濡れ衣を着せられた
今日は休日だ。ようやくゆっくり過ごせる。
オレは寮の自分の部屋でダラダラしていた。
コンコンと誰かがノックをした。
扉の前まで歩き、ドアノブを握る。
「はい」
「やあ、ローランド」
その中性的な顔立ちはよく知っている。
「なんだお前か、ノルム。よくオレの部屋がわかったな」
ノルムは簡単に言えばオレと同じ中等学校出身の友人だ。
「同郷のよしみだというのに、私に会いに来てくれないなんてひどいな」
「お前が会うなって言ったんだろう」
「会うななんて言ってないよ。ただ、新しい交友関係を作るために頻繁に会うのは控えようって言ったんだよ」
確かに、会うなとは言ってなかったな。
「どう? 制服似合ってる?」
「まあな」
「かわいい?」
「……一応」
「それはよかった。ローランドにそう言って貰えると嬉しいよ」
ノルムは普通の友人のように接していた。 女子として見たことがなかったので、なんだか不思議な感じだ。
「でも、私のことを異性として見ちゃだめだよ。私には恋愛感情というものがないから、君にその気があったとしても答えてあげられないよ」
「わかっている。そのつもりだ」
「私は君の相棒。君の背中を預けられる存在だよ。だからいつでも私を頼って欲しい」
そう言って貰えるのは嬉しいが、少し恥ずかしい。
「ああわかった。要件はそれだけか?」
「もう、君は相変わらずだね」
「数週間で変わったつもりはないがな」
「君は面倒くさがってるくらいが丁度いい。君が本気を出さないといけない状況なんて起こらないほうがいいんだ」
「安心しろ、オレが本気を出さなきゃならない時なんてそうそう来ないから」
「じゃあね」
そう言ってノルムは扉を閉めた。
またダラダラしようとベットに横になる。
そうしてしばらく過ごしていると、再びコンコンと扉をノックする音がした。
「何?」
わざと不機嫌そうな声を発した。
「やっほー」
サクヤがオレの部屋に訪ねてきた。
「何しに来た?」
「冒険者ギルドに行こうよぉ」
「断る」
そう言って扉を閉めようとするが。
「ローランド、女の子を連れ込みましたね?」
リースに微笑みながら尋ねられる。
しかしその目は笑っていない。
「は? 何言ってるんだ?」
そんなことした覚えは……いや、まさかノルムのことか?
「何故わかった?」
「勘です」
なんじゃそりゃ!?
「このわたしを差し置いて女の子を部屋に誘うなんて、ひどいです」
「待て、誤解だ。あいつはそういうんじゃない」
「あーでた。女の子に手を出したときの言い訳ナンバー1。この前までかわいい後輩クンだったのに、いつからキミはチャラ男になったの?」
サクヤが軽蔑の目でオレを睨む。
「本当に誤解だ、あいつは同じ中等学校出身の奴で……」
「と、申してますが、どうですかリースちゃん?」
「そうですね、ローランドは嘘をついてないみたいです」
「にひひっ、そうだよねぇ。ボクたち2人すら手出しできないキミが、いきなり知らない女の子にそんなことできないよねぇ」
なんかムカつく。
「お前こそ、チャラ男のセリフだとかなんとか言ってたけど、連れ込まれたことあるからそういうことが言えるんじゃないのか? サクヤ?」
「失礼な! ボクがかわいい後輩クンを連れ込むことはあっても、チャラ男に連れ込まれるような真似はするわけないじゃない」
いや、堂々と後輩を連れ込む宣言するなよ。
「じゃあなんでそんなこと知ってるんだ?」「小説とかで出てくる常套句でしょ」
「まあ、言われてみれば」
とにかく、丸く収まってよかった。
「でも、わたしが知らない女の子と密会していた事実を許すとは一言も言ってませんよ?」
「え? なんでだよ」
「そうだ、ボクたちと一緒に冒険者ギルドまで来てくれたら許してあげるっていうのは?」
「いいですね、そうしましょう」
「わかった、行けばいいんだろう?」
こうして冒険者ギルドに行かされる羽目になった。
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