合宿地に着いた
翌日。
馬車に乗って、王都より北へ。
1日がかりで目的地へと辿り着く。
そこはシルフ。
温泉で有名な観光地だ。
もう夕方なので明日から本格的に合宿が始まるらしい。
今日は日が落ちるまで自由時間。
オレはシルフのメインストリートを散策していた。
だが観光地にしては様子がおかしい。
観光客や湯治客のような人も見かけるが、武器を持った人たちが多数うろついている。
「いやー、大量大量」
「思ったより高く引き取って貰えたっすね」
冒険者のようだ。
景気のよさそうな話をしている。
「よう兄ちゃん!」
「あんたは、ギルドにいたおっさんか」
「そうさ」
王都の冒険者ギルドに初めていったときに話しかけてきた冒険者だ。
いかにも猛者のような出で立ちだが、実際の強さはそうでもないらしい。
「兄ちゃんもダンジョンに?」
「いや、オレたちは合宿に来たんだ」
「なんだ。違うのか」
「そういうあんたは何しに?」
羽休めに観光しに来たようには見えない。
「ダンジョンだよ」
「ダンジョン?」
「ああ、最近見つかった新しいダンジョンなんだけど、効率がいいんだ。そんなに強くない割に、いい素材が出るんだぜ」
「そうなんすね」
相変わらず大きい依頼には手を出さず、程々の仕事を狙う。
コバンザメみたいな男だな。
「今日は飲むぞー!! んじゃーな」
男はどこかへ行った。
* * *
「遅いわね、もうご飯できてるわよ」
宿舎へ戻ると、一番最初に出迎えてくれたのは銀髪で半獣人の少女、フィーネだった。
「悪い、知らない土地に来たら、散策して色々確かめたくなるんだよ」
相変わらずオレにだけは幻術を外して、犬耳を見せつけてくる。
理由は謎だ。
「というか、お前も合宿のメンバーに選ばれたんだな」
「ええ。どういうわけか知らないけど、あたしも来させられたわ」
「一体お前のどこを見て判断したんだろうな?」
「きっと、転入したときに受けたテストよ。それ以外考えられないわ」
フィーネが受けたのは入学者テストとは別物。
かなり戦闘力を測られたらしい。
「手を抜かなかったのか?」
「抜いたわよ。でも思ったより簡単だったわ」
「そうか」
まあ、フィーネがこの間の事件の黒幕だとバレなければ問題ないだろう。
「戦闘スタイルは変えてるから、気づかれてないと思う」
フランカのときは魔法タイプと認識されていたようだが、フィーネとして転入してからは爪による近接攻撃タイプにしたようだ。
獣化による爪ではなく、手にはめる鉄製の鉤爪を武器として用いている。
「よかったな」
「何が?」
「いや、なんでもない。お腹空いたから食堂に行くか」
なんにせよ、フィーネにとっては学園に馴染むいい機会だと思う。
「あのさ」
「なんだ?」
フィーネに呼び止められる。
「一応あたしが知っていることで、喋れることは全部喋った」
「ああ、全部聞いたと思う」
フィーネをこちらに引き入れるにあたり、聞ける限りの帝国の情報は聞き出した。
といっても有用な情報はそれほど多くはなかった。
「だけど、喋れないこともあるの」
「ああ、口封じされてるんだろう」
闇魔術により、喋れない情報があるらしい。
「お前の言いたいことはわかった。別に、オレは気にしない」
「そう」
別にオレ自身が帝国から付け狙われているわけじゃない。今のところ機密なんか欲してない。
だが、まだ合宿で何をするのか全体像が見えていない。
これからどうなるんだろうか。
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