第8話 妻の実家
妻の父が亡くなった頃のお話しです。
この頃はまだ結婚しておらず、彼女は母と猫と暮らしていました。彼女の部屋は二階で母は一階で寝起きしていたそうです。
父が亡くなって暫くした頃。
寝ていると深夜にふと、空気が変わる感じがしたそうです。
モヤっとしたような重くなったという様な感じ。
すると、階段の方でゆっくりと連続した音が聞こえます。
トン・・・トン・・・トン・・・
初めは何の音? と思っていましたが、それがしだいに階段を上がって来る様に感じました。
二階には二部屋あり、彼女の部屋は階段を上がった最初の部屋です。
足音は非常にゆっくりで、母のそれとは違います。
それでいて確実に近づいています。
彼女は布団を頭からすっぽり被り
「通り過ぎろ。通り過ぎろ!」
と念じます。が、部屋の前でその音は止まります。
部屋のドアは閉めてあります。
しかしその音の主はドアを開ける事も無く部屋に入って来ました。
布団を被っているので実際に見た訳ではありません。ただ気配がスッと入って来たのだそうです。
そしてそのまま突き当りの窓まで行き、ガタガタと窓が開かない事を確認して部屋を出て行きました。
そして再びゆっくりと階段を下りて行ったそうです。
翌日の朝。彼女は母に尋ねたそうです。
「昨日の夜は何しに来たの?」
しかし母の回答は「部屋には行ってない」というものでした。
その後も同じような事が何度も起こります。そしてそれは次第にエスカレートしていきました。
足音は寄り明確になり、同じ様に二階に来たかと思うと箪笥を開け閉めしたり、ベッドの下を覗いたり、部屋のゴミ箱の場所で何かを食べたりしたそうです。
バリッ、バリッ、バリッ・・・
せんべいの様な硬い物を食べる音がはっきりと聞こえたそうです。
それは一階でも行われました。
一階の箪笥を開け閉めしするパタン、パタンという音や歩き回る足音、これらが良く聞こえたそうです。
いずれも母に聞いても「そんな事はしていない。そんな音は聞いていない」という事です。
またある日の事。
彼女が出かけようと玄関に向かうと
ジャーーーー・・・
玄関隣に有るキッチンから突然水が流れる音が聞こえたそうです。
少し戻ってドアから中を覗いてもキッチンには誰もいません。
しかし蛇口からは全開と思われる程の勢いで水が出ています。
気味が悪いと思いながらも蛇口を閉めて出かけたそうです。
これらの出来事はその後、約三年間、続いたそうです。
・・・・・
私も一度だけ体験しました。
結婚直後、妻の実家に泊まった時です。
その日は妻の部屋に泊めてもらいました。
部屋に二つ布団を敷き、隣り合わせで寝ていました。
深夜。
寝ている私の耳元で何かが囁いています。
寝ぼけているので何を言っているかは聞き取れません。私は猫でもやって来たのかと手を振って追い払おうとしましたが・・・何も居ません。
うん?
と少し目が覚めてきた瞬間
「%&()$”(%$##!!!」
「うわあ!!」
何かが耳元で叫んだのです。
慌てて隣で寝ている妻を起こそうと彼女の肩を揺さぶりました。
すると彼女はむくりと上半身を起こし、私の方を向いて
「$%(###&&!!!」
何かを叫んでいます。
そしてまた、バタリと布団に倒れ込むとそのまま寝てしまいました。
私には何が起こって居るのか解りません。
私はすっかり目が覚めてしまい、朝までそのまま過ごしました。
朝、妻にその事を聞いてみましたがまったく覚えていないそうです。
そして、言っていた言葉ですが、その時は意味のある言葉だったと思ったのですが後で思い出そうとしても思い出せません。何か私に怒っている様な、不満が有る様な、そんな感じの言葉だったと思います。
その後何度も妻の実家に泊まりましたが同じような現象は起こって居ません。
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