私の日常

皆様、ごきげんよう。

わたくし、リリエル・アンルナーダと申しますわ。

今年の春に、国立ステラジー学園に入学して、早3ヶ月が経ちましたわ。

この学校では、文学や算術などに加え、政治経済、剣や魔法などを習うことができますわ。

また、貴族・平民分け隔てなく門戸を開けていますの。

基本的に4年制で望めば6年まで通うことができますわ。留年はその限りではないのですけどね。


「おはようございます。義姉ねえ様!」


「おはようございますわ。ノア」


彼は弟のノアですわ。

私の生家、アンルナーダ侯爵家には、私以外の実子がおらず、分家から養子にもらいましたの。

我が家は、魔法に重きを置いている部分があり、ノアも魔法が得意ですの。

ちなみに、この国では、王家、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家の順でくらいが高いのですわ。

肩まで伸びた緩いウェーブの掛かった薄い茶色の髪、綺麗な紅い瞳はぱっちりと輝いている。

私よりも高いけれど、周りと比べると低く華奢で、幼い顔つき。


「今日も一緒に、学園に行きましょう。義姉様!」


といって、私の手を引いていく。


「ええ。そうですわね」


子犬みたいにとっても可愛い弟ですわ!


私たちの学園の制服については、女性は、白のワイシャツ、ジャケット、膝下丈のプリーツスカート。胸元には薄桃色のリボンタイをつけていますの。

対して男性は、女性と同じく、白のワイシャツ、ジャケット、そして、ズボン。胸元には薄緑色のネクタイをつけていますわ。


「おはよう、グレイ」


話している間に、馬車の前に着きましたわ。


「おはようございますわ。グレイ」


「おはようございます。リリエル様。ノア様」


彼は、グレイ。我が家の執事ですわ。

透き通るようなアイスブルーの髪は高い位置で縛られており、切れ長の灰色の瞳は知的な印象を持っている。

高い身長と整った顔つき。


「グレイ、昨日、庭師たちからいただいた百合の花、とても綺麗だったと伝えてください」


「かしこまりました」


と、こちらに一礼。

仕事は完璧で、見目も麗しい彼は、多くの家から引き抜きの話が来ているようですの。

もっとも、本人にその気は無いようですし、我が家も手放す気はございませんわ!


「それでは、出発いたします」


馬車が走り始めましたわ。

この馬車は、特別製で私たちにあまり揺れを感じさせませんの。


「義姉様、今日は、魔法の授業がありますよね。勝ったら、褒めてくれますか?」


「ええ。もちろんですわ。けれど、無理をしてはいけませんよ?」


うるうるおめめの上目遣い。とっても可愛いですわ!


「はい!もちろんです、義姉様!

義姉様の魔法も楽しみです。

義姉様は魔法もとっても綺麗ですから!」


この世界では、すべての生物が魔力と呼ばれるエネルギーを持っていますわ。

そして、その魔力を使用することで魔法を使うことができますの。

ただし、魔力量には個体差があり、動物や虫等は保有する魔力量が少ないため使うことができないのですわ。

また、魔法には属性があり、基本属性の火・水・風・土・光・闇があり、そこから、氷や重力、雷などに派生していきますの。

各々が何か1つ基本属性の中から得意な属性を持っているのですわ。

もちろん、その属性しか使えない、というわけではありませんけどね。

どの属性も攻撃・補助・回復を行うことができますけど、効果と魔法の種類の数に差がありますの。

私は光属性、ノアは土属性、グレイは水属性が得意ですわ。


「リリエル様、ノア様、到着いたしました」


「義姉様、行きましょう!」


「ええ、わかりましたわ」


もう学園に着いてしまいましたわね。

ちなみに、私、ノア、グレイは同じクラスですの。

ノアは私と同い年、グレイは少し上ですけど、私達の執事兼生徒として通っているのですわ。


「おはよう。リリー」


「おはようございますわ。アル」


「あ、おはよう。アル」


「ノア、グレイもおはよう」


「おはようございます。アルベルト様」


と言って向こうから歩いてきたのは、アル。フルネームはアルベルト=ソレイル。

小さい頃からの幼馴染ですわ。

彼は、ソレイル公爵家の長男ですわ。彼の家は、文武両道が家訓ですの。

得意属性は風。剣も魔法も扱えて、座学もとっても得意。多くの方に天才と言われていますわ!

キラキラと輝き、風に揺れる、ショートカットの濃い金色の髪。

エメラルドを思わせる緑の瞳。


「さ、教室に行こうか」


「ええ」


さっと、こちらに手を伸ばしてエスコートしてくれる。

物語に出てくる王子様のようにかっこよくて、気配りができる幼馴染ですわ!


「そういえば、昨日も『月華の天使』が現れたらしいよ」


「まあ!そうですの!」


「へぇ〜」


『月華の天使』様とは、私達が学園に入学した時と同時期から、突如として現れ、満月の夜にこの国のどこかに現れて、魔物に襲われている人を助けている方のことですわ。

あまり日が経ったいないのに名前が広まっているのは、助けられた方が数多くいるからですわね。

この世界には、魔物と呼ばれる存在がいますの。

一説には動物が過剰な魔力を取り込んだ影響でなってしまった、というものがありますけれど、詳しいことは今のところほとんどわかっていないのが現状ですわ。


「なんでも、月詠の森で普段は出ないはずの『フェンリル』が出たらしいよ。

で、近くで野営していたらしい冒険者達が襲われたらしいんだけど、そこを助けたんだって」


「「フェンリル(ですの)!」」


フェンリルはとても大きな白銀の狼のような魔物らしいですわ。

素早く動き、その鋭い爪と牙で敵を切り裂く。また、遠距離から倒そうにも、氷の魔法を使うため討伐がとても難しい魔物なのですわ。


「さすが『月華の天使』様。すごいですわ〜。」


「でしょ!一度でいいからわたしも会ってみたいのよね〜!」


あら、もう教室に着きましたのね。

話に入ってきたのはルビー。フルネームはルビー=クレアリズ。

彼女の家は私と同じ伯爵家で宝石を多く取り扱っていますの。

得意属性は火で、広い範囲の敵を同時に相手取ることができますの!


「おはようございますわ。ルビー」


「おはよう!リリー」


鮮やかな真紅の髪を綺麗に巻かれたサイドテールに。ハチミツのような金色の瞳は猫のよう。


「「「おはよう(ございます)。ルビー(様)」」」


「みんなもおはよう!」


みんなに愛されるような、とっても可愛いお友達ですの!


「でも、結構冒険者続けてるオレでも会えないんだぜ。無理だろー」


そう言って、ルビーの後ろから来たのは、ジェット。

彼は、冒険者で色々なところに行ったことがあるのですわ。

得意属性は闇で、剣の扱いがとっても上手ですの。


「なんですって!夢見るくらいいいじゃないの!」


「はいはい。ま、会えたらいいなー」


褐色の肌で、ふわふわした黒い髪、黒曜石のような黒い瞳。

強くて頼もしい友達ですわ!


「けど、ご本人の情報があまりないのですわよね〜」


「そう!それなのよ!」


「見た人たちが言っていたことから、薄い金髪のストレートを緩く縛ってて〜」


「光魔法と細剣を使うということ以外わかってないからね」


「顔はまだしも、性別もわからないんだよなー」


『月華の天使』様は謎多き方なのですわ。

『月華の天使』という呼び名も、目撃者の方々の情報からつけられましたの。

なんでも

『俺達は満月の夜に普段は見ないような強い魔物に襲われたんだ。

このままでは死んでしまう!と思った時、何か白いものが視界の端をかすめた。

そして次の瞬間には、魔物達は次々に倒れていったんだ!

何が起こったのかと急いであたりを見回すと、宙に人が浮いていた。

金の髪を風にたなびかせ、白磁の面と純白のローブを身に纏った人物が。

白銀の細剣を手に持ち、月白の翼を背負ってな。

その姿は…、そう、まるで天の使いのように見えたんだ』

と、いうようなものがいくつも出されましたの。

顔は仮面でわからず、体型もローブでわからない。

わかったことは、金の髪と、手に持っていた細剣がその方の得物であること。そして、光魔法を使うことのみですの。

これは、翼が光魔法の一つの『フライ』だと言われているからですわね。

また、その方は去る時にはいつもその場に花を置いていくらしいですの。

この行動も謎の一つなのですわ。

まあ、このようなことから『月』『花』『天の使い』という言葉をとって、『月華の天使』という名前がつきましたの。


「ルビーは『月華の天使』様のことどう思いますの?」


「わたしは〜、わたしたちより年上だけど、とってもかっこいい殿方様だと思うの!」


「まあ、ルビーもですの!私もそう思っておりましたの!

きっと、優しくて、美しくて、それでいてとてもお強い殿方だと考えておりましたの!

私もいつかお会いしてみたいですわ〜!」


「そうよね!いつか2人で会いましょう、リリー!」


「ええ!そうですわね、ルビー!」


「うふふっ!」


思わず手と手を取り合ってしまいましたわ!

もっと強くなれば『月華の天使』様にも会えますでしょうか?


「むぅ。ボクの義姉様なのに」


「やっぱり、リリーは可愛いな」


「……。」


「オレももっと強くならねーとな」


その後ろで、このようなことがつぶやかれていることにはもちろん気づいていませんでしたわ。

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