第8話

 スレイアと2人で草原に来た。

 ゲームで草原はダンジョン扱いになっている。

 草原は洞窟の次に行くダンジョンでスライムより強いモンスターが出てくる。


「グギャアアアアア!」


 ゴブリンが出てきた。

 ゴブリンは緑色の肌で背丈は子供と同じくらいだ。

 ナイフか弓を持っている。


 俺は弓を持ったゴブリンの矢を避けてゴブリンを斬った。


「グギャ!」


 即倒したゴブリンをストレージに入れる。

 モンスターの体内には魔石と呼ばれる光る石があり、売れば金になり、魔装レベルを上げた状態で自分に使えば魔装が強化出来る。

 魔装の強化はイメージ的に武具強化だ。


「ゴブリンも余裕だね」

「残るはオークか、いた、オーク3体」


 オークは豚人間のような見た目のモンスターだ。

 背丈は大人と同じくらいでこん棒を持っている。


「「ブオオオオオオオオオ!」」


 オーク3体が向かってきた。

 俺は走ってオーク3体を斬る。


 ザンザンザン!

 3体を倒してストレージに入れた。


「もう、草原も余裕だね。凄いよ」

「凄いのか? でも、ゲーム主人公のアレクはもっと先に行っているんじゃないか?」


「戦士ゴルドはここでモンスターを狩っていて、アレクは次の森でモンスターを倒しているみたい」

「……森か」

「いってみない?」


「1つ、気になる事があって、転生してから魔装の強化をしていない。訓練で金を使ってしまっている」


 ゲームの基本は魔装レベルを上げたら限界値まで魔石で魔装を強化する事だ。

 転生前は金だけは使えた為魔装は限界まで強化していた、でも訓練をしてからは魔石強化していない。


 正確には転生してから試しに魔石を1つ分使い強化して見る事はした。

 でもあれは魔石で強化できるかを確かめるだけのものだった。

 転生してから魔石で魔装を強化出来るだけした事は無い。


「でも、結局はモンスターを倒さないと魔石が手に入らないよ? それに洞窟と草原はモンスターの奪い合いだからモンスターの数も少ないよ」


 正確には他にも方法はある。

 だが強くなるか金を稼いでからじゃないと出来ない方法だ。

 今はモンスターを倒すしかない。


「そうだなあ、草原より森の方が稼ぎがいい、草原のモンスターは全部食べられるし納品すれば喜んでもらえる」

「うんうん、行ってみようよ。問題があれば逃げてくればいいし」


「そうだな、うん、森に行こう」


 草原を出て森に向かった。

 森に入って話をする。


「スレイアは森に入った事はあるのか?」

「うん、モンスターを倒す所まではやってるけど、でも囲まれちゃうと死んじゃいそうで奥には進んでないかな」

「そっか、おし、ここからは気合を入れて行こうか」


「私も魔法を使っていいかな?」

「いいぞ、てかスレイアの魔法を見てみたい」

「うん、もう少し奥に進もう」

「そうだな」


 少し奥に進むとモンスターの群れが出てきた。

 30体以上のモンスターが固まっている。

 ダンジョンを進むとランダムでモンスターが固まっている事があるのだ。


「ブヒー!」


 ウリボーが俺とスレイアを威嚇する。

 ウリボーはイノシシと同じような形をしたモンスターだ。


「フシャアア!」


 ポイズンスネークもこっちを見て牙を突き出した。

 ポイズンスネークは大きなヘビだ。

 毒攻撃が厄介ではあるが状態異常を解除するポーションさえ持っておけば 問題無い。


「グオオオオオオオオ!」


 サーベルベアは両手の爪を光らせた。

 クマの爪を長い刃物にしたような見た目で3種のモンスターの中では一番の強敵だ。


「最初は私がやるね! セブンランス!」


 スレイアの魔装杖が光ると氷で出来た7本のランスがモンスターに突き刺さり7体を倒した。


「おお! 強いな!」

 

 ゲームでスレイアは氷のランスを1本出すアイスランスしか使えなかった。

 でも今はその上位魔法を使える。

 そこまでは分かっていた。


 全発すべて命中させてウリボーとポイズンスネークを1撃で倒している。

 1撃で複数のモンスターを倒せるのはかなり心強いぞ!

 魔法の発動に隙がある、だがそれでも強い。

 訓練のおかげか!


 モンスターが俺とスレイアに殺到する。


「サーバント! スレイアを守れ!」


 2体のサーバントがスレイアの両隣りに立ち魔法剣を構える。

 俺はスレイアのセブンランス2発目の発動と同時に俺は前に出る。


 ザン!

 口を大きく開けて噛みつこうとするポイズンスネークに魔法剣で斬りつけた。

 1撃で倒せない!

 弱点部位である頭部を攻撃しても倒せないのか!


 ザンザン!

 更に2回斬りつけて倒した。

 そうか、俺自身は強くなった、でも魔装武具が貧弱なんだ。

 

 モンスターを1撃で倒せないと何度も攻撃する為倒すまで時間がかかる。

 そのわずかな隙にモンスターに後ろを取られる。

 モンスターは1撃で倒したい。


 俺はバックステップで後ろに下がってサーベルベアの鼻に剣を突き立てた。

 モンスターによっては弱点部位が存在する。

  

 サーベルベアとウリボーの弱点は鼻だ。

 ポイズンスネークの弱点は頭部になる。

 弱点部位にヒットすればクリティカルダメージを与える事が出来る。

 そして弱点部位にヒットすれば一瞬だけ動きが止まる。


 だがサーベルベアもポイズンスネークも弱点を攻撃しても1撃で倒せない。

 俺の火力不足だ。


 俺はモンスターの弱点部位に攻撃を当て続けてモンスターを全滅させた。


「す、凄いね」

「え?」

「全部弱点に攻撃を当ててたでしょ?」

「ああ、ゲームで慣れて、ストラクタさんの訓練で動きにも慣れたから」


 ドスン!


 近くで何かが落下する音がした。

 振り返るとそこにはボスのウリボーがいた。

 ボスウリボーは体長3メートルほどの大きさだ。


「ブヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」


 あまりに巨大な鳴き声で大地が震動する。

 ボスウリボーはスレイアを睨みつけ前足で地面を蹴った。

 まずい!

 あのモーションは突撃だ!


 俺は突撃を開始するボスウリボーに向かって走る。

 ジャンプして鼻に剣を突き立てた。

 だがタイミングが悪くボスウリボーが顔をしゃくり上げた為俺は吹き飛んだ。


 ゴロゴロゴロゴロ!


「ノワール!」

「問題無い! 訓練と比べれば余裕だ!」


 俺は土埃を被ったまま起き上がりスレイアから離れる。

 ボスウリボーは俺に狙いを定めた。

 さっきの攻撃で怒ったようだ。


 ウリボーは突撃を多用して来る。


 突撃に合わせて横に飛びつつ剣で足を斬りつけた。

 そして後ろから追いかけて振り向く前に足を攻撃する。

 7連撃を叩きこんでボスウリボーが振り返ってこっちを向くと俺は回り込むように横に移動しながら足を何度も斬るとウリボーの右前足が動かなくなり足を引きずる。


 足を1本でも動かなくすればボスウリボーは持ち味を失った雑魚になり下がる。

 俺は前足を引きずるボスウリボーを何度も何度も斬りつける。

 ボスウリボーがドスンと音を立てて倒れた。


「おっし! 帰ろうか」


 スレイアが驚いたように口を開ける。


「ん? どうした?」

「プレイヤースキルが凄いね。異世界に来て初めてのボスウリボー戦であんなにあっさり倒せるのは凄いよ」

「ああ、前世ではこのゲームをやりこんでいた。少ない訓練で低レベルのまま最速日数クリアする動画とかあるだろ?」


「ノワールとパーティーを組んでよかったよ。すぐにサーバントを私の守りに回してくれてノワールが真っ先に前に出てくれたよね?」

「……一応、俺が前衛だし、まあ」


 スレイアに褒められて嬉しくなる。


「あ、頭に草と土がついてるよ」

 

 スレイアが背伸びをして俺の頭を払う。

 スレイアの顔を見ようとするとスレイアの胸元が目に飛び込み俺は目を逸らした。

 昨日の夜を思いだす。


 スレイアが俺と手を繋ぐ。


「今日はありがとね、帰ろ」


 2人で街に向かい歩いて行く。

 

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