女子寮に連れていかれた
自分の寮の部屋の鍵を貰い忘れてしまったので、2年の女子寮へと立ち入ることになったのだが……
「ほらほら、とりあえず入って」
率直に言って、男子禁制と書かれている場所に堂々と立ち入ることはめちゃくちゃ抵抗がある。
だが仕方ない。ここはサクヤ先輩に任せよう。
「おかえりなさい、サクヤちゃん」
「ただいまー」
寮監の女子生徒が玄関へ出迎えに来た。
「遅かったね」
「うん……ちょっと色々あってね」
「そうなんだ」
「そうだよ」
「いやぁ、結構大変でね……」
何でもない話で乗り切ろうとするサクヤ。その調子だ。
「それでサクヤちゃん、この子は?」
「えっと……後輩のローランド君だよ」
「へぇ、そうなんだ」
「うん」
「この子、男の子だよねー?」
「男の子だよぉ」
笑みを浮かべながら見つめ合う2人。
「駄目じゃない、入学早々後輩を
ぐわんぐわんとサクヤの肩を揺さぶる。
「てか返してこいってなんだよ。オレは捨てられた子犬か?」
もっと普通に男子を立ち入らせたことに怒られると思ったのだが。
「実は、かくかくしかじかで……」
サクヤが事情を説明する。
「お願いだよぉ、一晩だけでいいからさぁ」
「もう、しょうがないなぁ。先輩として、困っている後輩君を放っておけないものね」
「わぁ、ありがとう」
「ただ、みんなに説明しないといけないよね」
「そうだね」
「ちょうど夕食の時間が始まるところだから。そこでみんなに説明しましょう」
こうして寮生が食事をしている大広間へと連れられて、全員の前で事情を説明することとなった。
「……ということなので、私たちでローランド君を預かることにしました。みんな仲良くしてあげてくださいね」
「はーい」
「よろしくね」
とりあえず、中に入ることを認めて貰えたようだ。
「もしどうしても女の子を襲いたくなった場合は、ボクかリースちゃんにしてね」
「襲わねーから安心しろ」
そんな事をするつもりは毛頭ない。
「リース姫とサクヤちゃんがついているなら」
「私たちが狙われることはないよねぇ」
「なんでオレが2人を襲う前提なんですか!!」
何なんだこの扱いは。まあ、野宿にならなかっただけマシとしよう。
「そうだ。みんながご飯食べてる間にお風呂入ってきちゃって」
寮監の女子生徒にそう促される。
「そうだね。ボクが連れてってあげる」
サクヤに連れられて、大浴場へと向かう。
「ちょっと待っててね」
サクヤが中に入る。
しばらくして出てくる。
「中は誰もいなかったから大丈夫。ボクはここで誰も入ってこないように見張ってるから、ゆっくり湯船に浸かってきていいよぉ」
「色々とやってもらって悪いな」
「いいよ、先輩なんだから」
「助かる」
「にひひっ、いってらっしゃーい」
何から何までやってもらって逆に不安だが、まあいい。
大浴場の脱衣所へと足を踏み入れる。
「なあ、リース」
「何でしょう?」
「どうしてついてくるんだ?」
「決まってるじゃないですか。ローランドと一緒にお風呂に入るためです」
「そうか、オレと一緒に風呂に入るのか」
「はい。お背中流しますよ」
それはありがた……い?
「いやいやいやいや待て待て待て待て!! おかしいだろう!!」
「何がです?」
そう言って制服を脱ごうとするリース。
「ストーップ!! 今すぐ服を脱ぐのをやめろぉぉぉぉー!!」
リースの腕を掴み、それ以上の行動を阻止する。
「あ。もしかして恥ずかしがってます?」
「いやいや!! 恥ずかしくないほうがおかしいだろう!!」
「別にローランドがわたしのことをエッチな目で見ても気にしませんよ。そういうお年頃なのはわかってますから」
「気にして下さい。お願いします」
「覚えてないんですか? 小さい頃、一緒にお風呂に入ったこと?」
「全くもって記憶にございません」
本当に記憶にない。
「あなたとわたしはもう裸の関係なんですよ。何をいまさら恥じる必要があるんですか?」
「いやいやいや! 小さい頃のそういうのはノーカンだろう!!」
誤解を招く表現はやめて頂きたい。
「とにかく、出て行ってくれ」
出口の方向へリースを押す。
「あっ」
そのままリースを押し倒してしまった。
「ごめん、怪我はないか?」
柔らかいリースの体がクッションとなり、オレにダメージはなかったが……
「もう、駄目ですよ。そういうのはちゃんとお付き合いをして、2人の仲が深まってからでないと」
「なんでだよ!! てか何もしてねーよ!!」
リースの基準がバグってやがる。
なんで裸を見られるのはよくて触られるのは駄目なんだ。
だが、怪我はなさそうでよかった。
「なんかすごい音がしたけど大丈夫ぅ?」
サクヤの声がした。
どうやら様子を見に来たようだ。
「って何してるの!! イエローカード。次やったらお仕置きだからね」
「誤解だ! オレは何もしてないって!!」
むしろリースにレッドカードを出してこの場から退場させてくれ。
「もう、しょうがないですね。今日のところは見逃してあげます」
「何を!?」
2人が脱衣所から出ていったのを確認してから浴場へと向かった。
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