第116話 再会
午後になると、すっかり浮遊島は平和になった。
超機動戦艦ハイネリスが目を光らせる中――。
人類連合軍も魔族軍も、私に言われた通りにキチンと軍を退いてくれた。
本当によかった。
ただ、私の仕事はまだおわらない。
石木さんを迎えに行かねば。
あと、一緒にいるアンタンタラスさんにも挨拶しないとね。
一度殺しているし。
「じゃあ、カメキチ、少しよろしくね」
「ご武運を、マスター」
「帰りは転移魔法でいいんだよね?」
「はい。マスターであれば問題ありません」
では安心して、転移。
私は、キナーエからいくらか離れた谷間で待機していた、死者の軍団の前に出た。
「お待たせ」
ちょうど正面にいた石木さんに手を振ると――。
となりにいたアンタンタラスさんも合わせて、全員に一斉に膝をつかれた。
ちなみに他の魔王軍の姿はない。
魔王軍は魔王ごとにバラバラで行動していて、まとまりはなかった。
他の魔王軍は待機せず、早々に拠点に引き上げていった。
「真のご帰還を心よりお喜び申し上げます、偉大なる絶対の支配者、ザーナス陛下」
石木さんが言う。
「あはは。また大げさなー。とりあえず立って」
「はっ!」
皆が一斉に立ち上がる。
「魔王ジルゼイダさん」
石木さんとアンタンタラスさんの真ん中にいた小さな女の子に私は声をかけた。
礼儀的に、話しかけるのは、まずはこの子だよね。
「なの! 再びお会いできて光栄なの! ジルゼイダ魔王軍は、全軍、偉大なる陛下の傘下に加わることを誓いますなの!」
背筋を伸ばして、とろんとした目ながら毅然と挨拶してくれる。
「傘下に加わってもらう必要はないけどね」
「そ、そんなことを言わずに、入れてほしいのお!」
「まあ、うん。そういうことは、また今度、オハナシしようか。それよりウルミアは、ちゃんと助けられたから安心して」
「ありがとうございますなの! ……よかったのぉ」
私は次に石木さんをねぎらった。
そして最後に、アンタンタラスさんに目を向けた。
彼とは久しぶりの再会だ。
それこそ、殺して以来だ。
そういえばアンタンタラスさんへの挨拶を、まったく決められていなかったね。
どうしようか。
私は正直、途方に暮れたけど――。
アンタンタラスさんの方からしゃべってくれる気配はなかった。
なので私が、何か言わねば……。
ねば……。
ねばと言えば……。
「なっとう」
ふむう。私は何を口にしているのか。
「なっとう、で、ございますか……」
「うん。そう」
アンタンタラスさんに繰り返されて、私はうなずいた。
どうする……。
そうだ!
「君の命は、納豆のように粘り強いね。ボクの攻撃によく耐えたものだよ」
ごめんなさいファーエイルさん。
ものすごくどうでもいいセリフで真似をしてしまいました。
ど、どうるすの、私……。
「でも見るところ、少し元気がないようだね」
そう。
私の目に映るアンタンタラスさんは、かなり消耗しているように見えた。
闇の力が薄い。
なので、闇の祝福をかけてあげた。
サービスで他のみんなにも。
「これは……! 力が漲る! 失っていた力が、いやそれ以上に――!」
「これでいいね。これから忙しくなるかも知れないけど、力を貸してくれるかな?」
「ははーっ!」
他のみんなとそろって、再び平伏されてしまった。
とはいえ、ごまかせた。
さすがは「平常心」の私だ。
「じゃあ、今日のところはこれでね。みんな、お疲れ様。魔王領に戻って、まずはゆっくりと戦いの疲れを癒やしてね。イキシオイレスはこっちに」
「はっ!」
「私たちはウルミアのところに行くからね」
「了解しました」
そう、現代日本に帰ろう。
我が家に。
ウルミアたちを置いて、想定外に時間が過ぎてしまった。
向こうはもう、夕方から夜のはずだ。
どうなっていることか。
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