第18話

 次の日、ギルドに入ってアレクが襲撃を受けている事実を知った。

 ゴルドは盗賊に殺された可能性が高い。

 アレクは盗賊か暗殺者(アサシン)ギルドに襲撃を受けた可能性が高いがどっちが原因か分からないようだ。


 大分ストーリーが変わっている。

 アレクが何で襲われたのかもよく分からない。

 アレクが金を持っている事をみんなに見せすぎたせいかもしれない。

 盗賊に目を付けられた可能性もある。

 暗殺者ギルドだってアレクが金を持っていると知れば小遣い稼ぎで襲撃を仕掛ける可能性もある。

 兄がアレクを襲わせた可能性だってある。


 アレクが動いて盗賊狩りをする事になった。

 断ろうかと思ったがストラクタさんから頼まれた為協力する事に決めた。

 選抜されたみんながギルドの2階に集まる。

 数は100人ほどだ。

 

 みんなで盗賊を襲撃しようとすれば必ず情報が漏れる。

 冒険者の中に盗賊と繋がっている人間もいるのだ。


 今の流れはストーリー通りの展開だ。

 アレクが中心となって盗賊を狩る。

 最初にアレクが前に出て活躍する事でアレクはギルドと冒険者の信頼を得る。

 このメインクエはアレクの名声を大きく上げる。


 ストラクタさんが前に出てみんなが座り説明を聞く。


「今回の盗賊襲撃は少数精鋭で行う。理由は情報が漏れる危険を抑える為だ。盗賊への襲撃を行う理由は最近の治安悪化だ。鉄等級冒険者のゴルドが倒され、更に銅等級のアレクまで襲撃を受けた。理由は分からんが、ギルドが動いている事を見せるだけでも抑止に繋がる」


 話を聞きながら思った。

 俺を参加させていいのか?

 俺がストラクタさんの立場なら参加させない。


 俺がどんな悪い組織と繋がっているか分からない為だ。

 繋がってないけどさ。

 俺は悪役で兄も悪役だし。

 ストラクタさんは俺を信頼してくれている。 

 今回は頑張ろう。


 俺達は説明を受けて次の日に盗賊のアジトに向かった。

 アレクが前に出て突撃すると同時に他のみんなも突撃する、そんな流れだ。

 ストーリーと同じだな。


 俺達は隠れたまま待機する。

 建物は古く、廃墟になりかけている。

 アレクが盾を構えて玄関の扉にシールドラッシュを使った。


 アレクの動きを見て分かった。

 アレクが怒っている。


 バッキャ!

 木で出来たドアを割ってアレクが突撃した。

 

「突撃だ!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


 みんなで中に入る。

 アレクが叫んだ。


「無い! いない! 盗賊はどこに行った! 盗賊はどこだ! 出てこい!」


 アレクの叫ぶ声が家の中に響き渡った。




【ノワールの兄、ライングラフレイム・ダークネス視点】


「くっくっく、盗賊の奇襲は失敗したか」


 俺は暗殺者ギルドだけでなく盗賊とも繋がりがある。

 盗賊のアジトを襲撃する100人の中にスパイを紛れ込ませていたのだ。

 ギルドの対応が甘い。

 

 情報が漏れるリスクを恐れるなら会議をしたその日に奇襲をかけるべきだった。

 

「アレクは悔しそうに叫んでいました。盗賊はどこだ! 出てこい! とそう叫んでいました」

「バカなやつだ。アレクを襲撃したのは暗殺者ギルドで盗賊ではない。勘違いをして盗賊を襲撃しに行ってだれもいない。くっくっく、二重に間抜けだな」


「ノワールも盗賊の襲撃に参加していました」

「アレはどうでもいい、あれは何も知らないただの間抜けだ。あいつは何も出来ん。ゴミムシと同じで何も影響を及ぼす事は出来ない」

「……分かりました。戻ります、ギルドで酒を飲んでいないと怪しまれますから」


「ご苦労だったな、拾え」


 俺は褒美の金貨を床にばら撒いた。


「ありがとうございます」


 俺のしもべは丁寧に床をはいつくばって金貨を拾った。

 こういう輩は金で思い通りに出来る。

 扱いやすい。

 男が金貨を拾うと去って行った。


 陰から暗殺者ギルドのメンバーが現れる。


「アレクの襲撃を失敗した件だが、色仕掛けで失敗したな」

「はい、いたぶる為に手加減をしてしまいました」

「そうか、次は殺していい。最終的に成功すればいい。俺は気が長い」


「ありがとうございます。次は6人で確実に殺します」

「よし、さがれ」


 次失敗したらもう暗殺者ギルドは信用できん。

 俺が直接殺しに行くのもいいか。

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