友達ができた
サッカー部の試合を観に来た。
学園内のサッカーコートで他校のチームを迎えてのゲームだ。
所詮、魔法学園の部活なので観客はまばらだが、一定のファンがいるようだ。
サッカーは詳しくないが、ノルムから借りた地元クラブのエンブレムが入ったマフラーを巻いて、ミーハー感を演出することにより、この場に溶け込んでいるつもりだ。
お目当てのナッシュガルドは1年生ながらレギュラーの座を掴んでおり、フォワードとして先発している。
「フレー、フレー」
チアガールが応援している。
しかし人気の部活の選手たちはずるい。
こうしてかわいいチアガールに応援してもらえるのだから。
「頑張れ頑張れローランド」
オレと同じ名前の選手でもいるのだろうか。
「押せ押せローランド」
11人もいるのだから、他の奴も応援してやれと思うのだが。
しかし、聞き覚えのある声だ。
「友達作るぞローランド」
ん?
チアガールをよく見てみる。
「ってお前ら! 何やってるんだ!!」
チアガールとして応援していたのはリース、サクヤ、そしてノルムだ。
「決まってるじゃないですか。ローランドがちゃんとお友達を作れるように応援してるんですよ」
「そうだよ、ちゃんとボクたちが見守ってるから、頑張るんだよぉ」
「オレじゃなくて選手を応援しろよ!!」
傍迷惑な奴らだ。
「ノルム、お前まで何してんだ?」
「2人に誘われたから、つい」
「ついじゃねーんだよ!」
できるだけ近づかないようにしようという約束は忘れたのだろうか。
そうやってふざけている間にゴールが決まる。
ナッシュガルドが決めたようだ。
その後もハーフタイムを挟んで90分試合が行われ、3対0での勝利となった。
3得点ともナッシュガルドのゴール。
見事なハットトリックだ。
しかし流石は勝利の立役者。
チームメイトや熱心なファンに囲まれ、なかなか近づく隙がない。
ちょっと行きづらい。
しばらく様子を眺める。
そうしていると、向こうからナッシュガルドが近づいてくる。
「よう、見ててくれたんだな」
「……まあな」
「サンキューな! お、それはゲートポートのマフラーじゃん! 応援してるの?」
「まあ、一応」
「へぇ、もしかしてゲートポート出身か?」「そうだ」
「じゃあ家族と離れ離れか。寂しくねぇの?」
「1人には慣れてる」
「そっか。でも長期休みには会いに行ってやれよ」
とりあえずマフラーのおかげで話題を作れた。ノルム様様だ。
「オレが誰かわかるか?」
「そりゃクラスメイトだからな。お前のことは知ってるぜ、ローランド」
まさか普通にオレのことを知られていたとは思わなかった。
「そういうや挨拶がまだだったな。俺、ナッシュガルド。ナッシュって呼んでくれ」
「改めて、ローランドだ。よろしく」
ナッシュと握手を交わす。
「いつかお前とは話してみたいと思ってたんだ」
「何故だ?」
「そりゃ、いきなり0点取るとかすげぇなと思ってさ」
「ハハハ」
笑って誤魔化すしかない。
「俺は素直に褒めてるんだぜ」
そうか。
さっきの試合を見て感じた。
こいつは単純にスポーツが上手いだけの人間ではないと。
この学園が選ぶだけの何かがあると。
「なあ、ナッシュ」
「なんだ?」
「ゾーンって知ってる?」
聞いてみた。
ナッシュは知っている気がしたからだ。
「ああ、使えるぜ」
やっぱり、こいつは只者ではない。
「ナッシュ! ミーティングするぞ!」
サッカー部の先輩がナッシュを呼ぶ。
「わりぃ、先輩が呼んでるから行くわ」
「ああ、こっちも時間を取らせてすまない」「んじゃ、またな」
今日は聞き出せなかった。
だがいずれまた、話すことになるだろう。
「うぅ……やりましたね、ローランド。私、嬉しいです」
何故か涙ぐむリース。
「ようやくお友達ができて、ボクも嬉しいよ」
「一歩成長したね、ローランド」
いや、大袈裟過ぎるだろう。お前ら。
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