覚醒

「フォース・オブ・マーベリック!」


 そう叫ぶと、全身に魔力とは違う闘気オーラが湧き出てくる。

 その力でオレを拘束していた器具をぶっ壊す。


「くたばりなさい!!」


 闇属性の魔力を纏った爪で攻撃してくるフランカ。


「喰らえ」


 手を翳し、闘気オーラを放つ。


「何なの!!」


 不思議な力でフランカは飛ばされ、闇の魔力はかき消される。


「くっ、あんたたち、やっちゃいなさい」


 幻術の分身で攻撃を仕掛けてくる。


「無駄だ」


 闘気オーラを纏った剣で幻術を斬る。


「なんで!!」


 幻術でできた分身は紙のように簡単に斬れ、消えていく。


「これならどう!」


 今度は猛獣たちをけしかけてくる。


「幻術はもう通用しない」


 闘気オーラを纏った一振りで、猛獣たちも消し去る。


「この!!」


 フィールド全体がマグマに覆われる。

 だが闘気オーラを放つオレの歩いた軌跡から幻術が解け、元々地面にあった草が現れる。


「もうお前の攻撃は通用しない」

「うわああああぁぁぁー!!」


 やけくそになったフランカが、攻撃を仕掛けてくる。

 しかしオレの剣撃が闇をかき消し、烙印スティグマで発現させたフィールドの外へとフランカを吹き飛ばす。


「もう、終わりにしよう」


 剣に炎を纏わせる

 闘気オーラのせいかいつもより炎が大きい。


 フランカの懐へ入り込み、燃え盛る炎を斬り上げる。


 すぐさま流れ落ちる瀑布の如き振り下ろす一撃を放つ。


 さらに雷の如き光速の剣で払う。


 息をつく間も与えることなく、3属性の斬撃を喰らわせる。

 これでフランカの獣化した爪は折れ、攻撃を無力化する。


「終わりだ」


 剣を上段で構え、闘気オーラを込める。


「四光の剣技」


 最後の一発は正面に闘気オーラを纏った一撃を叩き込む。


 銀髪の狼少女は意識を失い、地へと伏す。


「終わったんだな」


 剣を鞘へとしまう。


 久しぶりだ。命を落とすかもしれないと感じた戦いは。

 オレはいつも自分のために戦っていた。

 自分の命を守るため。

 自分だけが生き残るため。

 だがこの戦いはいつもとは違った。

 友人たちの思いを背負って戦っていた。

 まさか友人たちとの絆がオレのゾーンを顕現させるとは……わからないものだ。


 倒れているフランカに寄る。

 息はある。外傷はあるが、気を失っているだけだ。

 月に照らされた銀色の髪と狼の耳が美しい。このまま殺すのは惜しい。色々な意味で。

「剥製を飾る趣味はオレにはないんだよ」


 しかしああは言ったものの、オレの独断ではフランカは救えない。

 さて、どうしたものか。




 * * *




 攻撃を受ける度、意識が遠のいていく。

 その剣はとてもゆっくりと振られる。違う、あたしがゆっくりと感じているだけだ。

 これが走馬灯ってやつなんだろう。

 あたし……死ぬんだ。

 消えていく意識の中で思い起こされたのはお母さんの姿だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る