第37話

「あの6人組を捕まえたい」

「そうなりますよね」


 流石異世界だ。

 日本のように証拠が無くても怪しければ捕まえる。

 人権を無視する悪い面もあるが、今は行動が早くて助かる。

 俺は万が一の時の備えてサーバントを森から帰還させた。


「俺は冒険者を連れて入り口から押し入る。ノワールたちは外にいて欲しい」

「もし窓から逃げた場合は生きたまま捕らえたい、でいいですか?」

「そうだ、流石だな」


「分かりました。外で待っています」

「頼む」


 モモとスレイアも立ち上がる。


「私も行きます!」

「うん、頼む」


 外で待つと叫び声が聞こえた。


「俺はただの冒険者だ! こんなことが許されると思うな!」

「話を聞くだけだ。魔装を解除しろ!」


 パリーン!

 2階の窓が割れて男が1人降りて来る。


「はあああああ!」


 モモが着地した男に蹴り上げを放つと男のあごにヒットした。

 うまい!

 着地の瞬間、思うように動けない隙をうまく狙った。


 モモが体術コンボで男を気絶させた。


 また2人が降りて来る。

 1人をモモが同じ要領で気絶させるとスレイアが両足を氷のランスで攻撃する。

 モモがその男を攻撃して気絶させた。


 窓からストラクタさんが顔を出した。


「ノワール! ご苦労だった!」

「いえ、やったのはモモとスレイアです!」


「取り調べをしたい! ノワール、協力してくれ」


 モモと俺は3人の男を引きずってギルドに入った。

 そのままギルドの地下牢に運ぶとストラクタさんが俺の肩を叩いた。


「状態異常魔法で理性を奪えるか?」

「自白させたいんですね?」

「そうだ、頼めるか」


「大丈夫です、ただ、もう少し弱らせて目を覚ました状態にしたいです」

「スレイアが氷で打ち抜いたこいつはどうだ?」


 ストラクタさんが水をかけて男の顔を軽く3発殴った。


「はい、魔法を重ねがけします」


 俺は男に何度も魔法をかけた。


「あ、あああ、ああ」


 男が放心状態になった。


「今なら自白させられると思います」

「助かる、何の為に冒険者になった?」


「ギルドを、襲撃、するため、中から、扉を、開ける」

「襲撃はいつだ?」

「今日の、夜」


「襲撃の目的はなんだ?」

「俺達を、捕まえる、ギルドの力を、削る、為」


「ノワール、全員に魔法をかけてくれ、職員を使って取り調べを開始する」

「はい」


 俺は魔法をかけた後ギルドに待機するとストラクタさんがいつもの熟練冒険者を呼んで会議を開いた。


 盗賊はギルドに脅威を感じているらしい。

 それはそうだ、この街で一番規模の大きいギルドが手を出せないと思われていた盗賊団を打ち倒して拠点を燃やした。

 その後ギルドは盗賊討伐を押し進め盗賊を捕まえていった。

 その結果盗賊が手を組んでギルドの襲撃を計画した。


 そして盗賊の取り調べにより潜んでいる場所を特定できた。

 時間が経てば盗賊は拠点を替える。

 もし盗賊6人を捕らえた事がバレていればもう手遅れではある。

 でもそうでない可能性もある。


 なので今はすぐに盗賊の拠点に向かってこっちから奇襲をかける作戦だ。

 だが冒険者の中にも盗賊の手先がいる。

 なのでみんなで素早くバラバラに出かけて盗賊を捕まえに行く。

 会議は5分もせずに終わった。

 だがスピードを重視した分人が50人ほどしか集まっていない。

 俺達は盗賊の拠点に向かった。



 ストラクタさんと俺が先頭を歩き貧民街の建物に入ると矢が飛んできた。


「奴ら攻めてきやがった! 奇襲がバレたぞ!」


 ストラクタさんや冒険者が盗賊を捕まえていくがそれでも盗賊が逃げ出す。

 すると違う建物から人が逃げ出していく。

 盗賊は逃げるのがうまい。


 盗賊たちは集まって街の外を目指した。

 そして門兵を攻撃して門を開けて外に逃げていった。


 捕らえた盗賊を地下牢にぶち込むとストラクタさんが俺を呼んだ。


「ノワール、街を出た盗賊をサーバントで追えるか?」

「今サーバントすべてを使って追跡しながら攻撃を仕掛けています」

「さすがだな」


「でも、敵は数が多いです。今回の奇襲は盗賊がびっくりして逃げましたけど、盗賊にサーバントしか追手が来ないとバレてしまえばサーバントが集中攻撃を受けて倒されてしまうでしょう」


「サーバントを通して敵の状況は分かるか?」

「何となくは分かります」

「盗賊は何人いる?」

「はっきりとは分かりませんが、100人以上はいると思います」


「そうか、夜に盗賊に対して襲撃をかけるつもりだ」

「分かりました」


 今は手練れの冒険者が消耗している。

 休息を挟んだ方がいいだろう。

 俺がギルドの外に歩く。


「ノワール、どこに行く?」

「ちょっと1人で散歩に行ってきます」

「……分かった。無理はするなよ」


 俺は1人で盗賊を追った。



【盗賊視点】


 俺達は森に向かって逃げた。

 だが今思えば冒険者の数は少なかった。

 誰かが逃げ始めてそれについていくように逃げはした。


 だが逃げる必要は無かった。

 あそこで戦っていれば俺達が勝っていただろう。

 こっちの頭数は300人を超える。

 100もいない冒険者に負ける事は無かった。


「ぎゃああああああああああああ! 腕がああ! 腕がああああ!」

「矢があああああ! 黒い矢がああああ!」


 遠くから悲鳴が聞こえた。

 俺は悲鳴のする方に走った。


「で、でかい声を出すな、モンスターが集まって来る」

「黒い影のような矢に狙われている! いてえ!」

「でかい声をだすな」


 また近くにいた盗賊が叫ぶ。


「脚が! 脚がああああああ!」


 盗賊の太ももに黒い矢が突き刺さって霧に変わる。

 ノワールの黒い矢か!


「やめろ、叫ぶな」


 ドドドドドドドドドドドド!


  ウリボーが7体走って来る。


「「ブヒイイイ!」」


 やはりこうなるか。


 さらに遠くから悲鳴が聞こえる。

 その悲鳴でモンスターが集まって来る。


「「フシャアアアア!」」


 ポイズンサーペントが仲間に襲い掛かる。


「グオオオオオ!」


 サーベルベアも暴れ回る。

 なんで森に逃げた?


 ……そうか、俺は、ただ先頭を走る奴について行っただけだ。

 遠くから地鳴りが聞こえた。


 ドドドドドドドドドドドドドドドド!


 先頭にノワールがいた。

 そしてその後ろをモンスターの群れが追いかける。

 ノワールがモンスターを引き連れて俺達に押し付ける気だ!


「「ブヒイイイ!」」

「「フシャアア!」」

「「グオオオオ!」」


 ノワールが物凄い勢いでモンスターを引き離すと盗賊を攻撃し始めた。

 黒い矢が飛んでこない!

 ノワールが逃げていく!


「ノワール! あいつ自分だけ逃げやがったな! くそがああああああ!」


 サーベルベアが俺の前に立ちはだかった。


「やめ! 来るなあ! うああああああああああああああああああ!」


 モンスターと盗賊が戦う消耗戦が始まった。


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