第4話 白い女の子

うちの奥さんは物を金額に関係なく直感で購入を決める事が多いです。

この日も車に乗って走っていると


「あ、止まって!」


と言うので止まるとそこは中古車屋さん。


「この車、欲しい。」


と言い出しました。

その車は国産車としては大型の乗用車。

私は買い物は慎重派ですので、「この車種で他も探してみた方がいいよ」と提案しましたが「これが良い」と譲りません。


しかも、ネットで検索しても確かにその車は安いのです。

で、その理由を直接その車屋さんで聞いてみた所、その車は修復歴有り。つまり事故車だったのです。


それでも良いと言うので、若干の値引き交渉をして購入する運びとなりました。


我が家では車を買うと、当日皆で記念撮影をします。

その車は直接我が家に届けられたので自宅前で撮影しました。

それから一週間ほど経ち、フィルムが現像(デジカメではない)されて来たので奥さんと見てみてビックリ。


車の正面やや右から撮影したのですが、後部座席に人が乗っているのです。


撮影時は家族全員外に居ましたので車内には誰もいません。

その車内にいるのは全身が白い女の子。

白い服、というより白い靄で出来ている感じです。服も顔も頭も髪の毛もあります。ただし全てが白。背格好から十歳前後。髪の長さは胸まであり、服はノースリーブ。


そして、眼球がありませんでした。

目の所だけぽっかりと黒い穴が開いているのです。


妻は早速神社に電話してお祓いの予約を取りました。

私は購入した自動車屋に電話してどの様な事故かを聞こうとしました。しかし、それは解らないとの事。それと心霊系は補償対象にはならないと言われました。


翌日、予約をした神社に向かいました。

そして写真とネガフィルを持って行って事情を説明したのです。


・・・ここから話の方向が変わります。


「こんな写真が撮れるんです。」

「ほおー。」

「これって呪われたりしないんでしょうか。」

「うーん・・・。写真以外に何かありましたか? 運転している時とか。」

「いえ。特には何も。」

「ハンドルが取られるとか。」

「いえ・・・。」

「じゃあ問題ないじゃないですか!」

「え?」

「だって写真に写るだけなんでしょ!?」

「はい・・・。」

「だったら、写真を撮らなきゃ良いんですよ!」

「・・・そ、そういう事です?」

「そうです! この前なんか夜中に車の中でオリン(仏壇にある小さいカネ)が鳴るっていう相談がありましてね。その方はビデオに撮って持ってこられましたよ。確かに鳴ってるんですよ。車の中にはオリンなんて無いのに。でもね、これも簡単な話です。」

「そうなんですか?」

「ええ。夜中に車に乗らなければ良いだけの話なんです。」

「・・・」

「じゃあ、お祓いしときますね。」


この日、写真とネガフィルムは神社で供養してもらいました。

この日以来、この車の写真は撮っていません。


その後、この車で大きなトラブルはありません。

小さな出来事としては立体駐車場で係りの女性がゲートから出て来たこの車を見て


「この車、怖い・・・」


と呟いた事くらい。


驚かされた事としては、仕事で三日連続で徹夜をした帰り道。

完全に居眠り運転をしていました。それも高速道路上で。当時はまだ自動運転はありません。

正直死んでいても不思議ではない状況でした。


それがストンと軽いショックを感じて私は目を覚ましたのです。

止まったのは料金所。


「え!? ここどこ!?」

「○○インター。料金は千六百円ね。」

「ええ!?」

「次の車待ってるから。お願いしますよ。」


高速から料金所に出るには、インターから降りてループした道路を進んだ先に有ります。どうして何処にもぶつからなかったのか・・・?

私は訳も解らず、取り敢えず料金を支払って高速を出ました。

今にして思えばあの女の子が守ってくれたのかも知れません。


その車も走行距離が十万キロを超えたので売ってしまいました。

輸出されるそうです。


ちなみに妻に内緒で後部座席の床のマットを剥がした事があります。(何故か二重になっていたので)

何かの黒いシミが広範囲に付着していました。これが何のシミかは私は知りません。

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