剣術の実力がバレてしまった
翌日、今度はサクヤと剣術の特訓を行うことになった。
だが、何故か周りが騒がしい。
「ローランド君、頑張って!」
「サクヤちゃんに負けるなー」
寮で少し喋った2年の先輩たちがオレを揶揄いに来たらしい。
だがそれだけではない。
「あいつか、雑魚の癖にサクヤとリース様に手を出したって奴は」
「なんなんすかね、入学早々うちの2トップをかっさらいやがって」
制服を着てコスプレしてるおっさんにしか見えないような先輩が取り巻きを引き連れてこちらを睨みつけていた。
他にもリースやサクヤと仲良くしていることを気に食わない連中が多数いる。
「なんでこんなにギャラリーがいるんだ?」
こいつら授業サボってるんじゃないだろうな。
「空きコマだからじゃない?」
「そんな都合よく空きコマがあるものなのか?」
「2年以降は結構自由に授業が組めるからね」
1年生の生徒の姿もあるが。
「頑張ってください、ローランド。これもゾーンの習得するために重要なことですから」
リースから声援を送られる。
ゾーンなるものの習得できるビジョンは描けていないが、リースには何か考えがあるのだろう。
しかし、本来リース以外の1年はここにいてはいけないはずだが、何故あいつが……
「私、オネスタが審判を務めます」
2年女子寮の寮監である彼女が審判をやってくれるみたいだ。
「サクヤちゃん、わかってると思うけど、私がストップをかけたら攻撃をやめてね」
「うん、わかってる。ボク、かわいい後輩クンを壊しちゃうような真似はしないよぉ」
「ローランド君、治癒魔法が使える先輩がスタンバイしてるから、安心して戦ってね」
「はい、ありがとうございます」
なるほど、オレがサクヤにボコボコにされると思って色々と用意してくれていたようだ。
気持ちだけは受け取っておこう。
「それじゃあ、試合開始」
戦いの火蓋が切って落とされた。
「さあおいで、ボクが受け止めてあげる」
「いや、先攻は譲ってやる」
「さてはキミ草食系だなぁ? じゃあ遠慮なくいかせてもらうよぉ」
剣をしっかりと構え、サクヤが振り下してきた剣を受ける。
「なっ!!」
その一太刀で、彼女が強者であると確信した。それも、そこらの剣術の上手い奴レベルではなんかではない。
間違いなく殺しの剣だ。
「それそれ」
適切なタイミングと位置で攻撃を防がなければ、あっという間にこちらの剣は弾かれてしまうだろう。
「ほらほら、そんなんじゃ負けちゃうぞぉ」
何度も繰り出される剣撃を後退しながら凌ぎつつ、隙を伺う。
「今だ」
若干だが甘くなった攻撃をオレは見逃さなかった。
「喰らえ」
全身の力を込めて、サクヤの剣を押し返した。
「やるねぇ」
渾身の一振りは防がれるも、そこからサクヤを押し返していく。
「先攻を譲っただけで草食系と評するのは浅はかじゃないか?」
「そうだね、さっきのは撤回するよぉ。安易に飛び込んで来ないのは強者の証だねぇ」
サクヤとの鍔迫り合いが続く。
「何人殺った?」
「えっ?」
「経験人数は何人だって聞いてんだよ!!」
「もう、そういうことをいきなりレディに聞いちゃダメじゃないかぁ」
鍔迫り合いを制す手立てが思いつかない。 さて、どうしたものか。
「そこまで」
そんなところで審判に終了を告げられる。
「すげぇ」
「どうなってるんだ?」
「あいつ本当に最下位なのか?」
「まさかサクヤちゃんと互角なんて!!」
探り合いしかしていないはずだが、なんなんだこれは?
「オレは別に何もしてないんだが、何なんだこの反応?」
「サクヤちゃんは去年の剣術大会のチャンピオンなんだ。しかも、戦った相手は全員瞬殺」
「1分もサクヤちゃんの攻撃を耐えられるなんて凄いよ」
「つまり、どういうこと?」
「キミは剣術において、少なくとも2番目に強いってことだよぉ」
この学園ではなく、王国全体の魔法学校生の中でということか。
「マジっすか?」
「マジっすよ」
結構な人数の生徒に見られてしまった。だが、こいつらが先生にチクらなければ問題ない。まだ平穏な学園生活を送れるはずだ。
「にひひっ、1分耐えれたってことは、もっと耐えられるよねぇ」
「いや、無理です。もう耐えられません」
「いやぁ、このところやわな相手しかいなかったから腕がなまって大変なんだよぉ」
「本当に勘弁してください」
「激しくしても壊れないかわいい後輩クンなんて最高じゃない。じゃあ続き、始めよっか」
こうしてサクヤの猛攻を1時間程受け続ける羽目になった。
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