襲撃現場を調べた

 謎の敵を撃退後、オレは即座にリースとサクヤを抱えて学園へと戻った。


 2人を医務室へと預け、先生に報告。リースのことはメイドのニコ、サクヤのことは寮監のオネスタ先輩に任せた。混乱を避けるため、知らせたのは必要最低限の人間に留めた。


 その後シビレキノコを納品した。受付嬢はオレが1人であることを不思議がっていたが、適当に誤魔化した。


 翌日。

 オレはノルムを連れて再び西方の森へとやって来た。


「朝早くから付き合わせてすまないな」

「そんな、構わないよ。君の役に立てるなら」

「恩に着る」

「ところで、あの2人の様子は?」

「あの後すぐ意識を取り戻したみたいだ。命に別状はないらしい」

「よかった」


 目立った外傷もなく、すぐにでも復帰できるくらいには回復しているみたいだ。

 だがそこが引っ掛かる部分でもある。


「この辺りだ」


 西方の森の深く、オレたちが襲われた現場付近へと辿り着く。


「ちょっと待っててくれ」


 隠しておいた死体を引きずり出す。


「言っておくが、オレが殺したわけじゃないからな」


 リースが襲撃されたとなれば王国政府が黙ってない。

 憲兵辺りが調べに来る前に確かめておきたかった。


「あのとき起きたことを改めて説明してくれないか?」

「まずリースがこの死体を発見して、駆け寄ったんだ。リースを追いかけようとしたとき、狼たちが現れて、オレとサクヤはリースと分断されしまったんだ」

「つまり、この冒険者たちの死体は君たちをおびき寄せた罠ってこと?」

「うーん、断定はできないな」


 無関係の冒険者がたまたま襲われ利用されたのか、元々グルだったが仲間割れを起こしたのか。

 あらゆる可能性が考えられるが、今のところどれも否定できない。


「とにかく詳しく見てみよう」

「そうだね」


 2人の死体には無数の引っ掻き傷があった。

 あの狼たちにやられたのだろうか。


「君を襲った敵は召喚術を使ったんだろう?」

「多分な」


 西方の森に狼のような魔物は生息していないようだ。

 狼たちは全て、奴のコントロール下にあったと見ていいだろう。


「じゃあ、君を襲った敵が狼を操ってこの人たちを?」

「そう……かな?」


 だが何か引っかかるというかしっくりこないというか、妙な違和感がある。


「今日はこれくらいにしておこう」


 ここでいくら考えても答えは出ない、そんな気がする。


「そうだ、ノルム」

「何だい?」

「お前さ、絵描くの上手かったよな?」

「まあ人並みには」

「こいつらの似顔絵描けるか?」

「うん、任せて」

「頼んだ」


 とりあえず今は奴の出方を伺う他ないだろう。


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