第9話 レベルアップの確認



 でもその前に、確かめることがあった。

 先程まではリアナたちがいたので頑張って気にしないようにしていたけど……。

 何度も何度も経験値バーが振り切れた結果……。

 レベルがかなり上がった。

 なんと60。


 HPとMPは60000になっていた。

 ステータスも、すべて60000。

 うん。

 相変わらずの一定値だね!

 ステータスの上限が1200000になっていることから逆算して、レベルは1200まで上がるのだろうか。


 SPについては10レベルまでは2ずつ上がって、そこからは段階的に上がり方が増えて、最終的には599ポイントになっていた。


「これでまだ、20分の1なのかぁ……」


 ステータス画面で数値を見ていると、空恐ろしい気持ちになるね。

 とはいえ幸いにも、スマホを普通に扱うことはできた。

 マンガやアニメだと、パワーアップした直後って、力を上手く制御できなくて、触れるものをすべて壊してしまう……。

 なんて展開も、よくあるけど……。

 私の場合は、力を込めようとしなければ、そのまま普通でいられるようだ。


 スマホもだけど……。

 リアナの手を握り潰さなくてよかった……。


「さーて、問題はスキルだよねえ」


 私は「習得」のページを開いた。

 大量に並んだ魔法やスキルを、じーっと眺めていく。

 攻撃魔法、補助魔法、回復魔法……。

 武器スキル、生成スキル、一般スキル……。

 ユーザーインターフェースがRPGっぽいのと同じで、魔法とスキルの区分もゲーム感覚で理解することはできた。


「んー。どうしようかなぁ」


 やっぱり怪我をするのが怖いから、『ヒール』は大切な気がする。

 私はランク『Ⅰ』だったヒールを『Ⅹ』まで上げた。

 取得に必要なSPは、1から2で2,2から3で3、3から4で4……。

 つまり、次のランクの数値分だった。


 加えて私は、『キュア・デジーズ』『キュア・ポイズン』『リムーブ・カース』をこちらも最大の『Ⅹ』まで取得した。

 それぞれ、病気を癒やす、解毒、呪いを解く、という回復魔法だ。


 残るSPは380。

 まだまだ余裕ではあるけれど、大胆に使いすぎたかも知れない。

 あとで困らないように、今はもう少し慎重に割り振っていこう。


 で、次に何を取るかだけど……。


 お金を稼ぎたいなら生成スキルなんかもよさそうだ。

 木工、裁縫、錬金、彫金、等……。

 木工スキルを取得して、木彫りのクマを作って売るとかいいかも知れない。

 ただ、うん……。

 木彫りのクマしか浮かんでこないところからして……。

 いくらスキルを手に入てれも、私の貧相な想像力では、たいしたものは作れない気がする。

 それに売り方もわからないし……。

 フリマサイトを使えば売れそうな気もするけど……。


 考えた末、やめておいた。


「私には配信があるしね! 配信があればカンペキだよね!」


 そういう結論になった。


 ちなみに私の危機を何度も救ってくれたスキル『自動反応』と、そのカテゴリー内にある『危機感知』『危機対応』『緊急帰投』にはランクがなかった。

 取得すれば、それで万全のようだ。

 もしもあるなら、最優先だったけどね……。


 ただかわりに、『危機感知:指定』『危機感知:広域』『危機感知:超広域』『危機対応:軽』『危機対応:絶』『危機対応:滅』という別項目はあった。


「絶、滅って……」


 その名の通り、かなり強烈に対応するスキルのようだ。

 軽は、手加減対応の意味のようだ。


 緊急帰投については、『緊急帰投:即』『緊急帰投:予約』があった。

 即は、カウントなしの緊急帰投。

 予約は、あらかじめ発動時間を決めておけるようだ。


 とりあえず『自動反応』関係のスキルは、すべて取得しておいた。

 それぞれに10ポイントを払う。


 続けて、いろいろ迷いつつも次の魔法を取得した。


 風属性魔法から、

 『ヘイストⅤ』…加速。

 『フライⅤ』…飛行。

 『ウィンド・アローⅤ』…風の攻撃魔法。

 『インビジブルⅤ』…透明化。

 『サイレンスⅤ』…消音。


 光属性魔法から、

 『ポリモーフ・セルフⅤ』……自分の姿を変える。


 私、闇ですが……。

 光と風の子でいこうと思います!


 これで90ポイントを消費して、残るSPは270ポイントとなった。


 かなり使ってしまったけど悔いはない。


 特に『ポリモーフ・セルフ』は、まさに私の希望だった。

 一定時間、自分の姿を変える。

 効果時間と最大サイズは、魔法ランクに依存する。

 私はⅤにまで上げたので、最大5時間、最大自分の5倍のサイズまで、任意で姿を変えることができるようになった。


「ポリモーフ・セルフ――。羽崎彼方になぁれ!」


 早速、使ってみてたところ……。

 ぽんっ!

 元の私に戻れましたー!


 つまり、だ。


 つまり、です……。


「よかったよぉぉぉぉぉ! これでおうちに帰るぅぅぅぅぅぅぅ!」


 私は感涙した。


 ただ、すぐに注意事項に気づいた。


 私はすっかり陽気になって、早速、スマホを構えてダンジョンの撮影を始めた。

 のだけど……。

 物陰からスライムっぽい魔物が現れて、襲われた瞬間――。

 変身魔法は解けた。

 魔物は即座に『危機対応』で葬ったけど――。


 私はいったん撮影はやめて、変身魔法の解ける条件を確認した。


 条件はすぐに、だいたいわかった。


 戦闘だけではなく、感情が大きく揺れたり、激しい行動を取るとアウトのようだ。


 といっても……。


 激しいというのは『ファー』の基準であって、元の私『羽崎彼方』の基準で殴ろうが走ろうが魔法は解けなかった。

 つまり、平常心で普通にしていれば問題はなさそうだ。


「あーよかった。なら楽勝だねー!」


 私はホッと胸をなでおろした。

 だって私の生活で、魔物を倒すほどの力を振るう機会なんてない。

 とても平和なのだ。

 まあ、うん。

 気のせいか、今日はあったけどね……。

 トラックを受け止めたし……。


 あとパンを食べてみたけど、こちらも平気だった。

 食事で変身が解けることはないようだ。


 パンを食べつつ、私はふと思った。


「……もしも私が普通の異世界転移の主人公とかなら、リアナにパンをごちそうして、驚かれていたりしたのかなぁ」


 お約束だよね。

 現代日本の豊かな食事無双。


「え? なにこれ!? こんなに柔らかくて美味しいパン、食べたことがないわ!」


 とかね。


 私はリアナのマネをして、1人で笑って――。

 落ち込んだ。


 うん。


 はい。


 私は逃げ出してしまいましたともさ。


「まあ、いいや……。とにかく私には、稼ぎが必要なのです……」


 頑張ろう。

 私は今度こそ、ちゃんとダンジョン動画を撮ることにした。



 ちなみに私はこんな感じに成長しました。


レベル60

経験値6034250/NEXT6100000


HP60000

MP60000

SP210


ステータス

 STR:60000/1200000

 DEX:60000/1200000

 AGI:60000/1200000

 INT:60000/1200000

 POW:60000/1200000

 CON:60000/1200000


『スキル』

自動反応・危機感知(通常、指定、広域、超広域)

    ・危機対応(通常、軽、絶、滅)

    ・緊急帰投(通常、即、予約)


『光属性魔法』

ヒールⅩ

キュア・デジーズⅩ

キュア・ポイズンⅩ

リムーブ・カースⅩ

ポリモーフ・セルフⅤ


『風属性魔法』

ヘイストⅤ

フライⅤ

ウィンド・アローⅤ

インビジブルⅤ

サイレンスⅤ


『闇属性魔法』

テレポートⅩ


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