第5話 通夜の帰り道
父の話です。
この日、父は仕事関係の方の通夜に出ていました。
遠方で、しかも仕事の終わった後での参加だったので帰りは深夜になりました。
父は早く帰る為に川の堤防を車で走っていたそうです。
その川は一級河川で川幅はかなり広いのですが当時の堤防道路は対面通行の狭い道だったそうです。道路の両端はススキが生い茂り見通しはあまり良くありません。
そんな中を車を走らせていると急に子供がススキの中から飛び出して来たそうです。
父は急ブレーキを踏んで、ぎりぎり事故は免れました。
ハンドルにしがみ付く父の正面。ヘッドライトの灯の中にその子供はまだ立っていたそうです。
小さい男の子。
何を思ったのかその男の子は車に近寄って来たそうです。
こんな夜中に子供?
しかも周りに民家の無い川の堤防。街灯さえも有りません。
トコトコと男の子は車に近づき、そのまま運転席の右側に来ました。
父はその様子を目で追います。
ピタッと立ち止まった男の子は、運転席の中を覗くように、上半身を傾けて顔をペタっと窓ガラスにくっ付けたそうです。
「ひやっ!」
父が驚きの声を上げると、子供はスッとかき消す様に姿を消しました。
その後は無我夢中で帰って来たそうです。
この話を親戚の通夜で聞きました。
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