王都襲撃
敵襲を知らせる鐘が鳴り響くと、学園の中も一気に慌ただしくなった。
「警報だ。一体何だ?」
「王都周辺に魔物が現れた」
魔物の情報はすぐに学園内にまで伝わった。
「とにかく生徒は講堂に集まれ!!」
王立魔法学園の生徒たちは皆、学内の講堂へと集められた。
「風紀委員長のエドワード・スティンガーです。まだ全員は集まっていませんが状況が状況なので説明させていただきます」
壇上に立った風紀委員長が落ち着いた口調で説明を始める。
「北には魔物の大群。南からは大型の魔物数体が確認されています。既に冒険者や王国の常備軍が投入されていますが、戦力が不足しています」
淡々と説明を続けていく委員長。生徒たちも真剣な眼差しで聞いている。
「3、4年生と2年生の成績上位者はすぐに戦闘の準備を。3、4年の上位成績者は南へ、それ以外の生徒は北へ向かって下さい」
「戦闘に参加しない1、2年生はこのまま講堂で待機を」
「待ってくれ、俺も戦うぜ」
「君はナッシュガルド君か。悪いが1年生を戦場に送ることはできない」
「何でだよ!! 俺たちの街が襲われているんだ! 黙って見ているだけなんて御免だぜ」「気持ちは分かるが、できない相談だ。命令を聞かない
「くっ……わかった」
右拳を強く握り締め、感情を抑えるナッシュ。
「君たちには学園を頼みたい。とても重要な任務だ。ここには先人たちが紡いでくれた重要な書物や設備がたくさんある。それを火事場泥棒なんかされては困る」
下級生達を見つめ、エドワードはさらに続ける。
「それにもしも城壁が突破されたら、君たちには魔物の迎撃と市民の安全確保に動いてもらうことになる。だから気を抜かないで欲しい」
下級生達もエドワードの期待に応えるように強く頷く。
「それでは各自配置につけ」
上級生達は一斉に講堂の外へと動き出した。
壇上の上ではエドワードが他の上級生と話し合っていた。
「まだここにいないのはよりによってあの2人か」
「どうしましょう」
「仕方ない、サクヤをリース姫の護衛に残す」
首をかしげながら考えるエドワード。
「オネスタ、2年のオネスタはいますか?」
「はい」
オネスタがエドワードの元へ寄ってくる。
「君も前線へは行かなくていい。君の能力は後衛向きだ」
「わかりました。委員長」
「君にこの場の指揮を任せる。それと、サクヤが来たら伝えてくれ。リース姫の護衛に回れと」
「はい」
2年の寮監であるオネスタにサクヤへの伝言を託し、エドワードも戦場へと向かった。
「ごめんなさい、遅れました」
「もうみんな行っちゃった?」
上級生と入れ替わるように、リースとサクヤが講堂へ辿り着く。
「サクヤちゃん。リースちゃんの護衛を担当するようにって委員長が」
「オッケー。任せて」
オネスタがサクヤに指示を伝える。
「とりあえず2人ともクラスメイトのところへ」
オネスタは2人と話し終わると壇上へ上がる。
「残った1、2年生の皆さん。クラスごとに集まって、全員いるか改めて確認してください」
オネスタが残った生徒へ指示を送る。
「リース姫、こちらです」
エリックがリースを迎える。
「みなさん、クラスでの隣の座席の人とペアで座ってください」
全員いるかわかりやすくするために、ペア同志で確認させる。
「リース姫、俺のペアは元々教室に来ていないのですが」
「エリック、あなたのペアは……」
周りを確認するリース。
「フランカ、こちらへ」
1人で気まずそうに突っ立っていたフランカを呼び寄せる。
「エリックとフランカが隣同士のペアです。顔を覚えてください」
その他そ生徒たちもすぐにペアを見つける。
「俺はいるぞ、ニコ」
「あなたがいることはわかっております。ナッシュガルド君」
「ははっ、かてー奴だな。ナッシュでいいって」
その他の生徒も隣の席同士を探し終え、確認が終わる。
「これでわたしたちのクラスは全員いますね。では報告してきます」
「待てよ、ローランドは?」
「ご自分のペアを失念なさるとは、姫様らしくないですね」
「いえ、彼はもう……」
リースは言葉を詰まらせる。
「彼はもうこの学園の生徒ではありません
「は? 意味わかんねー。どういうことだ?」
理解が追いついていないのはナッシュだけではなかった。
「ローランドは自分で退学届を提出してこの学園を去りました」
「なんだって!?」
いくら0点の生徒とは言え、突然の出来事にクラスメイト達は困惑する。
「ねえ、あいつは今どこにいるの?」
珍しくフランカが口を開く。
「さあ、わかりません。もう学園内にいないのは確かかと」
「……そう」
とだけ言い口を噤むフランカ。
リースはオネスタに報告へ向かう。
残ったクラスメイト達は雑談をしていた。
「よくわかんねー奴だったな、ローランドって」
「入学者テストでは0点、クラスでは目立たない。家柄も優れているわけではない。それなのに、リース姫やサクヤ先輩、ナッシュ……この学園の実力者には何故か認められている。一体何なんだ?」
一般の生徒にとって、ローランド・アクギットは不可解な人物であった。
そしてその評価が覆ることもなかった。
「エリックさん、あんたはどう思う?」
1人の生徒がエリックに質問する。
「平民にしては、少しばかり勉強はできるようだが、それだけでは王立魔法学園の生徒に相応しいとは言えない。結局実力が足りなかった。だから退学になったんだ」
「そうっすね」
「流石エリックさん。説得力がありますよ」
エリックの取り巻き達が本当に慕っているのか、ただ家柄に媚びているだけなのか、彼らの本心を探ることはできない。
「そうだな、これでリース姫を――」
突如、講堂の床に巨大な魔法陣が張り巡らされる。
「動けない」
「力が抜ける。なんだこれは!?」
講堂内の生徒たちは突如として無力化された。
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