」
可愛らしい顔なのだが無表情でそう言葉を発するフォーリット。
今のその雰囲気は、俺との距離を縮めてくれたって理解していのだろうか…?
「コホン…。前にラークが言った通り、いきなり外の世界を目指すのはリスクが高すぎる。だからまずは、このゴブリンの洞窟を俺たちで完全に
「まぁ、少しは現実味を帯びてきたって感じだな」
「うん。いいと思う」
二人は俺のアイディアに対し、いい手ごたえを感じられるリアクションを見せてくれた。
俺はその計画を進めるべく、ラークに対してある質問をぶつけた。
「それでラーク、ここには俺たち以外にどれくらいのゴブリンがいるんだ?俺がゴブリンたちに結束を呼びかけたら、みんなは答えてくれると思うか?」
「さぁなぁ…。別に俺だってこのダンジョンのベテランってわけじゃないからな…」
「ラーク、あんまり物知りじゃない」
「う、うるさいフォーリット!!…まぁただ、それなりの数のゴブリンがここにはいると思うぜ?なんせ駆け出しの勇者たちに狩られても狩られても狩られ続けて、奴らの経験値獲得に無数に貢献し続けてきたんだからな。そいつらの勇者に対する怒りの感情をうまく利用できれば、俺たちに協力させることはできるかもしれないが…」
「さすが、いきなり俺の事を襲ってきただけのことはある。なかなか説得力がある言い方だ」
「そ、その話はもう良いじゃないですかツカサさん…」
まさに”トホホ”という表情を浮かべ、そう言葉を発したラーク。
その直後のこと、突然にフォーリットが歩く足を止め、周囲を警戒する態勢を取り始める。
「っ!!!」
「フォ、フォーリット?一体どうし……」
ラークがそう言葉を漏らしたのもつかの間、俺たちの前には洞窟の陰から現れた一匹のゴブリンが姿を現した。
…敵なのか味方なのかは分からないが、その表情に不気味な笑みを浮かべつつ、その右手にはどこで手に入れたのか短刀が握られており、その剣先は俺たちの方に向けられていた。
そんな相手の姿を見て、俺の隣に立っていたラークが一歩前に出てこう言った。
「なんだなんだ、俺に挑戦しようっていうのか?言っとくが俺はこれでも勇者にさえ引けを取らない実力を持つんだぜ?のこのこと現れたことを後悔させて…」
…その次の瞬間、10体ほどはいようかというゴブリンの群れが突然に俺たちの周りに現れ、逃げ道を封じるような形で陣取る。
…おそらくこいつたちはこれまで洞窟の陰に隠れて俺たちの後をつけていたらしく、俺たちを包囲するに適した場所に来た段階で自分たちの姿を現したのだろう。
…そのゴブリンの群れを見たラークはそのまま静かに一歩後ろに下がり、俺の事を指さしながらこう続けた。
「…後悔させてやるって、こいつが言ってた…」
…その語気は非常に弱弱しく、明らかに先ほどまでの勢いを失った様子…。
「…おいラーク、こいつらは?お前の友達か?」
あえてラークの言っていた事はスルーしてやることに決めた俺、するとラークは自分たちにしか聞こえない程度の声の大きさでこう言葉をつぶやいた。
「ど、どうするよツカサ…。いくらお前でも、さすがに相手の数が多すぎる…。へ、下手に刺激せずに穏便に済ませようぜ…」
「穏便って…。別に戦うと決まったわけじゃ…」
現れたゴブリンの姿を見た途端、
俺たち3人を取り囲む全員がけらけらと楽しそうな表情を浮かべている中で、リーダーらしきゴブリンが一歩前に歩み出て、俺たちに向けてこう言葉を発した。
「さぁ、命が惜しいならそこにいるモンスターをこっちに渡してもらおうか♪」
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