光属性の魔法を教えてもらうハメになった
「おはようございます」
目覚めると、目の前にリースの顔が。
おかしい。
「どうしました? そんなに見つめられると恥ずかしいのですが……」
「すまない」
寝起きですっぴんのはずなのに反則級にかわいい。
人外の血でも入ってるのか?
まあそんな事はいい。
周囲を見回して、サクヤを探す。
しかし姿はない。
「先輩は?」
「アルバイトのために早く出て行きました」
「アルバイト?」
こんな朝早くからアルバイトなんて働き者が過ぎる。
「朝食を用意してくれたので、食べてください」
「忙しいのになんか悪いな」
机に置かれていたのはおにぎりだ。
「食べ終わったら支度をして、登校しましょう」
「そうだな」
* * *
「よし。そんじゃあ最初の授業を始めるぞ」
教壇に立っているのは担任のカイル先生だ。
「1時間目は魔術理論だ。今日は初回だからゆっくり基礎の基礎から復習していくとするか」
不満の声が何人かから聞こえる。生徒たちは基礎なんかどうでもいいから、高度な魔術を教えて欲しいと思っているようだ。
「んじゃローランド、初日から目立ってるお前に聞こう」
「オレですか」
早くも先生にまで目をつけられてしまった。
「魔法には7つの基本属性がある。それを全部答えてくれ」
「無属性を省くなら、火、水、雷、土、草、光、あと……闇の7つ。ですよね?」
「正解だ。意外とできるじゃないか」
子供でも知っているような知識で褒められるのは逆に恥ずかしい。
「これ以外にも属性は存在するが、それらは全てこの7つの属性のどれかから派生したものだ」
例えば、毒属性は草属性から派生したものとであり、草属性と似た性質を持っているとされている。
「使える属性は人によって異なり、得意な属性は生まれつき決まっている。大体の人間は1つ得意な属性を持っている」
「では複数の属性が使える人がいるのはなぜですか?」
1人の生徒が質問をする。
「ほとんどの奴は生まれつき得意じゃねえ属性でも微弱ながら力を持ってる。魔法が使える人間で全く力が使えねえのはむしろ稀だ。だから、特訓すれば得意でない属性も一応扱うことができる」
最も、無理矢理鍛えた不得意な属性は、特に努力していない得意な属性に劣る場合がほとんどではあるが。
「まあ、まれに複数の属性を得意な奴もいるけどな。そういう奴は才能だ」
仮に7属性全部使える人がいるなら見てみたいものだ。
* * *
午前中の授業が終わり、昼休みになった。午後の最初の授業はリースと魔法の特訓のはずなのだが。
「なあ、リース」
「はい、何でしょう?」
「これも特訓の一部なのか?」
「一応、そのつもりです」
芝生の広場に用意された傘つきのテーブルで、リースと2人で食事を待っていた。
「お食事とお茶をお持ちいたしました」
メイド姿の少女がティースタンドに乗った食事とポッドを持ってきた。
「ありがとうございます。ニコ」
「初めまして、リース様専属メイドのニコ・オクスラインと申します。以後お見知り置きを」
「オレはローランドだ。」
「存じ上げております」
「ニコもわたしたちと同じクラスメイトですよ」
そう言われてみると、見覚えのある顔だ。
「ニコ、あなたも一緒にいかがですか」
「
「リースの世話に、さらに授業と、色々大変だな」
「リース様にお仕えすることは私の喜び、大変だと思ったことはありません」
「そうなのか」
オレには理解できない忠誠心の高さだ。
食事に手を付けながらリースと雑談をする。
「まず最初に聞いてもいいか?」
「はい、なんでも聞いてください」
「そもそも、ゾーンとは何なんだ?」
「一時的に魔力や身体能力を向上させる特殊な魔術です」
「エリックと戦ったときのあれもゾーンなのか?」
初日にエリックと戦ったとき、ゾーンの掛け声と共に炎の色が変化していた。
「はい、あれがゾーンです」
「どうやったらオレでも使えるようになるんだ?」
「ゾーンの獲得は、光属性の魔法の習熟度と関係があることが知られています」
「ふむふむ」
「なので、ローランドにはひとまず光属性の魔法を習得してもらいます」
だが1つ問題がある。
オレには光属性の魔法がほとんど使えないという点だ。
「どうやってオレに光魔法を教える気だ?」
「そこは問題ありません。光属性は他の属性とは違って、使用するのに適正を必要としません。光属性の適正を持っていないローランドでも、適正を持ったわたしより上手くなれる可能性だってありますよ」
「いや、それは流石に無理だろう」
リースを超えるのは不可能だと思う。
「もう1つ特徴があって、光属性の魔法は正の感情、楽しいとか嬉しいとか、そういった感情によって増幅します」
「へぇ」
実際に聞かされたのは初めてだ。
ただ何となく予想はしていた。
「なのでこれも立派な特訓なんですよ」
「そう……なのか?」
なんかいまいちピンと来ない。
「ローランドと過ごして感じたんですけど」「なんだ?」
「ロジックよりも、意外と体で覚える派な気がするんですよね」
「うーん、確かにそうかもな」
どれだけ魔法理論を頭に叩き込んでも、実践で使うには慣れが重要だと思っている。
「そんなローランドにとっておきの方法があります」
意味深な笑みを浮かべるリース。
「ちょっと待っていてくださいね」
昼食を食べ終えたリースは、杖を翳し、芝生の上に魔法陣を作り出し始めた。
「はい、できました。準備ができたらその魔法陣の中に立ってください」
「すぐ行く」
カップに残っていたお茶を飲み干し、魔法陣に入る。
「で、どうすればいいの?」
「フフッ、そこに立っているだけでいいですよ」
「本当にそれでいいのか?」
「はい、わたしの魔法、受けてくださいね。ルクス・エクソシズム!」
地表の魔法陣から光線が――
「ぎゃあああああああ!!」
その場に倒れ込む。
もの凄く痛い。
だが物理的なダメージはない
例えるなら、全身のツボをナイフで刺されて、そこから電気を流すマッサージのようなものだろうか。
おそらく体に害はないのだろうが、いかんせん痛みで全く動くことはできない。
「意識を保っていられるだけでも十分凄いですよ」
「そうなの?」
「お城の兵士さんたちにたまにこれをやるんですけど、大体失神しますね」
なんかリースの笑顔が怖い。
「光属性、感じていただけましたか?」
「まあな」
これで使えるようになるのかは微妙だが。
「もう一回やってもいいですよ」
「いや、それはちょっと」
「いいじゃないですか、ここで気絶すれば、午後の授業は休めますよ。それに、休んだ分の授業範囲を教えるという名目でまたお泊りできるじゃないですか」
「リースさん、もう大丈夫です。ちゃんと授業行きます。あと一緒にお風呂に入ってあげるので許して――」
「ルクス・エクソシズム!」
「ぎゃあああああああ!!」
その後のことはよく覚えていない。
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