ダンジョンへと出発した

 翌日の朝。

 朝食を食べ終えて、宿舎の前に集合していた。


「男共、集まれ」


 2年の先輩の号令で、グループが集合する。


「改めて、リーダーになった2年のユベルだ。よろしくな」


 オレたちのグループはオレ、ナッシュ、エリックともう1人。


「俺、シモーネ。よろしく!」

「ああ、オレはローランドだ。こちらこそ」

 もう1人はシモーネというらしい。

 初めて見る顔だ。

 違うクラスの生徒のようだ。


「女の子グループはこっちね」


 聞き覚えのある声だ。


「女の子グループのリーダーになった2年のサクヤだよぉ、よろしくね」


 女子グループにいるのはリース、フィーネ、ノルム、それにリースの世話係のニコと知らない女子が1人。


「あっ。ご主人!! どうしてそっちにいるの?」

「オレだけそっちなのは変だろう」


 女子グループの中にオレだけ男がいるのは違和感がある。


「えー、ボクが担当してる後輩クンなのに」

 残念そうにするサクヤ。


「お役御免になったんだな」


 ユベル先輩がサクヤに話しかける。


「そんなわけないよ!!」

「お前みたいなチビに務まるのか?」

「ボク強いもん。そっちこそ、ちゃんと後輩クンのお世話できるのかなぁ?」

「いや、男同士でなきゃ教えられないことだってあるだろう? なぁ」


 ユベル先輩に肩を叩かれる。


「もう!! ボクの後輩クンに変なこと教えないでよね!!」


 そう言ってユベル先輩を睨むサクヤ。


「なぁ、サクヤ」

「なぁに、ご主人?」

「その服は?」


 オレたちは制服を着ているが、女子が着ているのは体操服だ。

 だが、サクヤだけはちょっと違う服を着ている


「これはね、ブルマっていうんだよ」

「ブルマ?」

「うん、古いタイプの体操服なんだ」


 上は半そでの体操服とさほど変わらない。 だが、下は下着のような形をしている。


「どぉ? 似合ってる?」

「まぁ、似合ってるんじゃないか?」

「にひひっ、ありがとうご主人」


 満足そうな表情のサクヤ。


「ローランド、わたしの体操服も見てください」


 リースが寄って来る。


「いや、リースのは普通の体操服だろう」


 ジャージのような長袖の体操服を着ている。

 特別、違和感を感じることはない。


「ここです、ここ」


 胸の部分を悪気もなく寄せてくる。

 勘違いされるのでやめて欲しい。


「何?」


 筆記体で刺繍された文字が上を向いている。

 文字が崩れていて、判別しづらい。

 よく見ると……


「オレの名前じゃん!」

「はい、そうです」

「なんでだよ」

「知っていますか。仲がいい人同士でお互いのジャージを交換して着るのが流行りなんですって」

「知らない。てか返して」

「仲の良さをアピールしようと思って」

「しなくていいから」


 周りの人が全員オレたちを見てる。

 これ以上はやめてくれ。


 クスクスと笑うノルム。

 楽しそうだなと他人事のナッシュ。

 それ以外の生徒からの目つきが怖い。


「みなさん、集まりましたね」


 若い男の教員が現れる。


「僕が引率教員のクリューです。これから皆さんにはダンジョンへと入ってもらいます。といってもお行儀のいい生徒さんばかりなので、僕の出番はないと思いますが、万が一のときにはすぐ申し出てください」


 その後も、説明が続いた。




 * * *




「ここだ」


 ようやく目的地にたどり着いたようだ。

「1年生の4人、全員いるな?」

「うっす」


 先輩の呼びかけに反応したのはナッシュ。

「早速だが、これからお前らには俺と一緒にそこのダンジョン入ってもらう」


 ユベル先輩が指した先にあったのは巨大な魔物の頭蓋骨だ。


「でけぇ骨だな」


 ナッシュの言う通り、頭だけで人間の何倍もの大きさがある。

 おそらく何千年も昔に生息していた魔物の物だろう。

 その大きく開いた口が洞窟の入口になっている。


「これがダンジョンの入り口だ」

「俺、洞窟なら入ったことあるぜ」


 ちょっとした洞窟くらいだったら誰でも入ったことがあるだろう。


「その辺の洞窟とは訳が違うが、まあ、説明するより実際に見たほうが早い。とりあえずついてきな」


そうしてオレたちはユベル先輩についていった。


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