第45話 お別れ
食事の後は、ウルミアの希望で洋服を買いに行った。
吐く寸前まで食べておいて、ウルミアとフレインは普通に動いていた。
消化は早いらしい。
竜人おそるべし、なのです。
洋服は、ショッピングモールにある女の子の服の専門店で買った。
正直、私はその手のオシャレ店に入ったことがなかったので、ウルミアにここがいいと言われた時にはドキドキだったのですが……。
幸いにも店員さんが優しくて、たくさん試着もさせてもらえた。
角があっても普通に対応してくれてありがとうございます!
なのでした。
私も店員さんオススメの服を買った。
爽やかなブラウスとスカート。
あと、ツバの広い帽子。
夏の避暑地で着れば、ファーならさぞかしお嬢様に見えることだろう。
フレインはジーパンとパーカー。
ウルミアは散々悩んだ挙げ句、私と同系統のものを買った。
デザインは異なるけど、一応、お揃いということのようだ。
そんなこんなで――。
1日はあっという間におわった。
買い物を済ませて外に出ると、もう夕方だった。
空が赤い。
「じゃあ、今日はここまでだね。転移魔法でウルミアのお城まで送るね」
「はぁぁぁ……。おわっちゃったかぁ。1日って早いわね」
「たしカニ」
フレインが両手をチョキチョキする。
「あはは。また今度ね」
「ねえ、ファー様! ぜーったい、また今度よね! 私たちの方からこっちには来れないから絶対にファー様の方から来てよね!」
「うん。またね」
「いつにする? 明日? 明後日?」
「んー。ごめん。すぐには無理だよー。あんまり遊びすぎると、それこそ大変なことになるかも知れないしさー」
今日もかなり人目は引いてしまった。
幸いにも、ヨヨなんとかさん以外に、声をかけてくる人はいなかったけど。
「ならいつ?」
「んー。また今度ね」
「いつかわからないのー!」
「だってほら、私にも生活があるからさぁ……。お金も稼ぎたいし……」
頑張ってチャンネルの収益化をせねばなのです。
目指せ1000人なのです。
「金貨をあげるから、時田に売ってもらえば?」
「それはやめとくよ。お金なんてもらってたら友達じゃないよね」
「友達?」
「あ、うん……。ごめん、違うよね……」
「そんなことはないわ! 私、ファー様と友達よね!」
「いいの……?」
私なんかと。
「ええ! もちろんよ!」
ウルミアが小さな手を伸ばしてくる。
私はその手を握った。
「素晴らしい。感動」
パチパチパチ。
と、フレインが拍手をする。
「私とファー様は友達ね!」
「あはは。でも、友達ならファーの時も様はいらないよー」
「それはダメよ。ファー様はファー様だもの」
きっぱり言われた。
「あ、そうだ。ねえ、次はウルミアの領土を見せてもらってもいいかな? 私、浮遊島っていうところに行ってみたいんだけど……」
「浮遊島は危険よ?」
「多分、平気かな。私、強いし」
「それはそうね。魔物ごときファー様の敵じゃないか。なら案内してあげるっ!」
「やった。ありがとう」
空に浮かぶ島なんて、最高の動画になりそうだ!
天空の城!
あるかも!
見つければ次こそバズるね!
「あと、あの、せっかくだし、フレインも友達でいい……?」
私はおそるおそるたずねた。
「では、せっかくなので」
フレインとも握手できました。
嬉しいです。
「じゃあ、飛ぶね。――『テレポート』」
ヒュン、と。
次の瞬間には魔王城の庭に私たちの姿はありました。
日本とウルミアの魔王領には時差がある。
異世界の空は、まだ青かった。
「じゃあ、またね!」
連日の夜帰りはさすがに避けたいので、私はすぐに帰らせてもらうことにした。
「またっていつー!」
「またー!」
「もー! またねー、ファー様!」
私は転移して、いつもの自分の部屋に帰った。
「ふう」
最初に私は息をついた。
今日は楽しかったけど、家に帰った途端、どっと疲れを感じた。
「ただいま」
私は部屋のPCくんに笑いかけた。
PCくんは、今日はゆっくりと休憩できたことだろう。
いつもなら朝から動きっぱなしだしね。
今夜からまたよろしくね。
私はベッドに寝転んだ。
夕食の時間まで、少しだけ眠ろう。
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