第119話 戦いのおわった夜に
チェックインしたホテルの一室で、情報交換は滞りなくおわった。
私もいろいろな話が聞けた。
あとはお泊り。
そして明日、メルフィーナさんの希望する場所に行く。
『うううう。ねえ、どうしよう、フレイン』
『ウルミア様にお任せ』
ウルミアとフレインは、日本に残るか異世界に帰るかで大いに迷っていた。
なにしろ魔王城が襲撃されたのだ。
ただ、死傷者はすべて私と石木さんが回復させたし、襲撃者は装備を剥いて9分殺しにして捕虜にしてあるので――。
その意味では、慌てて急いで帰る必要はない。
どうするかは2人の判断に委ねた。
結果、いったん魔王城に帰って、明日の朝に迎えに行くことになった。
リアナは、メルフィーナさんと一緒にホテルに泊まる。
時田さんと石木さんもホテルに泊まる。
「ファー様はいかがなさいますか?」
「私も帰るよ。ごめんね、部屋を取ってもらったのに無駄にしちゃって」
先に言えばよかったね。
「どうぞお気になさらず。何なりとお申し付け下さい」
「お願いと言えば、もしかしたら近い内にキナーエの管理をお願いするかもだけど。あとは外交関係もいろいろと」
「お任せ下さい」
即答された。
「でも、こっちの仕事もあるよね。また相談させて」
「はい! いつでもお呼び下さい!」
石木さんは、日本での生活なんてすぐにでも捨てる勢いだけど……。
さすがにそれはやめた方がいいだろう。
だって、ね、うん……。
石木さんが消えると、私の稼ぎにも影響がでるしね……。
はい。
自分本位の決定です。
「時田さんには、申し訳ないけど、できれば……」
「飛ばしていただければ、河原で寝ている連中の処理は即座に行わせていただきます。朝までにはおわらせますので、明日のイベントには参加させていただければと」
「うん。わかった。お願いね」
「お任せ下さい」
警察の人に様子を見てきてもらえないかなぁ、と、お願いしかけたのだけど、本人が出向いてくれるのならそちらの方がいい。
というか、いつの間にか私に対する言葉が敬語になっているけど……。
まあ、いいか。
私は気にしないことにした。
『ねえ、ファー様。私たちは?』
ウルミアがたずねてきた。
『ウルミアは、ジルと仲良くしておいて』
『ジルもファー様の下についたのよね?』
『まあ、うん。そうかな』
そう言われたことは言われた。
『わかったわ! 次の戦争の時には、同じ軍として動くのよね! よく話し合って、連携できるようにしておくわ!』
『うん。お願いね』
『任せて! 今度は負けないから!』
戦争をするつもりはないけどね、さすがに。
『ねえ、ファー。ファーは2つの大陸を統一するつもりなの?』
『まさか。それはないよ』
リアナに聞かれて、私は笑って否定した。
『ファーさん、何かする時には私にもご相談下さい。協力させていただきます』
『はい、お願いします』
メルフィーナさんは、人類に絶大な影響力を持つ聖女だ。
頼りにさせてもらおう。
この時、私はふとあることを思ったけど……。
それについては口に出さず――。
時田さんを河原に送って、ウルミアとフレインを魔王城に送って――。
私は超機動戦艦に帰った。
はい。
我が家の自室ではなく、ハイネリスの方です。
で……。
カメキチに聞いてみた。
「ねえ、カメキチ。私ってさ、今の戦力で世界征服とか、できると思う?」
「光の化身を現世界の最大戦力と考えるのなら、蹂躙自体は容易です」
「そっかー」
私も実は、そう思ったのだ。
もしかしたら私、できちゃうかも、なんて。
「ただし、世界全体の分析ができていない以上、油断は禁物です。どのような未知の敵が現れるかわかりませんので、こちらも戦力の増強を進め、魔王を中心として取り込める人材は容赦なく取り込んでいくべきかと」
「なるほどー」
それはそうか。
私は大きなあくびをして、ソファーに寝転んだ。
「ねえ、カメキチ。ここって、お風呂とかベッドとかもあるのー?」
「もちろんあります。就寝と湯船の準備をしましょうか?」
「うん。お願いー」
せっかくだから、今夜はハイネリスで寝よう。
お風呂はバッチリ適温だった。
ベッドはふかふかだった。
今日は本当にいろいろあったけど――。
最後はゆったりと、平和に静かに眠りにつくことができた。
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