魔物と戦った
西方の森は王都周辺で最も狂暴な魔物が生息しているエリアだ。
一度森へ入ると、先ほどまでとは様子が一変する。
昼間にも関わらず薄暗く視界は悪い。魔物の気配も感じる。
襲ってはこないが、こちらを警戒しているようだ。
「依頼はなんなんだ?」
「シビレキノコっていう素材を10個集めるんだよ」
「どのようなものですか?」
「あ! ちょうどあそこにあった」
サクヤは木の幹に生えていた毒々しい色のきのこを取る。
「これがシビレキノコ。王都周辺だとここにしか生えてないみたい」
紫色をした傘の部分に稲妻のような模様が入っている。
「似ているきのこがあるから間違いないようにね」
辺りを見回し、探してみる。
「これか?」
それらしきものを発見する。
「これでいいのか?」
見つけた物を抱えてサクヤに見せる。
しかしさっき見たものより随分と大きい。
「それはシビレキノコモドキ」
「モドキ?」
よく見ると軸の部分に顔がある。
そして滅茶苦茶怒っている。
「痛っ!」
でかいキノコから頭突きを喰らう。
「シビレキノコモドキはキノコの姿をした魔物だよ。毒はないから大丈夫」
「そういうのがいることは先に言ってくれ」
「だから似ているキノコがあるって言ったじゃん」
「似ている魔物がいるとは言ってないだろう」
「そうだった、ごめんごめん」
3人が離れないように森の中を歩きながら、キノコを探す。
「ありました」
「オレも。今度こそ本物のはずだ」
意外とあっさり見つかるものだ。
そうして森を歩き回って、無事10個集めることができた。
「ふぅ、お疲れ」
「そんなに難しくなかったな」
何度か魔物に襲われたが、リースとサクヤのおかげで苦戦することはなかった。
「それじゃあ戻るとしますかぁ」
こんな気味の悪い場所に長居は無用だ。
森の出口へと歩き出した。
そうしてしばらく歩いていると、倒れている2人組を発見した。
「すぐに手当てを」
リースは一目散に負傷者の元へ駆けていく。
「待て」
「危ないよリースちゃん」
周囲を気を払いながらサクヤとリースの後を追おうとするが。
「グルルルル」
「ワオーン」
暗闇から狼の群れが現れ、襲ってきた。
武器を手に取り応戦する。
気づけばサクヤと共に狼の大群に取り囲まれ、リースと離れてしまった。
「リースは?」
「わからない」
「おかしいな、西方の森の生息リストには狼型の魔物なんかいなかったのに」
1体1体はそれほど強くないので、対処には苦慮しない。それよりもリースとはぐれてしまったことのほうが気掛かりだ。
偶然なのか、それとも……
「まとめて片付けちゃおう。ボクがやっちゃうからキミはそばにいて」
「わかった」
ここはサクヤに任せよう。
「桜吹雪の術」
桜の花びらが竜巻となって狼たちを襲う。
「にひひっ! 一丁あがり」
狼たちは花吹雪の竜巻に巻き込まれ、飛ばされていった。
「流石先輩」
「でしょ。もっと褒めていいよぉって言いたいところだけど、早くリースちゃんと合流しよう」
「そうだな」
「でも、どこにいるんだろう?」
暗いはずの森に光が差した。
リースの魔法に違いない。
「あっちだ、行くぞ」
「うん」
サクヤと共に光の差した方向へと走る。
リースが自分で作った魔法陣の中で倒れていた。
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