01 ︎︎群雄割拠
『私立
色々悩んだ結果、ここにした。
学校指定制服はお洒落で男女共に人気を有しており、公序良俗さえ守っていれば私服登校も可能であり髪色やピアスも自由とのこと。
進学校と言われれば納得するような偏差値に加え、高大一貫教育校であるためエスカレータ式に進学する事が出来る。
更には部活動にも力を入れているんだから抜け目がない......ように見えるが文化部が全体的に弱い、稀の稀にコンクールで結果を出すくらいだ。
学校行事は金を贅沢に使用する、文化祭や修学旅行が目的で進学した人間も少なくはないだろうと思えるくらいには豪華絢爛。
おまけに大きな学生寮も運営されているので、大学進学を見越した他県から来る受験生もこぞって進学希望に名前を書く。
つまり、この学校は世間からの人気が高い。
それすなわち、受験倍率も高いということ。
だが今年はそれに加えて、一つ面倒な噂が近隣の中学校に蔓延したせいで入試倍率が格段にハネ上がった状態で試験を受けることになった。
「......うるさいんだよなぁ」
机に突っ伏している状態から起き上がり入学と同時に購入したスマートフォンで時間を確認する、その後今だ興奮収まらない1-A教室を見渡した。
そこらにいる有象無象とは次元が違うような美貌を持った少女達、それも三人。
蜜柑のような明るいオレンジ色の髪をハーフアップにした元気な美人。
身長は平均くらいだが胸や尻の発育が同世代と比べずば抜けている。
丸みを帯びた眉に珍しい緋色の瞳を持っており可愛い:美人=8:2と言った所、若干別の人種の血が混じっているような気がしなくもない。
蔓延るオタクや陽キャの趣味やら何やらどうでもいい話でも、興味あり気に聞いてあげる聞き上手の神、枯れきった男の渇望を満たすオアシスのようにも思える。
マッシーナ=クノ=ユイタン
ファンネル連邦国から移住?してきたらしい俺と同郷の民でありファンネル人。
身長も高い抜群にスタイルも良い、モデルでもやっているのだろうか?
美しい銀髪は腰まで伸び、先端の辺りを髪留めで止めている。
澄んだ蒼い瞳と雪の様に白い肌、美に振り切ったような端正な顔立ち。
寄ってくる男を跳ね返す吹雪のような態度、正に孤高と言った所。
偶に彼女から視線を感じることだけ、よく分かっていない。
胡桃色の髪をミディアムボブに整えた天使のような笑顔が特徴的な美少女。キリッとした印象を与える並行眉に優美な鼻筋。桜色の小さな唇。
三人の中では一番長身、身長170cmはある。クラスの女子の中では一番に高い。
身長に比例して相応にバストも大きく、姿勢が良い為、よく男子の視線を釘付けにしている。誰に対しても裏表の感じられない天使の様な態度を取る為、男女問わず沢山の人に囲まれている。さらには料理上手で人様の世話も上手いというのだから、将来彼女の夫になる人間は徳を積んだのだろうなぁと思う。
教室の外から覗く男達は、情欲にまみれた視線を隠すことなく彼女達に向けている。その腰に胸に尻に余す事なく全身を舐め回すような視線を遠慮なく浴びせる。
だが思春期の雄が胸や尻から視線を外せないのは当然のこと、年を積んでもそれが出来ていない人間もちらほらといる。
彼女達は気づいていないのだろうか、否気付いているのだとしたら何故マッシーナのように態度で表さないのだろうか。
人の思考回路など今は分からない。
ただ彼女達が浮きすぎているのは分かる。
ファッション誌のモデル画像に外国人を多用するこの国の事だ、重すぎる外見のコンプレックスを抱える彼らにとって彼女達は眩しすぎる。その常識離れした美貌によって彼らは狂っていくだろう、入学して数日でこの人気なのだから骨の髄まで犯されるのは避けられない。
彼女達からの献身的な愛を求めて夢見て、彼らは餌のつり下げられた豚のように一心不乱に走るのだ、その様子を傍から見るのも面白い。
しかもこのレベルの美人があと二人別のクラスにいるというのだから他のクラスでも同様な事が起きるだろう『奇跡の世代』とはよく言ったものだ。
彼女達に関わるとロクな事がないのは目に見えている。出来る限り穏便に反対側でその軌跡を眺めていようか。
「せめて滑稽に踊り狂ってくれ」
――学校生活の
そう思いながら再度机に突っ伏した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「は? 今なんと?」
1-A教室がお祭り騒ぎな盛り上がりを見せている一方その隣に位置する1-B教室はその真逆、軽々しく私語を喋る事すらままならない厳かな環境が出来上がっていた。
その原因となっているのはたった一人の少女の存在。
教室の中央に、あろうことか特注の椅子と机を以ってふんぞり返る彼女。漆黒の髪を縦ロールにした長髪の美人、圧迫感を感じるその態度は相当な自信を感じさせる。
だが胸も薄ければ尻も薄く身長も低い、女性的な強みは無いに等しい。
だがシミ一つ無い肌、小枝のような細い腕、中和の取れた清楚な顔付き。
まるで人形が動いているかのような、精巧で美しい印象を与える。
そんな彼女が眉間に青筋を浮かべている。
正確に言うと、ブチ切れていた。
「そ、其の方のプロフィールと合致する生徒が存在しないという報告を」
傍で佇むのは同じく1-Bの生徒なのだが見るからに腰が低い、同じ学び舎の同じ立場の同じクラスに在籍する人間の会話とは思えない程重々しい態度だった。
「わたくしが間違っているとでも?」
「滅相もございませんっ、お嬢様」
「なら行動で示しなさい」
「はっ、引き続き調査を進めます故どうかご容赦を」
彼女の名前は
彼女は本来、日本国西側の人間である。
第三次世界大戦以降、東西に真っ二つに分かれた政権の西側に属する紅林財閥のご令嬢である彼女がわざわざ東側の学校に入学するメリットは無い。
彼女が入学したというゴシップを大金と別の情報でもみ消すくらいにはデメリットしか無いのだが、どうしても彼女には東藁蘂に入学しなければいけない理由があった。
彼女は人を探していた、若い同い年くらいの華奢な男の子。
彼が東藁蘂に入学するという確かな情報を彼女はとある情報筋から手に入れた。
紅林財閥の金と人材と権力を以ってすれば、いかなる情報だって手に入れられると自負している彼女にとって、今だに収穫ゼロのこの状況は彼女の
何としてでも見つけなければならない。
これ以上、待ち続けるのはもう耐えられない。
探し人が隣の教室にいるなんて
彼女まだ知る由もない。
今日も彼女は忌々しそうに爪を噛む。
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