第29話
ギルドに帰るとモモにたくさん食べさせた。
何度も遠慮するモモに『同じパーティーとして成長して欲しい』『未来の成長に期待している』と言って食事を食べて貰いギルドの宿屋で寝て貰った。
モモが眠るとストラクタさんと受付嬢が来る。
「モモの状態は、思ったよりまずいです。盾になるようにモンスターに飛び込んで、傷を負ってポーションを使うように言っても中々使いませんでした」
「ああ、実はな、問題がある事を分かった上で任せた。すまない」
「モモがパーティーにいるのは心強いです。迷惑ではないです」
「ギルドの方でも時間が出来れば無料でサポートします」
「私達もギルドに泊まろう」
「そう、だな」
「ノワール、モモに何を教えたい?」
「読み書き計算と常識、後は戦闘訓練も出来れば尚いいです」
「分かった。ノワールだけに苦労は掛けない、話をしよう」
話し合いが続き、午前中はギルドで訓練か読み書き計算、常識を教えてもらう事になった。
そして、午後は毎日ダンジョンに行ってアレクが教えた癖を取る為に何度もモンスターと戦いながら連携の練習をする事に決めた。
今日からギルドの宿屋に泊まり、モモと一緒に行動する。
朝起きて3人でカウンターに向かう。
「最初に日替わり定食を5人前下さい」
「かしこまりました。昨日納品した魔石と報酬です」
報酬を受け取ると3人で座る。
貰った魔石をテーブルに置く。
「モモ、魔石で魔装を強化して欲しい」
「え! でもノワールが強化してないのに、それは出来ません」
「モモ、未来の働きに期待している。使って欲しい」
「は、はい」
モモは俺の様子を伺いながら装備に魔石を押し付けて吸収していく。
そしてまた俺とスレイアの顔を伺う。
「ノワールとスレイアはいいんですか?」
「俺とスレイアは定期的に魔石を使えるだけ使っている、大丈夫だ」
「そ、そうですか。本当に、全部使っていいんですか?」
「吸えるだけ吸って欲しい」
アレクの歪んだ教えが酷い。
魔装を強化するだけで不安になるのか。
反復して毎日魔石を使って貰おう。
食事が来ると俺とスレイアは1人前、モモは3人前を目の前に置いてもらう。
「モモ、朝昼夕十分に食べて欲しい。俺は未来のモモに期待している。モモの進化に期待している。たっぷり食べて欲しい」
反復して何度も言って何度も実行してもらう。
そうしないとアレクの作った歪みを正せない。
「そうだよ、今までのアレクはおかしかった。アレクの言ったことは信頼しないでね」
「そうだ、アレクは普通じゃない、俺とスレイアの言ったことの方が普通だ。奴隷にもある程度の生活をして貰う義務がある、法で決まっている」
犯罪を犯した奴隷で無ければある程度の生活を保障する事になってはいるが奴隷と主人には上下関係があって奴隷は厳しい生活をするケースが多い。
しつこいくらいに言わないとモモが不安がる。
俺はその日から毎日しつこいくらいにモモと話をした。
【モモ視点】
ノワールがご主人様になってから生活が良くなった。
訓練やダンジョン、そしてお勉強は疲れる。
でも、ノワールもスレイアも優しかった。
毎日たっぷりご飯が食べられて、毎日たっぷり眠れる。
文字と計算が出来るようになるとノワールは練習の為に依頼を受けさせてくれた。
2人は困った人の為に毎日1つ依頼を受ける。
ノワールが出した薬草を納品すると2人は褒めてくれた。
文字が読めて計算が出来ると世界が広がる。
奉仕依頼で助けられた人がノワールにポーションやパン、クッキーを持って来てくれる。
私は何度もアイテムを預かった。
ノワールは皆に感謝されていた。
テーブルで受付のお姉さんと勉強をしていると冒険者が話しかけに来てくれた。
『ほほがぷっくりして健康になったじゃねえか。良かったな』
『ノワールの奴隷でよかったな、悪い人に引き取られていれば酷い目に合っていただろうぜ』
『モモ、訓練も勉強もなあ、ただじゃ受けられねえ、本当は金を払って教えて貰うもんだ。ノワールとスレイア、ギルドも未来のお前の事を考えて時間を使っているんだぜえ』
読み書き計算が出来なければ私は自分で依頼を受ける事も出来なかっただろう。受付嬢さんに読んでもらうのもお金がかかる。
冒険者のみんなが言った意味が分かるようになって来た。
私は奴隷としての値段以上のお金をかけて貰うだろう。
たくさん魔石を貰って魔装を強化出来ている。
訓練で戦い方を教えて貰えている。
勉強だって読み書きと計算はある程度出来るようになった。
私はノワールにたくさんの物を貰っている。
でも、嫌な事もあった。
私は耳がいい。
隣の部屋でノワールとスレイアの声が、音が聞こえる。
私が進化して大人の体になれば、私も……抱いてもらえるのでしょうか?
私は子供として助けられているだけで、大人になっても興味を持たれないかもしれない。
それでも早く、進化したい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。